シズルワードדそそる”ビジュアルから「美味しさ」の今が見えてくる!

10年以上にわたりシズルワードを調査されてきた大橋さんと、30年近く “そそる”ビジュアルを撮影してきた大手によるシズルトーク。その第2回目は、長年「美味しい」を追求してきたふたりならではのマニアックなシズル談義が繰り広げられました――。
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シズルワードと食べ物は、結構ガッツリ結びつく

大橋 第1回目で美味しい言葉の調査を行っているとお話しましたが、「おいしい」を感じる言葉の順位で2012年、2015年ともに1位だったのは「もちもち」なんです。

大手 なるほど、食感系ですね。似たような言葉で「もっちり」というのも4〜5位にランクインしていますね。

大橋 はい。ちなみに「もちもち」は2003年ではまだ14位で、その2003年と2006年の1位は味覚系の「コクがある」。興味深い順位の変化だと思います。
「コクがある」って、おそらく今ではビールとコーヒーくらいにしか使われなくなっているような気がするんですよね。たしかに、コクって何?ていう感じさえあります。

大手 言葉の領域が限られているわけですね。

大橋 シズルワードと特定の食べ物が結びついているのって、結構ほかにもあるんです。
「ホクホク」=焼きいも、「コシのある」=うどん、みたいに。
ある商品が打ち出したものが一般化する場合もあって、例えば「なめらか」=プリンとかですね。
最近の面白いところでは「ふわとろ」=オムライス。
登場してまだ2、3年だと思いますが、「ふわふわ」で「とろとろ」のオムライスが人気を集めるようになって、みんなが「ふわとろ」に向かっている。
なんだか「ふわとろ」競争になってきているんですね(笑)。ある意味、言葉が先行してその食べ物が注目されるようなことが起きているわけです。

時代とともにビジュアルも、その美味しさが変わる

大橋 シズルワードの人気にも変遷があるように、ビジュアルにもその時々の流行がありますか?

大手 ありますね。昔は、水平水準を正確に決めて正面からきちんと撮るのが料理写真だったわけです。和食でも洋食でも。それが10年くらい前からでしょうか、いろいろな方のレシピ本が出て、生活の中の一部を切り取った感じで撮るのが流行します。
少しカメラの位置が曲がっていたり、お皿がずれていたりしてもOK。ピントも浅くてイメージっぽい料理写真です。でも、それもここ最近はあまり見かけなくなってきて、またちがう撮り方になってきている気がします。

大橋 ひとつのイメージが定着してくると、また視点を変えてみる。その時々の美味しさやリアルな感じを追い求めているのかもしれませんね。

大手 ぼくも昔、きっちりピシッと整えて撮っていた頃がありました。当時の写真を今見てみると、なんだか東京の河童橋界隈で売っている食品サンプルの写真のように見えるから不思議ですね。自分の感覚も時代とともに変わってきているのだと思います。
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食は今、二極化の真っ最中

大橋 「贅沢な」というのも、今は普通にシズルワードとして使われています。私たちはこれを情報系の言葉として分類していますが、おそらくちょっと素材を多めに使っているとか、どちらかというとあくまで身近な贅沢だと思うんです。

大手 「贅沢な」に近い言葉で「プレミアム」というのはどうなんですか?

大橋 あるにはあるのですが、あまり上位には上がってきません。もう「プレミアム」にプレミアム感がないというか、普通になってしまっているんでしょうね。

大手 今は高級スイーツとか“自分ご褒美”的なものがたくさんあって、一方で、安く済ませようと思ったら極端にリーズナブルなものがいろいろある。二極化していて、その振り幅が大きくなってきているような気がします。ビジュアルも、両極端に持っていくというのが傾向としてあるかもしれません。その中間的なものが受け入れられない。どんなところでも通用しそうなどちらでもない無難なものを作ると、意外とうまくいかないケースが多いんです。

今ブームの「熟成」は手ごわい!

大橋 鮮度でいうと「朝採り」とか新鮮なほうはわかるのですが、その逆のブームになっている熟成肉とかの「熟成」。こちらの美味しさを感じさせるビジュアルってどうなんですか?

大手 たしかに「熟成」は、表現するのがかなり難しいかもしれませんね。例えば、完熟した果実。色が少し濃くなったくらいの完熟なら大丈夫なんですが、食べたら美味しいんだけれど相当熟しているものだとビジュアル的には厳しい。熟し切った美味しさのポジティブさと腐りかけたように見えるネガティブさが、究極的に紙一重の世界なんですね。

肉の場合も、すごく新鮮なものと今流行っているちゃんとエイジングされているものを、パッと見てどっちが美味しいかというと、普通は新鮮なほうを選ぶと思います。でも、日頃から食べ歩きして目の肥えた人だったら、もしかするとエイジングのほうかもしれない。見る人の経験値が出るんですね。
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「味覚系」とは、うまみや辛みなど、味覚で感じる言葉。

香ばしいなどの嗅覚で感じる言葉も加えた。
「食感系」とは、柔らかさや弾力などの触感や、噛むときに感じる音の言葉。
「情報系」とは、食材の産地や調理法などの知恵や知識で食べたいと感じる言葉。

性別や年齢で、反応する言葉はちがう

大橋 性別や年齢別でも調査を行っているのですが、例えば10代の女性を見ると、味覚系では「甘い」「ほんのり甘い」「スイート」「クリーミー」「やさしい」、食感系では「ぷるるん」「プルプル」「ふんわり」「サクふわ」「ザクザク」などが上位を占めています。
若い方は、味覚ではやはり甘さなんですね。で、20代になると「とろり」「とろとろ」、30代が「もっちり」「もちもち」など。
さらに、40代が「ふわとろ」「とろっと」、50代が「なめらか」「ほっくり」「ほっこり」「つるつる」など。そして60代になると「しっとり」「口当たりがよい」とか、情報系だと「季節限定」「もぎたて」といった言葉に反応しているのがわかります。
特に食感系は、年齢によってかなりちがってくる。

大手 男性の場合はどうなんですか?

大橋 例えば男性客の多い居酒屋のメニューって、オノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語の総称)が意外に少ないですよね。それなのに結構、言葉をたくさん使って表現しています。

大手 たしかにそうですね。「○○産」とか、書いてあるレシピの作り方とかに反応してオーダーしちゃったりすることが多いです。

大橋 言葉は、食べることによる気分みたいなものも表しています。「ふわふわ」も食べてふわっとした気分になるとか。そうした食感と気分みたいなのが結びつく感覚は、どうやら男性より女性のほうが強いのかもしれません。

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言葉とビジュアルの役割は?

大手 ぼくの写真は、どちらかというと直球勝負の写真なんです。あまり余計なものを入れずにど〜んと美味しそうなところだけを撮る。なので、どちらかというと男性に伝わりやすいのかなと自分でも思っているんです。女性に伝わりやすい表現にするには、その時の空気感とか、食べたいときの気持ちとか、そういうほうが伝わりやすいのかなと。

大橋 例えば「シャキシャキ」という言葉によって、頭の中で漠然とシャキシャキする感覚が蘇っている。オノマトペって擬音語でもあるから、聞こえなくても頭の中でその音が響いているのかもしれません。つまり言葉で実感している。ビジュアルを見る視覚は、食べる前にどういう美味しさかを伝えるんですが、言葉は、言葉の持っているイメージと実際の経験が一致して食べたときの実感を呼び覚ましている気がします。

ビジュアルはどちらかというと、やはり誘うんですよね。見て自分なりの言葉や絵にしながら感じているわけです。だから、言葉とビジュアルは、おそらくちょっとだけ役割がちがうんでしょうね。

シズルワード対談、前回の記事はこちら


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プロフィール 大橋正房
株式会社 BMFT 代表取締役 
さまざまな消費者商品の商品開発やマーケティング戦略立案のためのマーケティング・リサーチに携わる。著書に『「おいしい」感覚と言葉-食感の世代-』2010.03]BMFT出版(共著) 『メディア世代のカルチャー・シーン』1993]誠文堂新光社(共著) 『同時代子ども研究 第1巻 食べる・飲む』1988]新曜社(共著)『ライフスタイルを創った100の商品全力疾走』1983]東洋経済新報社(共著) 『広告化社会』1982.08]毎日新聞社など。好きな食べ物は麻辣刀削麺パクチー増量。

プロフィール 大手仁志
フォトグラファー、シズルディレクター、「食」の撮影を専門とするスタジオhue代表取締役。1965年栃木県生まれ、1985年株式会社アーバンパブリシテ(現・株式会社アマナ)に入社。その後30年間に渡り「食」に関する広告写真の撮影に携わる。食材や料理がもつ生命力を切り取り表現することが食のフォトグラファーの使命と考え、数多くの広告賞を受賞。最も好きな食べ物は餃子。

INFOシズルワード大橋さんと、シズルビジュアル大手さんによる“シズル談義”。さらにマニアックな展開になる二人の対談・第三弾は、シズルブログにて連載予定です。どうぞお楽しみに!!

著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。

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