【and. people】食ライフのプロにインタビュー 「食のプロって何?」

【and.people】このシリーズはand.で活躍する食のクリエイターたちの“いま”を探るべく、普段の飾らない素顔や仕事内容をのぞいてみました。プロだからこそ知るテクニックや裏事情は、目からウロコ!知って得する情報も盛りだくさんでご紹介していく連載です。
今回、担当してくれたのはフードスペシャリストの亜緒(あお)さん。
撮影はフォトグラファー カミン(キョ カミン)が担当しました。

「おいしく、つながる」/フードスペシャリスト

ご実家がお寺さんというフードスペシャリストの亜緒(あお)さんは、
小さい頃から精進料理に親しんできた、まさに健康料理のプロフェッショナル!
さらに、ベジタリニズム発祥といわれるイギリスのベジタリアン学校で学び、
心とカラダ、両方の健康バランスを保つ料理を伝えている方です。
まずは、気になる食のルーツからお伺いしてみました。

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↑レタスと梨のサラダ 自家製バルサミコ・ドレッシング
(夏のむくみを解消できるデトックスサラダ。)

精進料理で食育!?

hueand…生まれた時からお寺の精進料理をずっと食べてこられたというのは、とても羨ましい限りです。いつもの食卓は、どのような献立が並んでいたのですか?

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亜緒さん…お供えとして野菜をいただくことも多く、いつも野菜たっぷりの料理が並んでいました。お寺のお坊さんたちの精進料理は、殺生をしないという基本の考え方があります。そのため、お肉やお魚など生臭ものを食べません。また、精がつくものを食べてはいけないという教えがあってネギやにんにく、しょうがなどの薬味もダメなんです。子どもたちの食事は、そこまで厳格ではありませんでしたが、そうやって教えられてきました。

hueand…薬味まで?! それは知りませんでした。幼少期は、どのような食卓風景だったのでしょうか?

亜緒さん…母がとても料理上手でした。おやつまで手作りしてくれることも多く、手の込んだものを1から作ってくれていました。それがお寺らしさでもあるのですが。

hueand…お寺らしさ? それは、どういうことでしょう??

亜緒さん…お寺って、家を留守にできないのです。いつ呼ばれるか分からないので…。そのため家族みんなで外食することはほとんどありませんでした。小さな頃は、それがとても不満だったのですが(笑)。いま思えば、母が工夫していろいろと作ってくれていたのだと思います。

hueand…お母さまの愛ですね~。手作りのおやつとか、そちらの方が贅沢な感じがします。

亜緒さん…料理上手の母の影響を受けて、私自身も幼稚園の頃から料理をするようになりました。

hueand…お料理への目覚めが早いですね~。

亜緒さん…そうですね。最初に作ったものも覚えていて、ロシアンティケイクスでした。スノーボールのようなクッキーです。

hueand…すごい! 幼稚園の時に、ロシアンティケイクスの存在すら全く知りませんでしたよ(笑)。お寺での精進料理は、どのようなものだったのですか? 

亜緒さん…お寺の行事としては、年に2回は大きな法要があります。その際に来てくださった檀家さんに、お昼ご飯をご用意するのですが、いつも100食分ほど精進料理をお出ししていました。

hueand…毎回100食分ですか!?それは、大変そうですね。

亜緒さん…決して品数が多いわけではないのですが、夏と秋で異なるメニューをお出ししていました。その時は、家族総出で一緒に作ったり、味見をしたり、給仕のお手伝いをしたりですとか…。精進料理を作るうえでの段取りなどは、自然と身についたものがたくさんあったように思います。

hueand…まさに、食の英才教育のようなものですね。

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↑オクラのリゾット 
冷たい飲み物や食べ物を摂りがちな夏におすすめの温かいリゾット。
胃腸を整えるオクラを入れて、消化にもよいリゾットは疲れた胃をやさしくケア。

精進料理とベジタリニズムの融合

hueand…大学で栄養士と、フードスペシャリストの資格を並行して取得されたと伺いました。栄養士とフードスペシャリストの違いは、どういうところでしょうか?

亜緒さん…栄養士は、器の中の料理を栄養あるものにするお仕事。フードスペシャリストは、器から外。器選びや食空間の演出や見せ方などで、栄養のあるものにするお仕事になります。

hueand…大学で2つの資格を取得した後にイギリスに行かれたのですよね? とても勉強家! 留学先をイギリスに決められた理由は、なぜですか?

亜緒さん…大学の時に英語の授業をとっていたのですが、英語の授業がアメリカの栄養学の教科書だったのですね。最近でこそ、よくオメガ3などの栄養素を聞くようになりましたが、その当時の日本ではまだ耳馴染みがありませんでした。欧米とでは伝え方が全然違うのだろうな、と興味を抱きました。そこからは、独学でいろいろと調べていくうちに、ベジタリアンというワードがいっぱい出てきて。その中で、栄養士さんがベジタリアンをオフィシャルで推奨しているということを論文で知ったんです。ベジタリアンって、日本にもあるなって。精進料理は、まさにベジタリアンですから。

hueand…本当にそうですよね。精進料理は、まさに日本でいうベジタリアンですね!

亜緒さん…日本は、食の欧米化が進んでいるという流れはありますが、ベジタリアンというのは、精進料理くらいしかあまり広まっていない。実生活で取り入れている人はまだまだ少ないですよね。でも、これからはもっと増えるかもしれないと思ったのです。それで、ベジタリニズム発祥のイギリスに渡ったのです。

hueand…そういう経緯だったのですね。

亜緒さん…実際、自分自身も野菜をたくさん食べて体質改善してきた経験もあるので、ベジタリニズムの本場に行って、もっと勉強したかったのです。精進料理のことは、だいたい分かりますから。

hueand…精進料理は、もうバッチリですよね! イギリスのベジタリニズムで、衝撃を受けたことなどはありますか?

亜緒さん…蜂蜜が使えないのには、驚きました。

hueand…蜂蜜ですか??

亜緒さん…そうなんです。蜂蜜は、ミツバチの体を通して生成されますよね。ベジタリニズムの考えでは、それは動物性になるのです。

hueand…言われてみれば、そうなのかなって思いますが(笑)。その発想が面白いですね。ということは、それらを使わないための代替食材も充実しているのですか?

亜緒さん…たくさんあります。甘味料でいえば、メープルシロップやアガベシロップなど。第3のミルクと呼ばれる乳製品不使用のものは、日本より圧倒的に入手しやすいです。アーモンドミルク、ライスミルク、ココナッツミルクなどですね。ライスを使ったミルクだなんて、もともとアジア圏の食文化なのに。日本以上に、イギリスの方がポピュラーです。

hueand…甘酒なども、海外の方がよっぽどフレーバーなども充実しているという話を聞いたことがあります。

亜緒さん…留学先で動物性の代替食材を知れたことは、とても強みになりました。向こうは、果汁使いがとても上手なのです。柑橘系でさわやかに仕上げるコツですとか、ハーブやスパイスなどの使い方も新鮮で学ぶことがたくさんありました。


hueand…精進料理の知識がベースに合って、その上で西洋の食文化であるベジタリニズムを組み合わせられたら、本当に無敵ですよね。

亜緒さん…特に私が感じたのは、植物性の食材だけだと、どうしても味がぼやけてしまいがちなんですね。そこに、海外の代替食材を取り入れるだけで、意外性もあって味がしまったり、旨みが増したりします。積極的に組みあわせていきたいですね。精進料理も見た目が地味な印象がありますので(笑)。ハーブなどで華やかに仕上げていきたいです。


hueand…それは、楽しみです! 亜緒さんのフィルーターを通すことで、精進料理とベジタリニズムを組み合わせたお料理が、さらに華やかにオシャレになると思うと、ワクワクします。

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スパイシー・キャロットケーキ(写真下)

米粉を使ったグルテンフリーのケーキ。にんじんとたっぷりのスパイスが夏冷え解消に最適!

ピンクペッパー・レモネード(写真上)

すっきりとした甘さの自家製レモネードと、ピリリとしたピンクペッパーの組み合わせが楽しい。

心とカラダの栄養を大切に

亜緒さん…精進料理やベジタリアンの話をしているのに、私の料理は、肉や魚もきちんと使っています。不思議だと、思いませんか?

hueand…正直なところ、お会いするまでは菜食主義でとてもストイックな方なのかな?って、勝手に思っていました(笑)。

亜緒さん…お寺で生まれたと話しますと、そういうイメージを持たれる方も多いのですが(笑)。私自身は、菜食主義ではないのです。これは、栄養士的な思想なのですが、肉や魚にしか含まれない栄養素というものがあるので、生きる上では大切な食材なんですね。特に、幸せホルモンと呼ばれる“セロトニン”などの生成を体内で促す働きがあるため、お肉やお魚などたんぱく質が不足してくると鬱になる方も多いといわれています。

hueand…確かに。菜食にされた方が鬱になったとか、動けなくなったという話を聞いたことがあります。そういうことだったのですね。

亜緒さん…いまは、サプリメントで栄養を摂るという方法もありますが、あまりそういうのは好きではない。極力、食事から栄養は摂っていただきたい。植物性のたんぱく質を上手にお料理に生かせる方は、問題ないのですが、そういうお料理上手の方ばかりではないですよね。野菜を摂ることは、とても大事ですが、肉や魚の動物性たんぱく質も適度に摂りながら、お野菜と上手に組み合わせてほしいのです。

hueand…分かります、とても…。ストイック過ぎては、なかなか続かないですよね。

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↑サバ味噌と夏野菜の冷製フォー
缶詰でお魚のたんぱく質を手軽に摂り入れて。食欲のない時もつるんといただける夏向きの麺メニュー。
キュッとしぼったライムがさわやか。
亜緒さん…欧米では、「ミートフリーマンディ」という活動が注目されています。
hueand…定期的にお肉を抜くのですか?
亜緒さん…はい。自分の体のためや、環境のためにお肉を食べない日を作ろうという考え方です。
hueand…それはいい活動ですね。お肉は一切食べてはダメ!などと制限があり過ぎると、食べることが楽しめないですものね。たまにならできる人も増えていきそうですよね。
亜緒さん…それを願っています。心とカラダの両方のバランスがきちんととれてこそ、本当の健康だと思うのです。
hueand…現在は、フードスペシャリストさんとして活動されているわけですが、今後はどのようなお仕事をされていくご予定ですか?
亜緒さん…私より1歳でも若い方に、私の料理を知ってもらいたいというのがあります。若いとどうしても、自分の健康に対して興味がない。まだまだ元気だから料理もしない。仕事が忙しいから、食生活はどうでもいいとなりがち。健康は失ってからでは遅いので、その前にお料理を覚えてほしいです。
hueand…若い方のサポートをしていきたいということですね。
亜緒さん…気がつくのが早ければ早い方がいい。若い世代の人に気がついてもらうためには、栄養素だけではなく見た目のきれいさとかも大切ですから。心の栄養という点においては、盛りつけやスタイリング、食空間に音楽やアートなどの他のカルチャーを取り入れることで食をもっと豊かにできるということを伝えていきたいです。
hueand…素敵です! お料理教室は定期的に開催されているのですか?
亜緒さん…これからは、月1でワークショップを開催する予定でいます。ベジタリンと精進料理の違いですとか、ベジタリアンやビーガンの方でも、いろいろなタイプの方がいらっしゃいますから。そういう違いなどもお話ししていきたいですね。たまにはお寺などを借りて、私らしいお料理の提案をしていきたいですね。
hueand…お寺で、亜緒さんのお料理が学べるなんて最高ですね。ぜひ、私も参加してみたいです! 本日は、お時間いただきましてありがとうございました。
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今回、精進料理の英才教育や、本場イギリスでのベジタリニズムの話など、興味深いお話がたくさん伺えましたが、まだまだ引き出しが多いに違いありません! 亜緒さんのヘルシーナイズドされた料理に興味のある方は、hueまでお問い合わせくださいね。
ご協力いただいた食のクリエイター
pro.jpg<亜緒(あお)/フードスペシャリスト>

寺院の娘として生まれ、幼いころより精進料理にに触れながら育つ。
栄養士免許を取得後、海外の菜食者に興味を持ち、ベジタリアニズム発祥の地ともいわれるイギリスへ留学。現地の料理学校などで学ぶ。

帰国後、国内外で得た菜食の知識やスキルを活かしながら栄養士・料理家としてのキャリアをスタート。「食を通じて心もカラダを健康に」をモットーに料理教室や食にまつわるイベントの企画・開催、飲食店での商品開発、コラム執筆、ダイエットアプリでの栄養士、レシピ提供やフードコーディネートなど広く活動を行う。

kawagoe.jpg川越晃子/たべものライター&編集>
出版社勤務後、フリーランスへ。食の取材を中心とした本の企画・構成をはじめ、レシピ作成やスタイリングを含めたトータルコーディネートなどを手掛けている。“食べるものによって、人の体も心も育まれる”という考えをモットーに、食べ物の裏側にある環境や農業、栄養学にも関心が高い。著書に、日本の食文化をまとめた『おにぎり』、『まるベジ・ドリンク』共にグラフィック社刊などがある。現在、フードスタイリスト、料理カメラマンとの女性3人のフードユニット「Soup Caravan」を結成中。

今回作ったレシピはこちら(@hueand_and)

亜緒さんへのお仕事の依頼はこちらまで(→hue_and@hue-hue.com)
依頼可能内容:商品企画・開発、レシピ開発、フードスタイリング、登壇 など

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