料理家・江口恵子さんの「日々、伝わる食育」料理教室レポート“生命力に満ちた教室”

料理家でありフードスタイリストとしても活躍されている江口恵子さんは、広告や書籍制作、企業のプロモーションの仕事に加え、吉祥寺のカフェ「ORIDO(オリド)」を主宰。忙しい日々を送りながらも、実は3人のお子様を持つ「母」でもあります。

huerepにも所属し、さらに仕事の幅を広げようと日々精力的に活動されています。過去の記事では仕事と子育ての両立、
そしてご自身が大切にされている子育てのモットーについて伺いました。
この春から子供料理教室を始められた江口さん。
今回はそのお教室の様子をご紹介します。

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子供の五感を刺激する料理

今回取材したのは、料理家でありフードスタイリストでもある
江口恵子さんの子供料理教室。
カフェが併設された教室は大きく窓がとられ、
夏の夕方の柔らかな日差しがふり注ぎます。
料理教室では「包丁も使う」ということだったので、
生徒さんの年齢層は小学生ぐらいをイメージしていました。
ところが実際は、なんと大半は年長さん!
下は年少さんから、上は小学校3年生とのこと。
一体どんなレッスンが繰り広げられるのでしょうか。

「こんにちはー!」

教室に響き渡る元気のいい声と共に、
子供たちがお母さんと一緒に次々とやってきました。
みんな今日のレッスンを楽しみにしていたのでしょう。
それぞれ持参した色とりどりのエプロンと小さな三角巾を、
お母さんの手を借りることなく各々一生懸命に身に付けていきます。

準備も整い、キッチンに並んだ子供たちは、女の子5名、男の子2名の計7名。
指導者は江口さんのみで、アシスタントはいません。

本日のメニューは「冷や汁」

子供の料理教室というと、ついつい簡単なお菓子や
いかにも子供が好きそうな料理をイメージしてしまうので、
まさかの「冷や汁」にびっくり。
暑くなってくると江口さんの食卓にもよくのぼる料理だそうです。

早速レッスンスタートです。

まずは焼かれた鯵の干物を手でほぐすところから作業スタート。
二つのバットに、身の部分と、皮と骨の部分を分けていきます。

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「ここは食べられるの?」「目玉だ!」

子供たちは大喜び。
最近では、骨のある魚が食べられない子供や、骨が取り除かれた魚しか食べたことがない子供もいる中、手で触って、味見しながら楽しそうに作業をする子供たちの姿はとても新鮮でした。

その様子を見ていたお母さんにお話を伺うと、「元々好き嫌いの多い子供でしたが、ここで触った食材は食べられるようになるんです!」と嬉しそうに話してくださいました。

子供の自主性を育てるレッスン

きれいに無駄なく鯵の身がほぐされると、大きなすり鉢が二つ用意されます。

江口さん「じゃあ二つのチームに分かれて!」

チームの分け方も子供たちに委ねます。
子供たちが少し考えてから出した結論は、
年齢が大きいチームと、小さいチームに分かれることでした。
チーム分けを子供たち自身で行うことだけでも驚きだったのですが、
さらに一番年長者(とはいっても小学校3年生)の男の子が、
バランスを見て自ら年齢が小さいチームへ移動。
レッスン開始数十分、驚きの連続です。

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すりこぎを使う人、すり鉢を押さえる人、材料を入れる人。
じゃんけんをしたり、交代しながらうまく役割分担して作業を進めていきます。

「お料理をするときはテーブルにひじをついちゃいけませんよ」
「どうやったらうまくできると思う?」
「あなたはどうしたいの?」

江口さんは7名の子供たちをまんべんなく見渡し、
教える時は子供の目線に腰を落とし、じっと目を見て声をかけていきます。

子供たちがそろそろすり鉢での作業に飽きてきたところで、
いよいよ包丁とまな板の登場。
子供たちの目が再び輝きます。
今日切るものは、きゅうりとなす。

江口さん「これから暑くなってきたら、きゅうりやなすやトマトを食べてね。みんな夏のお野菜で、食べると身体の中から涼しくなるのよ。
暑いからアイスクリームちょうだい、じゃなくてきゅうりちょうだいってお母さんに言ってね!」

小学生の子は手際よく包丁を使って、年長さんたちはテーブルナイフを使って野菜を一生懸命切っていきます。

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今回初めて切る作業をする年少さんもいました。
江口さんは二人羽織になってテーブルナイフを使って丁寧に指導していきます。
その子の真剣な目と、集中している様子がとても印象的でした。

最後に青じその葉をちぎっていきます。

江口さん「ちぎる前に、葉っぱをポンっと手でたたいてみて。香りがするでしょう?」

子供たちもポンポン、ポンポンと小さな手で葉をたたきます。
顔をしかめる子もいれば、「いい香り!」といって喜ぶ子もいて反応は様々。
でも子供たちがこの香りから夏の訪れを感じ、身体に記憶したことは確かです。
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開始一時間で、冷や汁の完成です。
完成した料理は、とても子供たちが作ったものとは思えないほどきれいな仕上がり!

使った道具も子供たちが全て洗って片づけます。

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いよいよ試食タイム。
冷や汁は少し大人の味かな?と思いきや、
子供たちは自分たちで作った料理を美味しそうに嬉しそうに食べています。
付添いのお母さんが抱っこしている赤ちゃんまでこの味を気に入ったのか、
「もっともっと」と欲しがります。


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生命力に満ちた教室

ここで、5歳の娘さんを通わせている神谷さんにお話を伺いました。

「娘は今日で5回目の参加です。
元々私がこのお教室に通っていました。
その中で江口先生の料理の教え方や、子育てを始めとした様々な考え方に共感していたこともあり、娘も通わせるようになりました。
最初は娘が先生のお話をちゃんと聞けるのかとても不安でした。
でも様子を見ていてびっくり、とても生き生きしてるんです!
お教室で卵が上手く割れたことが嬉しかったようで、
家で私が冷蔵庫を開ける度に卵を割りたがるようになりました。
その他にも洗い物やお米とぎ、お掃除まで、積極的に手伝うようになりました。」

きちんと自己主張はするけれど、相手と揉めることなく役割分担をして、
料理を完成させた子供たち、その自主性にただただ驚きの連続でした。
そして参加者のお母さんたちから伺ったお話から、おうちに帰ってからも様々なかたちとなって確実に子供の成長が見て取れるということで、江口さんの思いがしっかりと伝わっていることが分かります。
こうした子供の成長する姿を見て、親もまた大きく心動かされるのではないでしょうか。

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江口さん「この子供料理教室を通して、ご両親にも私の思いを伝えていければと思っています。自分の価値基準を押し付けるのではなく、本当に子供のことを考えて寄り添ってほしい。
それはただ子供のわがままを聞いたり、言いなりになるのではなく、一個人として認めてあげて接することです。

私自身も現在進行形の子育て真っ最中の身。
子育てをしながら思ったこと、こういう風にすればいらいらしなかったんだと気が付いたことを教えるのではなく、リアルタイムで共有することは、名だたる教育者の方や、年の離れた人生の大先輩からの助言とはまた違った角度から伝えられることがたくさんあると思います。

子育ては大変だけど、こんなにクリエイティブなことはありません!
楽しまないと損です!」

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インタビューと子供料理教室の取材を通して、江口さんの子供や食に対する熱い思いや、一貫した考え方が伝わってきました。
そしてそれをまっすぐに受け止める子供たちや、その子供の成長を喜ぶと同時に、また新たに子育てを頑張ろうという活力を得るお母さんたちの姿も目の当たりにしました。
こうして心と身体に刻まれた経験は、子供自身にとっても、その家族にとっても、また周囲の人々へも力を与えます。
江口さんの考える食育を具現化した、まさに生命力に満ちた教室でした。

江口恵子さんのプロフィールはこちら

前回のインタビューはこちら

江口恵子さん「日々、伝わる食育」vol,1の記事はこちら
江口恵子さん「日々、伝わる食育」vol,2の記事はこちら

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。

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