『ミラノで写真展ひらいてみた』travel report vol2   フォトグラファー大野咲子

イタリア・ミラノの書店『GOGOL& COMPANY』で写真展『BLINKING. 1 lens, too happy, 3days」』を開催した、フォトグラファー大野咲子さん。第二弾となるレポートでは、写真展示を通じて出会った地元のクリエイターや、シェフとのコラボレーション撮影のお話をお聞きしました。ミラノのフォトグラファー、サラ・ジェントルさんとの話や、世界的にも注目される料理人徳吉洋二さんとのコラボレーション撮影など、旅の期間中、刺激に満ち溢れた時間をすごしたそうです。

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地元フォトグラファーとの出会い

写真展のトークイベントには、地元フォトグラファーの方も来てくれていたそうですね
『GOGOL& COMPANY』の常連客は、地元のクリエイターの方が多いので写真展や、トークイベントにもたくさんのアーティスト、クリエイターの方が来てくれました。ミラノでも有名なフォトグラファーのフランシスコ・ジョディスさんも、トークイベントに来てくれて写真について話をしていたんですが、「今度ゆっくり写真の話をしよう、アトリエにぜひ来て」と後日、スタジオでの“アペリティーボ”に招待してくれました。

ミラノのフォトグラファーとの “アペリティーボ”はどうでしたか?
アペリティーボとは、軽い前菜やワインを囲む、ディナーの前の時間なんですが、そこで互いの撮影について話をしました。特に、フランシスコさんのパートナーである、フォトグラファーのサラ・ジェントルさんとは歳も近く、同じ女性フォトグラファーという事で撮影の話で盛り上がりました。
murakami.jpg Photo:Sara Gentile
サラさんは、イタリアで発売された村上春樹の小説『UOMINI SENZA DONNE (女のいない男たち)』の表紙撮影も手がけたり、他にも広告撮影の分野で活躍しています。その一方で、作品制作として“家族”の写真を撮り続けているんです。
私自身も、仕事の撮影とは別に実家や家族の姿を撮影しているので、お互いの作品の話は刺激になりました。
サラさんは、なんと11人の姉妹なんですが、下の4人の妹たちの姿を中心に作品を撮り続けています。4人の妹たちの世界をのぞき見しているような感覚で幻想の世界を思わせるような空気感で捉えています。サラさんのコンセプトを強く感じさせる作品シリーズです。

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002.jpgPhoto:Sara Gentile
サラさんは「サキコのトークイベントを聞いたとき、自分の作品にとても共通するところがあって驚いた。遠い日本のフォトグラファーと、作品撮影について共感しあえる点があるなんて嬉しい」と。私も、作品を一緒に見せて「いつか二人で展示をしてみたいね」と盛り上がりました。

 大野さんの作品シリーズ“Home town”について聞かせてください
私も、仕事の撮影とは別に、実家の家や家族の姿を撮り続けています。実家は江戸時代から建つ平屋だったのですが、2013年についに立て替える事が決まり、また同じ時期に兄が実家の稼業を継ぐことになり、そういったタイミングが重なったことがきっかけで撮影をはじめました。古くはちょんまげを結ったご先祖様が江戸時代に建てた家。立派な大黒柱にささえられて、関東大震災も東日本大震災も乗り越えてきた家です。
私も19歳までここで暮らしていました。なので、立て替えに関してはいろいろ思う事が家族みんなにあって、その思いをかたちに残したくて撮影をしています。

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 003.jpg Photo:Sakiko Ohno
このシリーズは、作品をセレクトする作業の中でコンセプトを意識していますが、撮影そのものは、淡々と出来ごとや風景、家族の表情をそのまま切り取るようにしています。作品一枚一枚には、率直な自分のコメントをつけています。

004.jpg 005.jpgPhoto:Sakiko Ohno

最初は撮影していると、母は照れているような感じでしたが、だんだん撮影慣れしてきたのか、今ではHPに作品をまとめて掲載するとすごく喜んでくれます。私にしかできない親孝行のような気がして。母も「写真集にまとめてね」って言ってくれるんですが、このシリーズをいつか作品集としてまとめたいと思っています。
サラさんとも、いつか必ず作品でコラボレーションしたい。
ミラノでも東京でも、二人で展示することを次の目標にしたいって思っています。
目標は大きく、『オペラシティ』や『東京写真美術館』で展示したいですね。

ミラノで活躍する二人のシェフとの出会い

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ミラノで活躍するシェフの方とコラボ撮影もされたそうですね。

ミラノへ発つ前に、事前に作品撮影のオファーをお願いしていました。
一人は、ミラノに一番最初にできたラーメン店『カーザラーメン』のオーナー、ルカさんです。いま、ミラノでは日本のラーメンブームで、たくさんお店があるのですがその中でも草分け的な存在の『カーザラーメン』で作品を撮影したいとお願いしていました。
ルカさんに、私の作品を添えてメールをしたらすごく興味を持ってくださって、動画作品に挑戦することになりました。
『カーザラーメン』は横浜ラーメン博物館に期間限定で出店していたり、ルカさんは『YOUはなにしに日本へ』(テレビ東京)に出演されたり、とても話題のお店なんです。
実際に訪れてみると、日本のラーメン屋さんとは異なる雰囲気の店内や、ルカさん自身が本当に楽しみながら営業している姿がとても印象的だったので、ルカさんの雰囲気やキャラクターを「朗らかな開拓者」というイメージで設定して撮影をしました。実は曲もオリジナルで作っていて今、動画の編集の真っ最中です。

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もう一人、作品を撮影させてもらったのは、世界的にも注目されている料理人、徳吉洋二さんです。ミラノの「RISTORANTE TOKUYOSHI」はミシュランで星を獲得し、人気のお店です。HPで徳吉さんの料理を見た時に、アートのような独特の美しさを感じたことと、芸術の国イタリアである事から「絵画のように料理撮影をしてみたい」と思っていました。どういった環境で撮影ができるのかわからないまま、カンバスを持って緊張しながら現場へ向かいました。
徳吉さんがミーティングで少し到着が遅れるとの事だったので、先に撮影をスタートさせてもらったのですが、1カット目の撮影が終わったあと、徳吉さんが到着した時、現場の空気がピリッと変わったんです。徳吉さん自身がもつオーラというか、空気感に私もすごく影響をうけました。

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最初は緊張気味だった作品撮影も、カットが進むうちにお互いに信頼感が芽生えたというか。「光がすごくきれいだね」って徳吉さんに言ってもらえて。
子どもが砂遊びをするように、お店の床にペタリと皆で座りこんで、料理と写真で遊ぶような感覚で作品撮影を続けました。

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160513_tokuyoshisan0142_b.jpgPhoto:Sakiko Ohno
撮影後、改めて振り返ると1カット目はやはり自分のトーンが強い。でもそれ以降はだんだんと、徳吉さんが持つ世界観が混ざり合って撮影できた感覚がありました。これがコラボレーションの醍醐味というか。普段の撮影では得られなかった経験でした。

旅の最終日には、仕事として撮影のオファーもあったそうですね。
実は展示をした『GOGOL& COMPANY』のトスカから、ミラノ滞在中に、「カフェのメニュー撮影をサキコにぜひお願いしたい」と連絡がありました。
ささやかですが、ちゃんと予算も用意してくれて“仕事”として撮影を依頼してくれたのが嬉しかったです。 ミラノを発つ最終日にカフェメニュー8カットとお店の雰囲気が伝わるようなカットを撮影しました。
地元の人に大切にされている“書店”であることが伝わるようなカット、そしてカフェメニューは、トスカのお母さんが手作りしているもの。体にもやさしい料理やスイーツなので、そういった家庭的な味がイメージできるような撮影を心がけました。
スタイリングも、ディレクションも現場で撮影しながら進めたので、大変だったけどすごく充実感があったし、トスカをはじめ、皆喜んでくれたので本当に良かった。ミラノでの新しい出会いに感謝の気持ちでいっぱいです。

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 Photo:Sakiko Ohno
ミラノを舞台に、写真展、そして作品撮影のコラボレーションと、フォトグラファーとしてたくさんの経験をした大野さん。印象的だったのは、ミラノのクリエイターや料理人の方、出会った人たちの“眼力”。相手の目をしっかり見つめて力強く自身の活動や作品を伝えるパワーは、同じクリエイターとしてとても刺激になったそう。
ミラノで新たに繋がった縁や、フォトグラファー同志の新たな展示にむけての約束を、今度はどんな形で表現していくのか、とても楽しみです。

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『ミラノで写真展ひらいてみた』travel report vol1はこちら

大野咲子インタビュー記事はこちら

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