写真展『Kan Kanbayashi Photo Exhibition』開催。huerepフォトグラファー神林環

現在、hueライブラリーで、写真展『Kan Kanbayashi Photo Exhibition』を開催中のhuerepフォトグラファー神林環さん。スタイリッシュな光の構成で独特の世界観を作りだす、神林さん。そのクリエイティブのルーツは、NYで徹底して学んだ写真の基礎にありました。

今回は、神林さんが写真のキャリアをスタートさせたNYC時代を中心に、この写真展についてお話を伺いました。

-まず最初に、写真をはじめたきっかけを教えてください。
それは兄の影響が大きいと思います。兄は昔から写真が好きで、確か中学生の頃から写真を撮っていたと思います。兄が大学で写真を勉強していた頃楽しそうに写真を撮っている姿がとても印象に残っております。小さな頃、父も当時の一眼レフを使って写真を撮ってくれていました。きっとその影響で自然と写真に興味を持つようになったと思います。

 -高校を卒業してNY州の大学へ進学されたんですよね。
高校を卒業する時に留学したいと思っていたのですけど、その頃はまだきちんとしたビジョンはありませんでした。アメリカの大学ってほとんどの大学でダブルメイジャーといって、専攻が二つ選べるんです。それがいいなと思ってまずはNYCにあるコミュティーカレッジへ進学しました。
 専攻は、写真と空間デザインの2つを考えていたのですが、写真の授業をとりはじめましたらこれがおもしろく結果的に空間デザインの授業はひとつもとることなく写真を専攻にしました。

とにかく勉強した、RIT時代


-それは写真の方がおもしろかったからですか?

はい、特に暗室での時間はおもしろかったですね。白い印画紙にフィルムを通して光をあてる、それを現像液に浸すと写真がブワーっと出てくる、初めてこの瞬間を経験した時は感動しました。僕の大学時代はまだデジタルではなくフィルムが主な時代でした。まだ画素数もプリントに耐えられる頃ではなく、256MBのCFカードを確か$50くらいで購入していた記憶があります。そんな時代です。

渡米して最初の2年はNYCクイーンズ地区にありますコミュニティカレッジに通って、その後Rochester Institute of Technology(RIT)に入学したのですが、ここで本格的に写真を勉強しました。RITでは、本当によく勉強したと思います。でも、勉強することがとても楽しかったです。暇さえあればラボで作業したり、図書館に入り浸っていました。

特に忘れられないのはM&P(マテリアルアンドプロセス)というクラスです。写真の化学的な知識や構造の授業で講義と実験があるクラスです。フィルムはどのような構造でどの様に反応してということをもうとことん勉強するのですが、写真とは本当に化学反応の賜なのだなと実感しました。このクラスは猛勉強必須でした。

_MG_9784.jpg

サマークラスのphoto 2というクラスも印象的でした。課題のひとつにフィルムの勉強があり、晴れた日に駐車場に止まっている車を撮影します。露出はスポットメーターで一番明るい地点、一番暗い地点、グレーの地点をそれぞれはかり現像プリントする。そして一番明るい地点と一番暗い地点とグレーの地点をある特殊な機会で計ります。正確な数値は忘れてしまいましたがある数値が出るまで何回も撮影→現像→プリントを繰り返す。数値がきちんとでないと前へ進めないんです。何度も試みるのになかなか数値が出ずに苦労したことを覚えております。撮影時に適正露出からオーバーあるいはアンダーで撮るのか、そしてそれに応じて現像時に現像液の温度を標準より高めあるいは低めでそして短くあるいは長めに現像するのか。これらの組み合わせによっていかなる状況でもきれいな色調で表現できることを学びました。大変でしたが良い経験になったと思います。

-それは厳しい授業でしたね。
今はフォトショップで簡単に出来る事を、当時はひたすら暗室でやっていましたから。朝から晩までの授業が毎日あるなか、徹夜で撮影して現像したり、という日々でした。眠いし、フィルムは乾かないし、、、。今では楽しい記憶だから不思議です。

でも、僕が卒業する時のフレッシュマンやソフモアの基礎授業の比重は主にデジタルに変わっていました。それでも、写真構造の基礎が頭にはいっているのは今も自分の強みになっています。

-最終的には、写真のどういった領域を専門に学んだんですか?
学校にはフォトジャーナリズム、アドバータイジング、ファインアートの3つの専攻がありましたが、僕はファインアートを専攻しました。現代美術の世界に興味がありとても魅力的な世界だと今でも思います。コンセプチュアルアートがうまれた時代を軸にその前後の芸術史や同時代のアーティストの作品を勉強し、同時に自分の作品もつくる、というクラスが主です。他には、動画やガラス、木や鉄の授業などもとりました。RITは工科大学の特徴として撮影の技術的な指導や、機材、そしてファシリティに関しては全米でトップクラスです。とても恵まれた環境で学ぶことが出来たと思っています。

良くも悪くもシビアに評価される、NYC

 -卒業してからは、そのままNYCを拠点にフォトグラファーとして仕事を始められたんですね。

卒業してすぐに直面したのは、「明日から自分で食べていかなくてはいけない!」とう事実です。NYCで生きてく事を選択してからは大学時代の先生や先輩をたよりにアドバイスをいただきながら生きるために全力で試行錯誤をしておりました。まずいろいろなフォトグラファーにコンタクトをとり会っていただきその中でJim Francoさんのアシスタントになろうと決めました。最初の一年はJimさんのもとでアシスタントをして、その後、フリーランスになりお仕事をさせていただておりました。
ポートフォリオをつくって、売り込みをする毎日でした。

 -地道な営業活動の成果ですね、その時は料理写真を専門にされていたんですか?

 アシスタント時代の料理撮影の現場が楽しくて、料理の写真に興味を持つようになりました。
まず自分で仕事を得るにあたり日本もそうですが、NYCでも「主軸」がないとやっていけないと思いました。ですので、まず料理の写真を軸に置き仕事をしていこうと決めました。
そして、プロモーションをするにあたりまず雇い主であるエディターの立場になって物事を考えるよう心がけました。自分がエディターの立場だったらどの様なフォトグラファーに頼みたいか、どの様なプロモーションをするフォトグラファーに興味を持つかなど。
幸いにもすぐに仕事につながりNYCではライフスタイルや料理の雑誌を中心に撮影の仕事をさせていただいておりました。

-活動の拠点を、東京へうつしたきっかけは?
2009年の春にビザの更新で一次帰国したのですが、ビザ発行に3か月から半年はかかる事になったんです。その間、ひとつでも日本で撮影の仕事がしたくて、日本の料理雑誌や書籍の編集部に連絡し、売り込みをさせていただきました。幸いにもすぐに撮影の仕事をいくつかいただくようになりました。当時のアメリカの情勢などの影響でビザの更新に時間がかかり、結局そのまま有り難いことに日本でお仕事をいただき続け今に至るという感じです。

なにも知らなかった東京で今もこうしてお仕事をさせていただいているのはお世話になっている、関わらせていただいている方々のおかげだと感謝しております。

_MG_9838.jpg

「いわゆるシズル」ではなく、いかに「僕らしさ」を表現するか

 -写真展を開催するのは初めてですか?

 NYCでは、昔一度だけブルックリンのダンボという地域のギャラリーでグループ展を開催したことがありましたけど、東京では初めてです。
今回は、10点展示したのですが、半分は今までの作品をセレクトし、半分は撮り下ろしました。
今回の写真展で作品を撮り下ろす時に、「神林さんならではの作品を撮ってください」と言ってくださったので、僕なりに表現できる世界観を大切に撮影してみました。
一緒にお仕事をさせていただきたいクライアントを想定して、イメージを考えてみました。
「いわゆるシズル表現」ではなくて、写真にいかに僕らしさを加えていけるかを考えながらの撮影でした。 

例えばアイスの写真ですが、もしクライアントが味はもちろんだけれども、今回は香りに自信のあるアイスをつくったのでそこをより広告に表現したい場合と想定し、香りを感じさせる写真を表現できたら、と考え「花の様に豊かに香るアイス」を表現できたらと思って撮影しました。
_MG_9866.jpg 
-
今後はどういった撮影に挑戦してみたいですか?
好きなフォトグラファーさんが2人いまして、Martyn ThompsonさんとDitte Isagerさん、今でもやはりこのお2人のスタイルを常に追いかけています。美しさが半端ないです。

あとは、昔NYCの街で見た『fresh direct』という宅配ビジネスの会社があるのですが、初期の頃のデリバリー車のデザインが個人的にはあまりインパクトのない印象だったのですが、ある日目を引く綺麗な写真になっているのに気がつきました。広告で使われる写真、あるいはイメージでこんなにも大きく印象が変わるんだ、と感じました。そういった企業や商品のイメージを大きく変えてしまうようなビジュアルをつくる仕事に関われたらと思っております。それは国内に限らず、グローバルな仕事にもぜひ挑戦してみたいです。

info

写真展『Kan Kanbayashi Photo Exhibition』は6月末までhue6階で展示しています。観覧希望の方は、メール(info@hue-hue.com)まで氏名、連絡先、観覧希望日時を明記の上お申し込みください。(平日11:00~18:00)

_MG_9875.jpg 

神林 環 

hue rep photographer
1980年、長野県に生まれる
Rochester Institute of Technology卒業
NYCでアシスタント、フリーランスとしての仕事を経験後東京へ活動の場が移る
現在はフード、ライフスタイル、インテリアなどを中心に撮影

神林環 作品はこちら

神林環 huerep過去の掲載記事はこちら

撮影に関するお問い合わせはこちら

著者プロフィール

著者アイコン
株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。

関連記事