料理家・江口恵子さんの「日々、伝わる食育」 料理教室インタビュー“子供には本物の経験を”

料理家でありフードスタイリストとしても活躍されている江口恵子さんは、広告や書籍制作、企業のプロモーションの仕事に加え、吉祥寺のカフェ「ORIDO(オリド)」を主宰。忙しい日々を送りながらも、実は3人のお子様を持つ「母」でもあります。

huerepにも所属し、さらに仕事の幅を広げようと日々精力的に活動されています。過去の記事では仕事と子育ての両立、そしてご自身が大切にされている子育てのモットーについて伺いました。
この春から子供料理教室を始めた江口さん。
ご自身以外のお子さんに料理を教えることで
また新たな発見もあったようです。
江口さんに教室を始めたきっかけや、
食育に対する考え方ついてお話を伺いました。

s_09V9645.jpg

料理を通して身に着く段取り力や自主性

――まずは子供料理教室を始められたきっかけについて教えてください。

元々は私の教室に通われている生徒さんとそのお子さんによる親子料理教室として夏休みなどに開催していました。
イベント的に開催していく中で、参加者の方から、
「子供が料理好きなことが分かったけれど、おうちだとどう教えたらいいか分からない」という多くの声をいただき、17年4月より子供料理教室として定例で開催するようになりました。

料理を通して段取り力や自主性が身に付くのではないかという考えのもと子育てをしてまいりましたが、私の三人の子供たちが成長し、ある一定の成果が目に見える形となって現れてきたということも、教室開設の後押しとなっているのかもしれません。

また私自身の育った環境も大きく影響していると思います。
私は幼い頃から料理が好きで、母親の手伝いをしたり、
様々な料理を教えてもらいました。
忘れられないエピソードとしては、小学校一年生の時に母に
「りんごが食べたい」と言ったら、「自分でむいて」と言われ、
包丁の使い方を教えてもらったことです。

自分が母親から教えてもらったこと、そして今まさに自分が子供たちに伝えていることをもっと広く伝えてきたいという思いから子供料理教室を始めました。

「危ないから排除」ばかりでは
成長につながらない

――子供料理教室を始めるにあたってどのような準備をされましたか?

大人向けの料理教室よりも、火や包丁の取り扱いにはさらに細心の注意を払い、
環境を整えていますが、危ないものを子供の目の前から全て排除して
安全なレールを敷くことは子供の成長にはつながらないと考えています。

キッチンツールについても、特別に子供用を用意したわけではなく、
元々お教室やお店で使っていたものの中から、子供の手のサイズに合った
小さなサイズのものを選んで使っています。

基本スタイルは、「手も口も出さず、目は離さない」
年齢や能力に合わせて段階的に教え、なるべく自分の手を動かしてもらうことで
自主性を育てていきます。

江口家では自分の子育てについて基本は放任主義ですが、ただ子供を放っておくのではなく、そこに至るまでのプロセスはとても細かく設定しています。

例えば包丁の使い方の指導。
まずはテーブルナイフから始め、初めて包丁を使う時は二人羽織になって
包丁の動きを教え、一人で包丁を使うようになってからも必ず目の届く場所で、
何かあればすぐに手が出せる場所で作業させます。
手も口も出されないと、子供は自分一人で出来ているつもりになって
自信につながり、習得も早いですね。


――実際に教室を始めてみていかがでしたか?

みなさんとっても上手にお料理をします!
レッスンの様子を見ていたお母さんからは、
「うちの子がこんなことまでできるなんて!」「家で見たことがないくらい集中している」など喜びと驚きの声をいただきます。

子供って意外と何でもできるんですよ。
子供扱いしているといつまで経っても何もできないままですし、
本来ならできることもやらせないままだと、
できることもできなくなってしまいます。

子供ですから、時には思いがけないことをする子もいますよ。
以前みんなで白玉を作っていた時に、おにぎりサイズに成型した子がいました。
茹でるのに時間がかかるからみんなが先に食べている間もちゃんと待つこと、
必ず残さず食べることを約束させて茹でてあげました。
時間をかけて茹であげた白玉を一生懸命食べていましたが、もうあのサイズの白玉を作ることはないでしょうね(笑)。

「好きなことをやらせる代わりに、責任も持たせる」

このように大人が腹をくくること、とことん子供に付き合うと決心することも大事ですね。

s_09V0120.jpg

子供には本物の経験を。
手で触った経験は何年後かに活きてくる

――教室を開催することで、江口さんご自身の家庭や子育てに与えた影響は何かありますか?

自分の子供たちの声にも今一度耳を傾けようと思いました(笑)。
江口家では子供が小さい頃からこのスタイルで育てているので、色々なことが自分でできて当たり前。
でも、様々な年齢や段階のお子さんを見ていると、うちの子達もこういう過程を経て大きくなっていったんだなと改めて気付かされました。
これから子供が成長して思春期に入ると、衣食住とはまた違ったレベルのことを教えていかなければならないので、それぞれに必要なプロセスを新たに組み立てて身に付けさせていこうと考えています。


――これからチャレンジしてみたいことを教えてください。

素敵な子供用のキッチンツールをプロデュースしてみたいです。
子供用のキッチンツールはいろいろありますが、子供だましのものだったり、子供っぽいキャラクターやデザインだったり。
そういったものとは違う、新たなコンセプトのキッチンツールを作ってみたいですね。
子供料理教室の現場を通して、本当に必要とされるツールづくりを、すでに構想をめぐらせながらイメージしています。
子供がはじめて持つキッチンツールだからこそ、本物の良さを体験してもらいたい。
今はまだその本物の良さが分からなくても、手で触って、使ってみた経験は、必ず何年か後に活きてくると信じています。

s_09V9748.jpg

――江口さんにとっての「食育」とは?

「本当の意味での生命力を育てること」

こうような思いは以前からありましたが、なかなかいい表現が見つからなくて…。
でも自分の子供たちや生徒さんのお子さんの成長を見ていく中でようやく言葉にできるようになりました。

子供ってたくましいんです。
自分の考えや、まだ持ち合わせの少ない情報でなんとか問題を解決しようとします。
本来持っている生命力で何とか生きていこうとしているんです。

机に向かう勉強では得られない、
でも生活において何よりも大切なことが詰まっているのが料理です。
子供料理教室を通して、言葉ではなく、
体験や体感としてこの生命力やたくましさを育てていきたいです。


――最後に、子育て真っ最中のお母さんたちへメッセージをお願いします。

お母さんは大変です。
何でも物事にはステップがあるのに、お母さんは子供を産んだその日から
すぐにお母さんになります。
テレビやネットでは様々な情報があふれ、「理想のお母さん像」を本人も
目指してしまうし、周りからも求められてしまいます。

大切なのは子供と一緒にいる時間の長さではなく、
本気で正面から向き合うかということ。
ちょっとの無理はしてもいいけれど、
自分にとってすごく負担となるような無理はしなくてもいいんです。

実は私は子供のままごとや遊びに付き合うのが苦手で…。
以前は料理をする時間を削ってまで子供と遊ぶ時間を作っていました。
でもそのような無理をすることはやめ、
子供と一緒に料理をすることで子供との時間を作るという、
自分にとってストレスのない、最良の選択をしました。

お母さんが無理をすることなく、心身共にいい状態をキープしてぶれずに子供と向き合えば、子供は本来持つ能力や可能性でまっすぐに育ちますよ!

s_09V9861.jpg

info
次回の記事では、江口さん主宰の子供料理教室の様子をレポートしたいと思います。
子供たちの思いがけないリアクションに驚かされたり、感心したり。大人にとっても学びの多い料理教室でした。どうぞご期待ください!



江口恵子さんのプロフィールはこちら

江口恵子さん「日々、伝わる食育」vol,1の記事はこちら
江口恵子さん「日々、伝わる食育」vol,2の記事はこちら

撮影のお問い合わせはこちら

著者プロフィール

著者アイコン
株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。

関連記事