料理家・江口恵子さんの「日々、伝わる食育」 おっとり長女の“自己管理力”

料理家でありフードスタイリストでもある江口恵子さんは、広告や書籍制作、企業のプロモーションの仕事に加え、吉祥寺のカフェ「ORIDO(オリド)」を主宰。忙しい日々を送りながらも、実は3人のお子様を持つ「母」でもあります。

huerepにも所属し、さらに仕事の幅を広げようとしている江口さん。仕事と子育ての両立、そしてご自身が大切にされている子育てのモットーについて伺いました。「食育」とはわざわざ「教える」ことではなく、日々の食事や、ちょっとした会話を通じて子ども達に「伝わる」ものだと、江口さんは言います。今回は、「江口家・しっかり者の長女」のお話をとおして「食」と「心の成長」についてお話をお聞きしました

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おっとり慎重派の長女、
いつの間にか持っていた劣等感

「食育」というと、食べることに直接関係することをまずは思い浮かべますよね。
でも、今回は私が子育ての中から発見した、さらに1歩踏み込んだ「食育」についてお話したいと思います。

わが家の長女は現在小学6年生です。3月の後半ギリギリに生まれたのでまだ11歳。
いわゆる早生まれのお誕生日です。
5月生まれで小さい時から何でも人より早くできる方だった私から見ると、我が家の長女はとても慎重でスロースターター。
保育園の頃から何でもおっとりゆっくりマスターしていくタイプでした。
しかしいつの頃からか、「どうせ私には無理」と劣等感を持つようになっていました。
そのことに気付いた時、正直私はショックでした。人と比べたり結果だけを評価してこなかったつもりですが、知らず知らずのうちにそんな思いをしていたなんて…と。

そんな彼女の「どうせ私には…」という考え方が少しずつ薄れてきたのは、彼女が小学校3年生~4年生の頃。

小さいころからこだわりも強く自己主張はしっかりする、自分の意見もハッキリ言える子でしたが、そこに「自分で考えて」が加わりはじめました。
(自己主張もするし、自分の意見もあるのに、劣等感。私はここをなかなか理解できなかった・笑)
3~4年生は、ひとりで出来ることが増えてきて、自分の判断で行動できる場面も増え始める年齢です。行動範囲も人間関係も同時に広がっていくタイミングです。
「自分はこう思うから、こうしたい。」
「自分はこうしたいと思ったから、こんな工夫・努力をする」
というように、「結果、結論」から逆算してその前の行動を自分で決め始めたのです。
とはいえ、所詮9歳10歳の言うことですから、
ちょっとそれはおかしいぞ、と思うことも多々あったのですが…。

身の危険を伴ったり、周りに迷惑をかけないのであれば
「自分で考えて良いと思ったのであればやってみたら」と言うのが江口家流。
よっぽどのことでない限りはダメと言わず自主性に任せてみました。

最初は失敗もしたし、思うようにいかず本人も傷ついたことでしょう。
でも、そんな経験を積み重ね、今でではとても頼もしくしっかりしています。
時々、わが娘ながら「偉いね~」と唸ってしまうほど(笑)

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子どもが持つ
「本当においしいもの」をキャッチする能力

彼女のその思考回路や行動力は、さてどこから来たのか?
もちろん、持って生まれた性格も大きく影響するのでしょうが、私は1つの要素として
小さい頃からの食との関わりも大きいと思っています。

「風邪をひかないように、体の中かから温めるもの食べようね」とか
「今日はちょっとお腹の調子が悪いから、お腹に負担のかからないものにしようね」と話しながら一緒にお料理してきたこと、食卓でそんな会話をした事も大きかったと思います。
「何となく」や「みんなが言うから」ではなく「自分はどうなの?自分の体は今どういう状態??」と常に意識するところから、受動的ではなく能動的な思考回路になるのだと思うのです。友達がこうだからではなく「私はこうしたい、こうなりたい」だから「こうする」という考え方を小さいときから自然と身に着けてくれたように思います。

大人側の根気も多少は必要です。
「食べたいと駄々をこねるから」と言って、すぐにお菓子や甘いものを手渡すのではなく
「ごはんの後で食べようね」「今日はこの量でストップ、残りは明日にしようね」
と、単に「ダメ」ではなく、理由やなぜそうした方が良いのかをシンプルに伝えることも必要です。

そして、日々のご飯できちんと素材の味や旬の味を覚えてもらう。
こうやって、文章にするととても難しいように感じるかも知れませんが、
子供は大人よりも「本当においしいもの」をキャッチする能力を持っています。
理屈や情報がインプットされていないので、本来、体が必要としているもの、本物の素材
を、動物的に判断できるように思います。
体が喜ぶ旬のものや薄味の素材がわかる味付け、合成的ではないうま味などを経験すると
それらを欲してくれるのです。
刺激物や強すぎる味付け、中毒性のある合成的な味付けしか知らないで育つと、本当の素材の味では物足りなくなるので、どんどん刺激物や味の濃いもの甘いものを欲するようになるのです。

どんなに忙しくてもご飯をしっかり作る理由。

今、長女はバレエに夢中です。
夫の体質を大きく受け継いだお陰で太りにくく、手足も長い方なので、バレエをするには恵まれた体形だと思います。
それに加えて彼女は「食べること」が体に大きく影響することを嫌というほど私から聞かされますから(笑)
夜遅くまでレッスンがあった日は、夕飯には炭水化物は食べませんし、
大好きなアイスクリームも他に甘いものを食べた日は「明日にする」としっかりセルフコントロールできます。
彼女のことをよく知る私の友人知人からは「自己管理力、意識の高い小学生」と呼ばれています。
こういったところでも惰性で食べる、とりあえず食べる ではなく、能動的に食とかかわることで、自然とセルフコントロールができるようになるのだと思います。

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「自分自身を大切にして自分の好きなことを思いきりやりきる」
そんな大人になってもらうことが、私が一番に子供たちに願うことなのですが
「食べること」をしっかり伝えておけば、あとは自分たちでやってくれると思うのです。
まぁ、成長過程なので、まだまだ願望でしかないのですが…。

それでも、わが子の成長を見ていて「食育」は食べること以外のすべてのことにつながっていると感じる今日この頃です。
子育てをしていく上で、色々なアプローチの仕方があると思っていますが、毎日のこと、命に直結していることだからこそ、言葉にすると難しく、なかなか子供に伝わりにくい事柄も、食べることを通せばすんなり伝えていけるように思うのです。

そして最も大切なこと、「あなたを大切に思い愛しているんだよ」って気持ちも
言葉にすると、重く照れるような言葉になりますが、
毎日の食事から「あなたを大切に思っている」という思いが伝わるように思っています。
だから、どれだけ仕事が忙しくても「ごはん」だけはしっかり作ろうと思うのです。
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江口恵子さん「日々、伝わる食育」vol,1の記事はこちら
江口恵子さん「日々、伝わる食育」vol,2の記事はこちら

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