【シズル対談】料理写真と食品サンプル、どこまでも奥深い“シズル表現”vol/2

30年間にわたり、料理撮影を続けてきたシズルフォトグラファー大手仁志。実は以前から会ってお話をきいてみたいと思ってきた人物がいます。それはテレビなどにもたくさん登場されている食品サンプルの達人・竹内繁春さん。食品サンプルと料理写真、違ったフィールドではありますが、竹内さんが作り上げた数々の作品に、なにか撮影にも通じるシズルへのこだわりを感じてきました。

前回の記事では、あの“箸あげ”食品サンプルが誕生したお話をうかがいました。
【シズル対談】料理写真と食品サンプル、どこまでも奥深い“シズル表現”vol/1

第二弾となる今回の対談では食品サンプルと第一人者といわれる竹内さんが、
サンプルを作り始めるきっかけからお聞きしました。

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サンプルをはじめた意外なきっかけ


大手
サンプルをはじめたきっかけは何だったんですか?

竹内
もともとは集団就職で、ふるさとの鹿児島から出てきて、鉄工所へ就職したんだ。
鉄工所でけっこう学んだ、俺。
なんでかって言うと、鉄鋼の技術を見よう見まねで
いろんな機械を使って学んだわけ。ペンキ塗りやら溶接やら。
イチから全部自分でやらなあかん。
でも手首を痛めて辞めてしまったんよ。

それで、田舎に帰ってぼーっとしてたら、姉ちゃんに「働け!」って言われて。
ちょうど、ぱっと見た新聞の裏がサンプル屋さんだった。
最初はそこからスタートして、福岡や大阪で働いていたんだ。
そしたら、そこの会社で新人賞2つとって、そこで初めて
「ああなんだ、サンプルってこんな簡単なものだったんだ」
って思ってしまったの。要するにサンプル作るのに飽きてしまったんだわ。

大手
え?飽きちゃったんですか??

竹内
飽きるよ!
だってその会社は1から10まで作らせてくれるわけじゃない。
型をとる部門とか、洋食部門とか、中華部門とか、全部分かれとるんじゃもん。
でも、その会社におる時に食べ物の名前をけっこう覚えたってのも事実だわな。


大手
食べ物の名前ですか?

竹内
田舎から出てきて、粗末なものしか食べたことなかったから。
洋食部門なんかは食べたことない料理がいっぱいあるよ。
「とんかつ」なんて高級品じゃ。
食べたことないからバンバン興味がわいてくるんだな。

大手
実際、当時は言われたものを見て、コピーして作る、という仕事だったんですか?


竹内
そう、まったくその通り。要するにレタスを最初から作るわけじゃなくて、
レタスやピーマンやトマトがスーパーの陳列棚みたいに届くの。
それを組み合わせて作る。
そんな事やってたら、おもしろくなくなって。
いずれは自分で作りたいわけじゃ。
そしたら先輩が、名古屋に工場があって困っているから
お前が行って技術を教えてやれ!
って言われて名古屋に来たのが最後。

蝋からシリコンへ。時代ともに進化する素材

竹内
それで名古屋で働いて27歳くらいで、今の会社を作った。
社名は『サンプル屋さん あいでぃあ』
当時は「おい!サンプル屋!」って呼ばれていたけど、
それが悔しくて「さん付けにしろ!」って言って「サンプル屋さん」にしたの。
そしたら「床屋さん」とか「クリーニング屋さん」だの、
当時「さん付け」が流行った。

大手
「さん付け」の元祖なのかも知れないですね。

竹内
当時のサンプル屋さんが、なんでうまくいったか知ってます?
昔のサンプルって、リース業みたいなものだった。頭いいと思わん?
リース業なんて概念がない時代から、リースをやっとったんよ。

大手
どうしてリースだったんですか?

竹内
当時は、蝋でサンプルを作っていた。蝋は貴重品だったから納品して、
状態が悪くなったら引き下げて、溶かしてまた新たにつくって納品したの。
リサイクルするわけじゃな。
売りっぱなしにすると、手元に蝋が帰ってこんから。
石油危機の時代までは、蝋で作って。
塩化ビニールに切り替わるまでは皆で猛勉強したわな。
樹脂細工や、寒天で型をつくった時期もあった。今の技術はすごい進んだよ。

大手
写真の世界も、フィルムからデジタルに移行した時代がありました。

竹内
そうだろうなあ。技術が進んで、昔は表現できんかったこともできる。
サンプルは今、型がシリコンだから、どんなやつでも作れるんだ。
ちなみにパフェにのってる、このホイップ。
コーキング用のシリコンを使っとるんだけど、最初に考えたのは俺だよ。

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大手
そういう“これ使えるな”ってのは日々、探してるんですか?

竹内
探してる!
例えばガラスとガラスの間をくっつける素材、
ガラス屋さんが使ってんのを見つけて、それから熱中して試したわな。
色をいれたらどうなるんだろうとか。

大手
僕らも撮影する時に、必要なものを自分たちで作ることがあります。
例えば鍋の撮影するときに本当に火を入れてグツグツさせたら
食材がしなびてしまって、いい写真が撮れない。
なので、いろんな道具を考えて時間がたっても食材がしなびない、
でも鍋の淵は熱でグツグツさせられる、そんな道具を作ったりしました。

竹内
あ、わかった。金魚蜂のやつ?

大手
そうです、そうです!

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サンプル屋さんの氷が浮く秘密。

竹内
僕も結構カメラマンに協力することあるんですよ。
例えばこれ。海老フライの海老のしっぽとか。
メニュー表撮影する時にしっぽだけ真っ赤でキレイなものが
必要なので作ったりしています。
あとは、卵の黄味だけサンプルとかね。


大手
そうか、煮込んだら卵の黄味も白っぽくなっちゃうから黄味だけ使うんですね。

竹内
あとは氷とか、ソフトクリームとか。
そういえば、氷のサンプルが沈まない方法知ってる?

大手
氷が沈まない方法ですか? 
撮影でもダミーの氷を使う時は沈むから氷を積み重ねて使っています。

竹内
教えてあげようか?
あのね、グリセリン使うの。
時代が、かち割り氷から、四角い氷に変わった時に、
プラスチックを使って氷を作っとったんだが、
それをたまたまグリセリンが入ったところへポンっと置いたら
「げ!浮いとる!」ってびっくりして。
あの時は大発見だわな。
サンプル屋さんのジュースは氷が浮いとる!って話題になったもんだ。

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大手
そういう発見って、見ていて急に思いつくもんなんですか?

竹内
そう。炭酸水でも、なんでもよく見て、じっくり観察することだな。

大手
僕もさっきの鍋のグツグツマシーンを作った時は、ずっと鍋を食べずに観察して、どこからどんな泡が出てくるんだろう、とか灰汁が出る時は泡が細かくなる、
とかいろいろ観察しました。

竹内
日常のいろんなものを観察しているとアイディアがわいてくるんだよ。
僕は紙おむつを使ってドレッシングを作ったこともあるよ。

大手
紙おむつですか??

竹内
紙おむつを割いて、中には水分固める凝固剤みたいなのがあるんだけど、
それを使ってドレッシングを作ったんだ。
お客さんからドレッシングのゴマととうがらしの粒粒のところを
見せたいから止めてくれって言われて。

そんなの難しいじゃん!
だから、考えて考えて、それで紙おむつを思いついたの。
中身のくずを使ったらバシっと止まった。

大手
そこで紙おむつを思いつくのがすごいですよね。
僕もホームセンターが好きでいろんな材料や道具を見てはいますが。


竹内
そうそう!ホームセンターね。よく行くよ。

パフェ作りに初挑戦!

竹内
ちょっと、時間あるなら作ってみてよ。
子供に教えるように「パフェ作り」の体験セットがあるんだよ。

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大手
ぜひ挑戦してみたです!

竹内
まずは、パフェの色を選んで、配置を決めて、
作り始めると誰でも夢中になるんだわ。(笑)

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▲真剣にパフェ作りに挑む大手。撮影とおなじような緊張感です。



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▲竹内さんの教室では作ったサンプルに認定証をつけてくれます。お子様から観光で訪れた人まで大人気だそう。

2人のシズル対談はまだまだ続きます!
第三弾では、2人がこだわるシズル表現について。
そして特別に竹内さんの工房も見せてもらいました!
どうぞお楽しみに!

プロフィール 竹内繁春
日本のサンプル職人。食品模型のアイディア(さんぷる屋さん)代表。
独自の観察力と豊富なアイディアを活かし、数多くの食品サンプルを手掛ける。
その技術や表現力はテレビでも多数取り上げられ、テレビチャンピオン二連覇を達成。また平成16年にはサンプル業界では初となる『第27回国美藝術展 特別賞』を受賞。

プロフィール 大手仁志
フォトグラファー、シズルディレクター、「食」の撮影を専門とするスタジオhue代表取締役。1965年栃木県生まれ、1985年株式会社アーバンパブリシティ(現・株式会社アマナ)に入社。その後30年間に渡り「食」に関する広告写真の撮影に携わる。食材や料理がもつ生命力を切り取り表現することが食のフォトグラファーの使命と考え、数多くの広告賞を受賞。最も好きな食べ物は餃子。

著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。

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