『ミラノで写真展ひらいてみた』travel report vol1  フォトグラファー大野咲子

5月12日から10日間にわたり、イタリア・ミラノの書店『GOGOL& COMPANY』で写真展『BLINKING. 1 lens, too happy, 3days」』を開催した、フォトグラファー大野咲子さん。会期中はSNSなどでも、愉しそうな展示の様子が連日アップされていました。
「BLINKING」(まばたき)と名付けられた大野さんの作品は、ミラノの人たちの目にどんな風に映ったのでしょうか。
旅から帰ってきた大野さんに、今回の旅のお話をお聞きしました!
写真展を軸に、たくさんの方との出会いがあり、とっても刺激をもらったそうです。

―おかえりなさい!ミラノでの 写真展はどうでしたか?
すごく楽しかった! たくさんの人が来場してくれました。写真展に来てくれた人が、友達を連れてきてくれたり、地元のクリエイターの方とも作品や撮影について話ができて。とにかく写真展を中心に、本当にたくさんの出会いがあって刺激的でした。

―会場はミラノにある書店だったんですね。
ミラノから少しはずれた川沿いのナヴィリオ地区にある『GOGOL& COMPANY』という書店です。この街は最近、クリエイティブな街として再開発されて、グラフィックデザイナーやフォトグラファー、ぺインターなどアトリエを持つ人がたくさん住んでいます。書店は、文学やアート、音楽を愛するダニーロさんとトスカさん夫婦が経営していて、世界中から二人が気にいった書籍を集めた、そんなインディペンデント系の書店です。カフェも併設されていて、お店に来た人は自宅にいるようにコーヒーを飲みながらリラックスして過ごしています。
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―すごく素敵な書店ですね。そもそも、写真展をここで開催するきっかけは?
2014年に東京参宮橋で写真展を開催して、その時に作った作品集『1lens too happy 3days』をたくさんの人に見てほしくて。ミラノを中心にいろんな街の書店に取り扱いのお願いをメールで送りました。そんな中、『GOGOL& COMPANY』が作品集を買い取りしてくれると連絡があって、その時はすごく嬉しかったです。ちょうど10月に仕事でイタリアに行く事があったので、合間を縫ってお店にも直接行きました。その時には、作品集の取り扱いと一緒にこのお店で展示もしたくて、展示プランを2つ持ってオーナーのトスカさんにプレゼンしました。

―すごいスピードで展示が決まったんですね。
10月にお店でプレゼンをして、その次の5月にはこうして展示が実現しました。
展示のプランを話して、OKがもらえた時は正直「言ってみるもんだな」って思いました。帰国してすぐに展示の準備に取り掛かりました。同時に英語の勉強もスタートしたりして。自分の小さな写真集が、遠いミラノの書店に届き、そこでの出会いが今度は「写真展」という形で実っていく。私の中でとても大切な出会いになりました。

―実際は、どんなコンセプトで展示をしたんですか?
今回は「BLINKING」(まばたき)というタイトルをつけて展示しました。もともと、人のまばたきを見るのが好きで。ずっと「まばたきするように撮影してみたい」と思っていました。よく見ていると、人によって、まばたきするリズムや強さが違う。そういった自然な個性を持つ「まばたき」をシャッターを切る瞬間瞬間に重ねて、とにかくたくさん撮って思考が働かなくなるくらい夢中になって撮りました。そしたらカメラと自分が一体化したような感覚になり、やっと「まばたき」に近い感覚で撮れました。作品は木製パネルにして、店の窓に白いボードをかけて展示しています。1か所の壁に3 枚~5 枚の作品を並べました。展示した作品にはあえて高低差をつけて、まばたきのリズム感を感じてもらえるようにしています。
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―「まばたき」に惹きつけられるようになったのは、どうしてですか?
私自身、どんなものにも、計算されて作られた美しさより、無意識のうちにできた美しさに惹かれます。
無意識とは決して偶然ではなくて、その人が今まで積み重ねてきた経験や技術、感性がかならず写しこまれます。
無意識の個性に私はとても興味があるんです。
もし10年後に同じように「まばたき」シリーズとして撮影したとしたら今回とは全然違うものになる。そこに無意識ならではのおもしろさがあると思いました。

たとえば、この作品は、二枚の写真がまたがってプリントされているのですが、まばたきの余韻や、シャッターを押す瞬間を感じられるように。そして作品を通じて、それぞれの写真を持っている人同士がパズルのピースのように、どこかで繋がりを意識できるように。そういったコンセプトで展示しました。
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 ―気に入った写真を一枚、選んで持ちかえってもらう展示もされたんですね。
この大きな壁には、この作品シリーズの小さなプリントをクリップで貼って、展示に来てくれた人が、気に入った写真を1枚持ち帰ってもらえるようにしました。たぶん200枚くらいは用意したと思います。
プリントした紙は、いろんな種類を混ぜていて、みなさんプリントの質感や色を熱心に見ながら選んでくれました。
人気があった写真は、表紙になった写真と、ラディッシュの写真、そして「イカ」の写真が意外と人気があって驚きました。この写真を選んでくれた人に聞いてみたら、「シンプルで、昔の自分の記憶と重なるところがある」って。

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すごく好評だったんですね。
本当に時間をかけて選んでくれる人が多くて、私もその様子を見ていて楽しかったです。今回の展示作品を撮影しているとき、仕事の広告撮影とは違って、私自身がとても素直に撮ること自体を楽しめたので。その感覚を見てくれた人にもシェアしたいと思って、こういった展示にしました。

会場に来てくれた人は熱心に選んで、やっと一枚を決めて、私に「この素敵な一枚を持って帰りたいの」と言ってくれるんです。それは同世代のクリエイターだったり、赤ちゃんを抱いたお母さんだったり、この地区に長年住むおばさんだったり。いろんな世代の人がめいめいに、自分の気に入った写真を見つけて持ちかえってくれる。
遠いミラノの街で展示をしたけど、私は作品を通じて、ここに足を運んでくれたミラノの人たちと繋がっている感覚があって嬉しかったです。
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―写真展の当日にはトークイベントも開催されたんですよね。
トスカさんの友人で、日本語を学んでいるフェデリカさんという方が通訳をしてくれて、トークイベントをしました。集まってくれた人に今回の展示のコンセプトや、私自身の写真のキャリアについてお話したんですけど、一番はこの展示の感想と、イタリアで見る写真と、私が撮った日本の写真はどんな違いを感じるのか、トークイベントの中で聞いてみたかったんです。
ちなみに集まってくれた人に日本のお土産を渡したのですが、「それをあげる代わりに、私からの質問にも答えてね。」ってジョークで言ってみたんです。みんな笑ってましたけど、たくさん質問に答えてくれました。

 「ポエトリー」「物語的」「カラフル」、「シンプル」、「クリア」とか、中には、「センセーショナル」「エステティック」という感想もありました。エステティックって日本語に訳すとニュアンスが難しいんですけど、審美眼とかそういった意味があるみたいです。他には「日本人はどうして、キレイなものを作るのが得意なんだ」とか、「ヨーロッパはコンセプチュアルな作品が多いけど、日本は本能的に撮られた作品が多いように感じる」など。

 地元のグラフィックデザイナーの人には「アジアの人たちは、美しいものを作るDNAがもともと備わっている気がして、ちょっと嫉妬しちゃう。」と言われました。でも私から見ればイタリア人はどうしてそんなに色彩豊かに表現するのがうまいんだろうって思う。それぞれのクリエイティブについて、いろんな意見がきけてとても貴重な体験でした。
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今回、写真展の準備を「パーフェクトだ!見習いたい」とトスカさんに言われたそうですね。
スーツケース4つに作品や展示のための準備をギュウギュウに詰めて持って行きました。実は、今回の展示のために、いつも仕事を一緒にしているフードスタイリストの勝又友起子さんや、hueプロデューサーで通訳も手伝ってくれた太田久美子さん、私のHPのデザインもしてくれた友人も一緒に来てくれて、展示準備を手伝ってくれました。現地に到着して、すぐに展示準備に取り掛かったんですけど、皆に手伝ってもらって本当に助かりました。トスカさんは、「チームワークがすごい!!」と驚いていました。
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この写真展は、たくさんの人の協力や、多くの出会いがあって、その一つひとつの積み重ねで実現できたと思います。自分が写真をしていなかったら、こんな出来事は起こらなかった。そう思うと、写真がすべての出会いや出来事を経験させてくれました。海外へ写真集を送った事も、英語なんて嫌いだったけど、勉強しようと思えた事も。

写真展の感想を聞いたとき、「Like a magic!」(魔法みたい)って言ってくれた人がいたんですが、マジックにかけられたのは、私の方かも。そう感じるくらい、1冊の写真集が私にいろんな経験をさせてくれた、本当に魔法にかけられたような写真展でした。

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今回、写真展の会場となった『GOGOL& COMPANY』のオーナーであるトスカさんにも、写真展の感想や、大野さんの出会いについてお話をお聞きしました。

Interview to GOGOL & COMPANY with Tosca and Marta
カラフルだけど強すぎず、センシティブで、色鮮やかな紙吹雪のような印象

日本のアーテイストからメールが届いたので、最初はとても驚きました!
初めてサキコにあった時、“JOY!!(楽しい)” “”本当にいるんだ!”と思いました 笑もともと日本のカルチャーが大好きなので、サキコから連絡をもらえて本当に嬉しかったです。日本の写真のイメージは、とても「クリーン」で「シンプル」なイメージです。

たとえ強い写真であっても、そのイメージのまま、「フレッシュ」な印象を与えてくれます。そしてサキコの写真は、そのイメージの通りの作品でした。
私たちは、年に3~5回、フィロソフィーが合い、私たちが“Fall in Love(恋に落ちる)”したアーティストと一緒に展示をしています。お客さんには、有名なフォトグラファーやアーティストなど、アートに造詣が深い方が多いので、展示のコンセプトやどのようなアーティストを紹介するかは、とても大事にしています。

サキコが『GOGOL & COMPANY』での展示プラン(2案も!)を用意してくれ、素敵なプレゼンをしてくれて本当に感動しました!イタリアのアーティストとは全く異なるアプローチに、私たちは感銘をうけたし、見習いたいなとも思いました。

 開催の1カ月前からお客さんに告知を始めましたが、東京からアーティストが来ることに、皆さん興味津津!常連のアーティスト達も、サキコの展示や彼女の話が聞ける事を楽しみにしていました。期間中は、日本のカルチャーも発信したくて、日本に関連する団体やジャーナリストなど、一緒にイベントを盛り上げてくれる人たちにも声をかけました。期間中、お寿司に関する書籍のジャーナリストやお寿司屋さんを招いてのイベントも開催しました。

驚いたのは、初日のトークイベントでお客さんが積極的にサキコに質問をしていた事!今までトークイベントでは誰も質問しない事が多いので、とても驚きました。

たくさんのフォトグラファーやクリエイターが集まってくれて、サキコの写真やコンセプトに興味をもち、トークイベント終了した後も一人づつサキコに話しかける姿が印象的でした。『GOGOL & COMPANY』のネットワークとサキコがつながってくれる事を期待していたので、本当に嬉しかったです。サキコの写真は、彼女との出会いも含めて”magic(奇跡)”のようだと感じます。

イタリア国内でも心が通じるアーティストに出会う事は難しいのに、イタリアと東京でつながり、分かち合える事が出来るなんて、本当に奇跡です!今度は、東京でGOGOL & COMPANY with SAKIKO イベントをやってみたいです!

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ミラノでの写真展を開催して、写真が、今までの自分にはなかった出会いや経験をさせてくれたという大野さん。トスカさんは、この写真展に多くの人を呼び、最大限に活用した大野さんのクリエイティビティとオーガニゼーションに感動した!といいます。

旅の写真には、ほんとうに目を輝かせて作品に魅入っている人たちがたくさん写されていました。地元のクリエイターをはじめたくさんの方が足を運んでくれた『GOGOL& COMPANY』での写真展。たくさんの出会いの中でも地元フォトグラファーの方と意気投合し、スタジオにもお邪魔したそうです。『ミラノで写真展開催してみた』後半のレポートでは、写真展を軸に出会ったたくさんの魅力的な人との出会いについて、お話を伺います。お楽しみに!

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