【and. people】食ライフのプロにインタビュー 「食のプロってどんな人?」

【and.people】このシリーズはand.で活躍する食のクリエイターたちの“いま”を探るべく、普段の飾らない素顔や仕事内容をのぞいてみました。
プロだからこそ知るテクニックや裏事情は、目からウロコ!知って得する情報も盛りだくさんでご紹介していく連載です。
今回は、パティシエの松本奈奈さん
撮影はhueのフォトグラファー趙 慧美(じょ へみ)でお届けいたします。

「おいしく、つながる。」/パティシエ

パティシエとしてご活躍されている松本奈奈さんは、普通のパティシエとは、ちょっと様子が違うようです。
というのも、松本さんは撮影専門のパティシエとのこと。
撮影のパティシエさんって、一体!?
その現場に密着してきました。

食べられないお菓子 

hueand…なぜ、撮影に特化したパティシエになられたのですか?

松本さん…昔から、お菓子は食べるよりも作る方が好きだったんです。料理では使えないカラフルな見た目も好きでした。料理が青色だと嫌煙されがちですが、お菓子だと可愛く見える。さまざまな色を使うことができるところもいいですよね。

hueand…わかります! たまにどぎつい色があって本当に食べられるの?? って、思う時もあるけど、手土産に持って行くと場が盛り上がるんですよね(笑)

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↑※松本さんに作っていただいたカラフルなクッキー

松本さん…お菓子って食べるだけじゃなくて、見た目で楽しむところもありますよね。海外には年に何回か足を運ぶのですが、今でもお菓子の専門書を見つけるとつい買い漁ってしまいます(笑)

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hueand…確かに、海外の料理書って本当に写真がきれいで飾っておきたくなります。

松本さん…物心ついた時からお菓子作りが好きで、小学生の頃から教室に通ったりしていました。パティシエになりたいと夢見て専門学校に入りましたが、なかなか働きたいと思うところを探せなくて。ホテルとか個人の洋菓子店とかも何かが違う気がしていました。悩んでいた時に、学校の授業で「お菓子をスタイリングして写真を撮る」という課題があったのです。ものすごく楽しくて、これだ!って、心に決めた瞬間でしたね。

hueand…なるほど、それで撮影用のパティシエになろうと思ったのですね。卒業後は、どちらで働くことになったのですか?

松本さん…これもご縁なのですが、フードコーディネーターの先生のお手伝いをさせていただける機会に恵まれたのです。プロの盛りつけやスタイリング法、撮影の現場を間近にみさせていただいて、写真1枚でこんなにも変わるの!? って、感動したのを覚えています。その先生は、お料理専門だったのですが、この撮影の仕事をお菓子でやりたいって強く思うようになりました。

hueand…頭の中には、いつでもお菓子があったということですよね。例えば、店頭で売られているケーキと、撮影用のケーキって違うものですか?

松本さん…全然違いますね。撮影だと照明があたることも多いので、生クリームたっぷりのデコレーションケーキとかは、クリームが途中でだれてきたりするんですよ。そのため、いろいろな仕掛けが必要になってきます。時には、食べられないケーキだって作ります(笑)

hueand…え~!? 食べられないケーキですか?

松本さん…ケーキの断面を見せない撮影であれば、発砲スチロールを土台にしたりもします。生クリームも固めに作る必要があるので、あるモノを使います(笑)

hueand…あるモノって…。何だか聞くのが怖い気もしますが、教えてください!

撮影の裏側を大公開!

普段はみられない撮影現場を特別に見学させていただきました。
松本さんの“プロテク”には、驚きの連続が…!


メニュー:デコレーションケーキ

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「松本さんコメント」
あるモノの正体がこちら。一見、普通のケーキに見えますが、実は生クリームがショートニングなのです(笑)
ショートニングは、固形状の食用油脂なので照明でクリームがだれることもない。何度でも使え、長時間の撮影でもへたることがないので便利です。

メニュー:バニラアイス

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「松本さんコメント」
テーブルの上に並べられた溶けないアイス。不思議だと思いませんか? 実はこれ、マッシュポテトです。バニラビーンズも入れ込んで作ると本物そっくり!たとえ炎天下の撮影でも、美しさをそのままキープできます。

メニュー:タルト・シトロン

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「松本さんコメント」
これは、私が一番好きな生菓子です。フランスでは一般的なケーキなのですが、日本ではあまり見かけなくて・・・流行らせて、皆さんにも一度は食べていただきたいケーキです!下はタルト生地なのでサクサク。上は、レモンクリームなのでしっとりとみずみずしいのが特徴です。


泣かないケーキ!?

撮影以外でも一般的な仕上げに粉糖を使うことがあります。じつはこの粉糖もいくつか種類があって使い分けをするそうです。
ここにもプロの技がありました。

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松本さん…泣かない粉糖をかけます。

hueand…なかない粉糖? 何ですか、それっ! キュッキュと鳴るとか?? 

松本さん…違います(笑)。専門用語なのですが、「溶ける」粉糖と「溶けない」粉糖のことを「泣く」「泣かない」って、現場では言うのです。通常のケーキで水分の多いお菓子に粉糖をかけると一瞬で溶けやすいのですが溶けない物のことを「泣かない」といいます。

hueand…専門用語なのですね~。面白いですね。この表現を使ったら、何だかプロっぽいですね(笑)。今度から、さり気なく現場で使ってみたいと思います(笑)

***
松本さん…普通の食べられるケーキを作る場合は、果物など自然な色が生きてくるので色味をあまり気にすることはありませんが、問題なのは撮影用です。例えば、撮影用に苺クリームたっぷりのケーキを作る時は、本当は生クリームを使いたくても照明にあたるとだれてしまうので使えないわけです。そのため、ショートニングといちごのソースや赤の着色料などを混ぜ合わせて本物そっくりの苺クリームの色味に近づけていきます。その加減が難しい(笑)

hueand…聞いているだけで難しそうですね。そして、もはや実験ですね。食品サンプルの職人さんや模型やさんみたいです。

松本さん…オーダーによっては、すでにデザインが完璧に決まっていてロゴマークを再現してほしいという難問も(笑)。色味のグラデーションなども、いかに本物に近づけるかが勝負なので、微妙な色づけを心掛けています。でも、何度か試しているうちに何となく分かるってくるのです。色の繊細な組み合わせが見えてくる感じでしょうか。

hueand…絶対音感ならぬ、絶対色感的な感じなのでしょうか…?

他にもたくさんのノウハウと経験をお伺いしたいところですが、今日はここまでに。松本さんのお仕事がもっと気になる方は、hueにおたずねくださいね!


ご協力いただいた食のクリエイター

kawagoe.jpg<川越晃子/たべものライター&編集>

 
出版社勤務後、フリーランスへ。食の取材を中心とした本の企画・構成をはじめ、レシピ作成やスタイリングを含めたトータルコーディネートなどを手掛けている。“食べるものによって、人の体も心も育まれる”という考えをモットーに、食べ物の裏側にある環境や農業、栄養学にも関心が高い。著書に、日本の食文化をまとめた『おにぎり』、『まるベジ・ドリンク』共にグラフィック社刊などがある。現在、フードスタイリスト、料理カメラマンとの女性3人のフードユニット「Soup Caravan」を結成中。



purofi-ru.jpg<松本奈奈/パティシエ>


小学生のころからお菓子作りを学ぶ。
短大で「食」全般を学び、栄養士の免許を取得後、パティシエの道に。スイーツスクール講師、レシピ開発、海外経験などを経て、独立。店舗のメニュー開発などから、デザイン性のある、ポップでカラフルなお菓子も得意としている。
食べるだけではなく、目で見ても楽しめるアートとしてスイーツをもっと広めていきたい。と思い、2016年スイーツアート展を初開催。

今回作ったレシピはこちら(@hueand_and)
以前に「SIZZLE BLOG」で掲載された松本さんの記事
http://hue-hue.com/media/rittou2017/
http://hue-hue.com/media/kanro2017/

松本さんへのお仕事の依頼はこちらまで(→hue_and@hue-hue.com)
依頼可能内容:スイーツレシピ開発・商品開発・撮影調理・スイーツ教室・講師 など



著者プロフィール

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hue and.(ヒュー アンド)
「and.」とは、食にまつわる分野に特化して活躍されている方々をまとめたネットワークの総称です。
食にまつわる問題・課題をお聞かせください。「and.」の中から最適な人材をコーディネートして皆様の食の課題を解決するお手伝いをしていきます。管理栄養士をはじめ、料理研究家、お菓子研究家、フードコーディネーターなど様々な分野のプロが承ります。

http://hue-hue.com/service.html#hueand
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