料理家・江口恵子さんの「日々、伝わる食育」 ある日の長男と二女の会話から

料理家でありフードスタイリストでもある江口恵子さんは、広告や書籍制作、企業のプロモーションの仕事に加え、吉祥寺のカフェ「ORIDO(オリド)」を主宰。忙しい日々を送りながらも、実は3人のお子様を持つ「母」でもあります。

huerepにも所属し、さらに仕事の幅を広げようとしている江口さん。仕事と子育ての両立、そしてご自身が大切にされている子育てのモットーについて伺いました。「食育」とはわざわざ「教える」ことではなく、日々の食事や、ちょっとした会話を通じて子ども達に「伝わる」ものだと、江口さんは言います。ご自身の子育て経験から得た、子どもたちに無理させず自然に「伝わる」食育についてお話をお聞きしました。
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「丈夫な体とまっすぐな心」を作るお手伝いだけ

「生姜って体を温めるんだよね~」

「そうそう、そうだよね~」

「風邪ひいたり、のどが痛い時には葛湯にするといいんだよね」

「そう、体温まるんだよね~」

これはある日の我が家の長男(8歳)と次女(5歳)の遊びながらの会話。

小さな子どもの会話とは思えないこの内容に、吹き出しそうになりながらも
「あぁ、良かったな、私の伝えたいこと伝わってるかも」と思いました。
日々食べるものが体や心に大きな影響を与えることは自分の経験からも、
そして食に携わる仕事からも痛感しています。

「丈夫で元気に育って欲しい」親としてはわが子に対する1番の願い。そしてその為に、唯一わが子に私がしてやれることも「丈夫な体とまっすぐな心」を作るお手伝いだけ、、、と私は思っています。

こんな話をすると、私に会ったことのない人や話をしたことがない人はもしかしたら、「ビタミンCが何グラム、タンパク質は何グラムで、何々が足りないから、これを食べさせて・・・これは添加物が入っているからダメで、やっぱり野菜はオーガニックよねっ!!」という具合に、毎日、毎食考えて子どもたちにごはんを食べさせ、熱心に教えているのでは、とイメージするかも知れませんね。

実際は・・・・残念ながら違うのです(笑)

毎日、毎食の細かな栄養計算はもちろんしませんし、100%オーガニックの素材を求めるのも無理。小学生になった上の2人は、お友達と一緒にお菓子だってアイスだって食べますよ。さすがに「何でもあり」とはいきませんが、私の「食」へのこだわりと子どもたちからの要望をバランスよく組み合わせてお互いにストレスを貯めない方法を大切にしています。

ストイックにあれはダメ、これはダメとするよりも、「こっちの方が少しでも栄養が取れるかな」「こうしたら、少しでも体への負担が減るかしら」「こんな風に盛りつけたら子供が喜んでくれるよね」と、そんな考え方の方が、自分にとっても子ども達にとってもいい。どちらも良いとこ取りをしている感じです。
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日々の暮らしのなかで伝わる「食育」

数年前から「食育」という言葉をよく目にし耳にしますが、
実際のところ「食育」ってどういう事なんだろう、って考えたことありませんか?
色々な考え方があるし、色んな子どもへのアプローチがありますが、
私は「食育」とは、わざわざ教えるものではなく、暮らしの中で、
親と周りの大人から自然と伝わるものだと考えています。

最初に書いた会話だって、わざわざ教えた記憶はありません。
きっと食事中や一緒にお料理をする中で、
自然と会話の中に出てきていたのだと思います。
例えば、「ママ寒~い」
「じゃ、早く家に帰って生姜の入ったくず湯飲んで温まろう!」って具合に。
もちろん、毎日毎日食材の効能について話をしている訳でもなく、
それを教えることが食育だとも考えていません。

時間と気持ちに余裕がある時は一緒に料理したり、食卓の準備や後片付けを手伝ってもらったり。食事の時のちょっとした会話などに気を配りつつ、色んな角度から子供たちに「食」を伝えています。そして、ここも大切。「無理しない程度に」です。

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毎日のちょっとした会話から、マナーや思いやりを伝える

料理は、全てを一緒にやろうとは思わずに、
子供が好きそうな作業を部分的に渡して子どもが飽きてしまうのを防ぎます。
一緒にお料理する余裕のない時は、お皿を並べたり、
キッチンからテーブルに運んだり。ごはんやお味噌汁をよそったりしてもらいます。
その時には、自分の食べられる量を入れるように声をかけるのもポイント。
ここで子ども達は「食べたい」気持ちと「食べられる量」についても
考えるきっかけができます。

子どもが「暑い暑い」と言えば
「これ食べると体の中から涼しくなるよ~美味しいよ~」とひと言添えて、
おやつがわりに、丸ごとトマトやきゅうりを一人1本手渡します。
(昔はそれが普通だったのかもしれませんね)
その言葉に反応して「あぁ~涼しくなった~~」なんて小さな子どもならでは。
実際のところ、涼しくなったと感じたかどうかは疑問ですが(笑)
そうやって、夏の暑い時にはトマトやきゅうりを食べて体の熱を取る。
そして、夏の野菜は水分補給になるって自然と記憶されていくのだと思います。

 素材の旬や栄養の話だけではなく「お茶碗は右に」ではなく
「お箸を持ったその先にご飯の入ったお茶椀がくるよ」
「こうやって盛り付けて」ではなく「美味しそうに見えるにはどう盛り付けたらいい?」

私がまだ料理中の時には「お先にどうぞ」「お先にいただきます」
最後に1つに手を伸ばす前にはみんなに「これいいですか?」と聞いて
食べたい人が他にも居たら、自分達で話し合って、分けるかじゃんけんポンです(笑)
そうした、毎日のちょっとしたコミュニケーションや会話から、
マナーだって思いやりの気持ちだって伝えていけます。
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「食育」というと、大人側は何か特別なことをしたくなるかもしれませんが、
普段の生活の中にある、ちょっとした事からいくらだって子どもたちに
教え伝えていくことができます。
そして、食べたものの味や香りと共にママやパパの声と言葉、
話してくれたことも記憶に残っていくのだと思います。
食べたもので体を作り、会話やコミュニケーションで心に栄養を与える。

そうやって少しづつ生活の中で色んな事が蓄積されて、
そして実際の生活の中で活かされることが「食育」だと思うのです。
 
その先には子どもの自立へ自然とつながっていくのではないかと思っています。
昨年出版した「こどもと一緒に季節の食しごと&保存食」(マイナビ出版)
この本は、自分が毎日の暮らしの中で「私がやりたいから、食べたいから、
食べてもらいたいから」と始めた食しごとが、子ども達の成長と共にどんどん進化していき、子供の反応が形として見えてきた時に「これは子どもの為にはもちろんだけど、忙しい世の中のママ達の為にも、形にして広めていきたいな」という思いから形にした本です。 

子供との時間をわざわざ捻出するのは難しい働くママや、
お料理がちょっと苦手なママにこそ手に取ってもらいたい本です。
きっと「あ、料理って思ったより簡単で楽しいんだ」とか「子供と一緒にお料理したいな」「こんなんでいいんだ~~完璧じゃなくていいのね」って肩の荷が降りるはずです。

料理はテクニックよりもハートが肝心なんですね。
この本には、レシピだけではなく子供への声掛けのコツや、子供が使いやすい道具、
子供の好きそうな作業などについても詳しく書いていますので、
お手伝い初心者の親子の方々も安心して「親子で食しごと」を
スタートしてもらえるはずです。そして、「あぁ~楽しい!」ってなるはず。

私もまだまだ現役、現在進行形の子育て真っ只中なので、
試行錯誤しながらの育児と食育ですが、子供たちに寄り添い
お互いがハッピーになれる食育をこれからも実践していきたいと思います。


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食育にまつわる話や海外で出会った食のシーンなど、
江口恵子さんが自ら執筆する記事、第二回もお楽しみに!



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株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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