「質感から、静かで力強い生命力を引き出す」フォトグラファーインタビューvol.2 浦野航気

Hueにこの4月、浦野航気、許カミン、近藤恵佑、ジョ ヘミの4名のフォトグラファーが新たに誕生しました。

それぞれ個性が光る4名が、作品のテーマやこれからの夢について語ります。

第2回目は、浦野航気さんです。

浦野さんの作品から感じられるのは、生命力です。静かで力強く内に秘めた力。その力を見出し、表現する浦野さん、その観察眼はどこで培われたものなのでしょうか。
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――静かです。でも、ものすごく力強い。これが初めて浦野さんの作品を見た時の感想です。

僕が作品で意識していることは、「質感、たたずまい、ものの内面的な美しさ」です。
それをアウトプットしていくために、「静かで、力強い生命力」を切り取って作品で表現してきました。

野菜を手に取ってじっくり観察していると、その表面の質感だけで語れるものがあるなと感じます。
それを泡、繭、半透明の紙など、その質感から連想されるものとあわせて撮影することで世界観を作りたいと思っています。

――生命力をテーマにしている作品にはみなぎるようなパワーを表現しているものも多いですが、浦野さんの作品はその対極。
このように撮影するようになった経緯が気になります。

僕は神奈川県横須賀市生まれで、明治大学農学部を卒業しました。
具体的には、食料生産、微生物の培養、遺伝子組み換え、農薬開発、品種改良やバイオテクノロジーの分野についての研究です。
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photo:Keisuke Kondo

――これはまた意外な分野です!

ただ、大学に入る前に持っていた漠然としたイメージとは少し異なっていたこともあり、入学早々悩みました。
2年生の時でしょうか、たまたま見た写真展に心奪われたんです。
風景など様々な作品が展示されていたのですが、純粋にきれいだなと思いました。
そこで自分でも撮ってみたいと気持ちがじわじわ起こってきて、父親からフィルムカメラを借りて撮影を始めました。

――ふとしたきっかけから写真の世界へ入ったんですね。

3年生の冬にフォトコンペに出展し、受賞しました。
それが後押しとなって、写真の道を進むことにしました。
4年生の4月からは後藤繁雄氏がディレクターを務めるG/P galleryでインターンとして働き、そこで鈴木親氏のアシスタントなどを経験させてもらいました。

――その頃はどんな写真を撮っていたのでしょう?

スナップが中心ですね。
その時まではスナップにしか親和性がなかったのですが、プロの現場を経験させてもらうことで、写真で稼ぐ道は広告なんだと思いました。

人の気持ちの橋渡しとなるシズル感

――初めて食の写真を撮ってみてどうでしたか?

驚きの連続でした!ラーメンは熱々では撮影しないとか。
僕は元々食べることが好きだったのですが、食べ物を物として撮影する現場でショックも受けました。

――食の写真を消費者として見る側からは想像もしない世界ですよね。
シズル感についてはどのように考えましたか?

人の気持ちの橋渡しとなる存在だと思います。
例えば、料理を作った人の気持ちがシズル感というものを作っているのかなと。

――作った人によって作られるシズル感というのはおもしろい観点ですね。

これは料理に限らず、野菜一つとっても同じです。
撮影ではきれいに形の整ったものが揃いますが、全く同じものはありません。
その形を得るために、様々な研究や試行錯誤の結果、選りすぐるわけです。
この見方には大学時代の品種改良や農場実習での研究の経験が活かされているのかもしれません。
改良過程の野菜はまた全然キャラクターが違うんですよ。

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――全く関係のない分野だと思われた学問がつながりました!
人生ってどこが欠けても今はないんですね。

僕が経験してきたことで作品に大きく影響を与えているもう一つのものは、海です。
僕は海の近くで育ったこともあり、海を眺めていると行き詰った考えが整理されたり、すごく落ち着くんです。
昔からずっと見てきた、荒れた海や凪いでいる海、水平線や水面の広がりから着想を得て、それに似た質感やトーンを求めて撮影することもあります。

フォトグラファー×クラフトマンシップ

――作品の生命力の源は海にもあるんですね。
フォトグラファーとしては異例の経歴を歩まれてきた浦野さんは、どんなミッションを持っているのですか?

「地方創生」です。
僕はそこに自分のやりたいこともあわせて、「想いが詰まったもののために」ということをテーマに、ものづくりをしている人やものを世に広めたいです。
良い研究や技術によってどんなに良いものを作っても、世に知られずに廃れていくものがたくさんあります。
僕はそういうクラフトマンシップを、企画段階から積極的に参加して、ビジュアルまで落とし込めるフォトグラファーになりたいです。
また、写真という領域に縛られずに、その時に最適なアウトプットの方法も考えながら仕事をしていきたいです。
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――こういう志を持ってフォトグラファー人生をスタートされた浦野さんの今後がますます楽しみです!

ただし、今はフォトグラファーとしてのポジションを確立することが一番だと考えています。
ものづくりの現場で職人さんから「お前は何者だ?」って聞かれた時に、まずは「自分はフォトグラファーです」ということがはっきりと言えないと信頼してもらえませんから……。
今やっとスタートラインに立てたところです。

作品と同じように、穏やかな中にも強い信念を秘めた浦野さんの活躍をご期待ください。 

※フォトグラファーインタビューvol.1 ジョ ヘミはこちら
※フォトグラファーインタビューvol.3 許カミンはこちら
※フォトグラファーインタビューvol.4 近藤恵佑はこちら

著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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