気になるシズルワードは何?「美味しい」を言葉とビジュアルで徹底分析

ある時、ふと書店で見つけたのが、この一冊の本――『SIZZLE WORD シズルワードの現在』(編著:B・M・FT)。美味しいを感じる言葉=シズルワードについて徹底的に調査してあって、さまざまな言葉の動向が、グラフなどできちんと見やすく整理されています。

もちろん、このブログのタイトルにもなっている通りシズルは、hueにとっても永遠のテーマと言ってよいくらい重要なものです。私たちがビジュアルで追求しているシズルを、言葉の側面から研究している方たちがいらっしゃる!
早速、ラブコールを送り、B・M・FTの大橋正房さんhueの大手仁志の対談が実現しました。
10年以上にわたりシズルワードを調査されてきた大橋さんと、30年近く “そそる”ビジュアルを撮影してきた大手による、マニアックなシズルトーク。まず第1回目は、気になるシズルワードを題材にして展開します。

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シズルワードその1【キンキン】
:ビールジョッキとの不思議な関係

大橋 「キンキン」というワードは、よくビールを飲むときに使いますよね。でも、おそらくかき氷などを食べるときに冷たくて頭にキ〜ンとくるのが、元になっているのではないかと思います。冷えていることを表すわけではなかった言葉が、いつの間にか変化して冷たいものを「キンキン」と言うようになったわけです。それも美味しさにつながる表現として。

大手 なるほど。ビジュアル撮影では、冷たいものを冷たく見せたいときには、その温度の加減によっていろいろな表現があります。その中でも「キンキン」は、いちばん冷たい、「冷たい」の最上級表現が求められると思います。ガチガチに凍っている氷とか、氷が砕けて飛び散っているようなイメージとか。

大橋 そうですね。以前は冷たいものを「冷え冷え」とか言っていたのが「キンキン」を使うようになって、まだ10年くらいしか経っていないと思います。それって実は、居酒屋さんなどでビールジョッキを冷蔵庫に入れ冷やしてから使うようになった時期と一致するんです。それがビールのポスターなどのビジュアルと結びついて広まったのではないかと。

大手 面白いですね。「キンキン」は美味しさというよりは、ちょっと攻撃的な感じがします。なんとなく「激辛」に近いイメージ。刺激を求めている感覚がありますね。

シズルワードその2【とろける】
:男性のトンコツから、女性のスイーツへ

大橋 美味しい言葉の調査というのを毎年行っていまして、このところその上位にランクインしている言葉の中に「とろける」があります。私たちは食感系のシズルワードとして分類しているんですが、口溶けや舌触りに美味しさを感じているわけですね。

 大手 「とろける」をビジュアルにするとなると、例えばこの杏仁豆腐の写真です。ここでこだわっているのは、ちょっとだけ垂れたソースのライン、スプーンからはみ出ている部分、それにスプーンから盛り上がって見える表面張力ですね。そのあたりが「とろける」につながっていると思います。

 大橋 たしかに「とろける」感がありますね。その「とろける」に近い言葉で「濃厚な」というのも、年々順位を上げてきています。これは食感系ではなくて味覚系と分類しているのですが、ひと昔前だと「濃厚な」というとトンコツラーメンとか、どちらかというと男性的な言葉だったと思います。それが女性も「濃厚な」に美味しさを感じるようになってきた。スイーツ、特に生チョコとかチーズケーキとか。濃厚でとろけるようなものに美味しさを感じるんです。

大手 以前は「クリーミー」くらいだったのが、今は「濃厚な」。
なんだか濃さが増しているようですね。
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シズルワードその3【シャキシャキ】
:言葉と見た目が結びつくと強い!

大橋 これはコンビニのサンドイッチのネーミングに使われているシズルワードです。新鮮そうなレタスがたっぷり入っているのをパッケージを通して見ることができて、文字通りシャキシャキなわけです。ほかにも「熟成〜」とか「こだわり〜」とかあるんですが、それは食べてみないとわからない。「シャキシャキ」は、言葉と商品の見た目が見事に結びついた傑作ですね。

大手 ぼくも結構、コレ買っちゃいます。野菜食べなきゃと思って、これなら“野菜摂った”感がありますよね。サンドイッチの切り口のボリュームも、視覚的にインパクトがあるし、たしかに歯ごたえもシャキッとしています。「野菜たっぷり」よりも「シャキシャキ」に惹かれる。ぼくは、言葉の感じと見た感じが結びついているところにやられてたんだ(笑)。

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シズルワードその4【揚げたて】
:揚げたては、実は揚げたてではない?

大橋 料理のプロセスに関わる言葉でもあるのですが、ほかにも「焼きたて」「炊きたて」「出来たて」、コーヒーでは「挽きたて」とか、いろいろあります。シズルワードとしては常に上位にランクインしています。このあたりは、ビジュアルではどのように表現するのでしょうか?

大手 実際の揚げたてのものというのは、よく見ると表面がパチパチしていたりするのですが撮るのは難しいです。それなので「揚げたて」を伝えようと思うと、もう一歩手前の揚げ中のシーンになります。もうすぐ出来上がる直前の、油をはねていたりするところを撮るわけです。

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例えば、まさに油の中に入れて撮ったみたいに見えるこの写真。これは実際に耐熱ガラスの水槽にリアルに油を入れ150度くらいまで上げて、そこに揚げ終わった天ぷらを入れて撮っています。揚げている途中のものだと、気泡が出すぎてしまい肝心のものが見えなくなってしまうので、完全に揚がった状態のものに少し霧吹きで水分を付け、油に入れるとちょうどよい気泡が出るようにしています。実は、さらに箸の下に水の通る細いパイプが仕込んであって、ブクブクがほしいときに注射器みたいなもので水を送るようになっています。たいへんな撮影なんですが、相当マニアックですよね(笑)

 

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プロフィール 
大橋正房
株式会社 BMFT 代表取締役 
さまざまな消費者商品の商品開発やマーケティング戦略立案のためのマーケティング・リサーチに携わる。著書に「おいしい」感覚と言葉-食感の世代-2010.03]BMFT出版(共著) 『メディア世代のカルチャー・シーン』1993]誠文堂新光社(共著) 『同時代子ども研究 第1巻 食べる・飲む』1988]新曜社(共著)『ライフスタイルを創った100の商品全力疾走』1983]東洋経済新報社(共著) 『広告化社会』1982.08]毎日新聞社など。好きな食べ物は麻辣刀削麺パクチー増量。

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大手仁志
フォトグラファー、シズルディレクター、「食」の撮影を専門とするスタジオhue代表取締役。1965年栃木県生まれ、1985年株式会社アーバンパブリシテ(現・株式会社アマナ)に入社。その後30年間に渡り「食」に関する広告写真の撮影に携わる。食材や料理がもつ生命力を切り取り表現することが食のフォトグラファーの使命と考え、数多くの広告賞を受賞。最も好きな食べ物は餃子。


INFO:シズルワード大橋さんと、シズルビジュアル大手さんによる“シズル談義”。
さらにマニアックな展開になる二人の対談・第二弾は、シズルブログにて連載予定です。どうぞお楽しみに!!

 

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著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。

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