【シズル対談】料理写真と食品サンプル、どこまでも奥深い“シズル表現”vol/3

30年間にわたり、料理撮影を続けてきたシズルフォトグラファー大手仁志
実は以前から会ってお話をきいてみたいと思ってきた人物がいます。
それはテレビなどにもたくさん登場されている食品サンプルの達人・竹内繁春さん。

シズル対談・第三弾では、
それぞれがこだわるシズル表現について語っていただきました!

今までの対談はこちら
【シズル対談】料理写真と食品サンプル、どこまでも奥深い“シズル表現”vol/1
【シズル対談】料理写真と食品サンプル、どこまでも奥深い“シズル表現”vol/2



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シズル表現へのこだわり

大手
僕も一時期、実はサンプルを作るのに挑戦したことがあったんですね。
撮るのが本職なんですけど、作るのもたのしくて。

竹内
カメラマンってビールの泡作ったりするの、よくやってるもんなあ。
塩入れてみたり、いろんなチャレンジしてるよね。

大手
僕の場合は注射器を使ってビールの泡を作ります。
竹内さんのサンプルの世界と撮影の世界、
それぞれ、大切にしているシズル表現は似ていますね。
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竹内
(ビールの写真をみて)これは“現代的”な泡の表現だわな。

大手
昔と今ではシズル感が違うんですね。

竹内
そうそう、違う。
僕は昔の人間だから、いま流行ってるものなんか聞くと「ほほーって」思う。
だって、昔は喫茶のメニュー作るとき、パフェのお皿、サンデーのお皿、って
カタチがきまっとった。
けど、今はどんな器にいれてもお店の人が“なんとかパフェ”って
名前つけたらパフェなんだもん。

大手
確かに、氷の器といえば、ガラスって決まっていましたね。
今は自由な発想でいろんなメニューがある。

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大手
この海老フライの写真。これは耐熱グラスの水槽をつくって
じっさいの油を電熱器で温めて、菜箸の裏に管を通していて、
わずかに水が通るようになっています。
そしたら油の中でプチプチと気泡がでる。
ちなみに海老フライは一度揚げたものを使っています。
そうでないと、ブワーって気泡がでて写真に写らないから。

竹内
わー!すごい!感激! これはすごいね!

大手
こういうシーンって想像じゃないですか。
実際の目で見る現実のものとは違う。
でもお客さんはこういう写真をみたら“ああ、揚げたてなんだな”ってイメージするんですよね。

竹内
すごいね、エビフライの写真。
ウチではエビフライが空を飛んでるところを作ったことはあるよ。

大手
人間が感じる“おいしい瞬間”ってどこだろうなあ、って日常的に考えますよね。

竹内
そうだねえ!
僕がアイディアって社名にしたんは“ちょっと普通のものじゃないもの作るよ”って意味なの。後ろから読んでも前から読んでもアイディア。

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大手
わ、気付かなかった。からくりがいっぱいありますね。

竹内
だから、普通ですることだと飽きちゃって。

大手
僕もそうです。エビフライの美味しそうな写真を撮っても見慣れてくるとじっくり見てくれない。だから苦労してでもこういう写真を撮ろうと思うんですよね。


竹内
そうだよ!大変な思いで撮ったり作ったりするんだから、
もっともっと見てくれって思うよなあ。

キャリア30年以上、一番難しかったシズル表現とは


大手
竹内さんが一番難しかったシズルはなんですか??

竹内
なんだと思う?

大手
うーん、液体系かな?

竹内
そう!水!

大手
あ~、なるほど!

竹内
いまだに水は難しい。色ついた液体はいいんだけど。
いまだにどこも悩んどるよ。
サンプル屋さんは水が苦手だから、氷もむつかしい。

大手
確かに、水道からぶわーっと出てコップにジャっと入って溢れているような瞬間とか難しそう。

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 ▲工房で見せてもらった、カップの中に入る氷のサンプル。

竹内
写真にもその難しさは通じるものがあるよね。

大手
そうです。シンプルなものほど難しい。撮影も白いご飯が一番難しい。
僕もいまだに難しく感じます。

竹内
そういえば、こないだご飯の仕事したなあ。
白いご飯と酢飯と2つ頼まれて、それぞれ見れば違いがわかるようにしてくれって。

大手
それは難しい。どんなところを意識してつくったんですか?

竹内
要するに色! 
でもすごい微妙な。白いご飯の“白”を強調したな。黄色にするとちょっと違う。

大手
僕も白いご飯を撮影する時に、青いインクをちょっと入れたりしていました。
かなり昔の話ですけど。

竹内
白はむつかしいね。白いまんじゅうとか、お餅の部分も、ちょっとだけ黒を入れたりすると白が引き締まるんだよ。なんで黒入れるの?ってよく聞かれるけど。

大手
そういった色の気づきがすごい!

竹内
例えば鰻のかば焼きなんかは、焼いたところは黒じゃん。
でもちょっとだけ青をいれると際立つんだよ。

大手
その色彩の感覚すごい。絵の勉強なんてしてたんですか?

竹内
してない、してない!(笑)。
カンだよ!絵具をまぜて、まぜて気づくの。

大手
その一回、作ったものの色の調合記録とかあるんですか?

竹内
ないよ、俺の頭の中だけ。
だから、今は子供たちに教えているんだ。
これは日本の文化だと思うから。最近は外国の人もたくさんくるよ。

サンプルって面白いんだよ。ウチは米も麺も、全部自分で作れる。
麺が作れると、そこから米も自分で作れるんだ。それがサンプル屋さんの基本。
麺を斜めにカットして、一粒一粒米を作っていく。
麦ごはんなんかは白と黒の2色を合わせておいて斜めの角度を変えることによって、日本米と、外国米を変えたりしているんだ。

大手
やはり観察力がすごいですね。

竹内
1から10まで自分で作れるサンプル屋さんって少ないんだ。ウチは珍しい方だよ。

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今後やってみたいこと

大手
これから外国の人も注目しているし、今後やってみたいことありますか?

竹内
サンプルって“学校”がないジャンルだから、この場所を学校にしていきたい。
子供たちの体験学習なんかで来てくれる時に、組み立てるだけだと面白くないから、ここでゼロから作れるように体験させてる。
サンプル作る時に、ものをしっかり観察するから、子供にはものを見る勉強にもなるよね。

あとは今は本物の野菜を畑で育ててるんだけど、そっちの方が難しい!

大手
竹内さんだったら、味より見た目の方を重視して育ててそうですね。

竹内
そうそう。
一生懸命、畑で育てるけど、やっぱりカタチや見た目を気にしちゃうね。

竹内
サンプル屋さんって僕の使う色と、他の人が作る色が全然違うんだよ。
使われている色を見ると、だいたい誰が作ったがわかる。
例えばバナナの切り口で、実の中に描くものみればどこのメーカーかわかる。

大手
色に関しては写真の世界も、個性というか強調することがあります。
例えばブルーベリーの実物は黒にちかい色なんだけど、
写真では青みがかなりかかった紫色にしないと、
見た人がブルーベリーってわからない。

シズル表現には欠かせない、
まずは自分自身が味を体験すること

大手
例えば、どこかのレストランからサンプル
依頼されたら、その料理はやっぱり観察するんですか?

竹内
見るよ!お店から送ってもらったり、写真を撮ってスケッチしたり、
とにかく細かく見る。お客さんにもどんな風に見せたいかってポイントを聞く。
だから料理詳しくないと、無理だわな。
いろいろ食べて、たくさん食べるから太る。

大手
それは僕も一緒です(笑)。
僕も、台湾の仕事で撮影をお願いされた料理が
まったく食べたことないものだったんです。
その料理が暑い時に食べるものなのか、寒い季節に食べたいものなのか、甘いのか辛いのかさっぱり想像もつかない。
なので台湾まで行って、実際にその料理を現地で食べてきました。
そうしないと、撮影ってできないんです。現地の人がどんな時に、どんな風に食べて楽しむものなのか、自分で体験しておかないと。

竹内
僕も見本が届くと、どんな味がするのかまず食べる。
辛いものは、辛いように作らないといけないからね。

はい、これサーモン!
でも確かに、どんだけキレイに作れてもネコも食べんからなあ(笑)。

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大手
香りがするサンプルがあっても面白いですね。

竹内
チョコレートだったらできるな。
作るときに本物のチョコレート混ぜれば香りがするから。

特別に工房を見せてもらいました!

竹内さんが今も制作を続ける工房を特別に見せてもらいました。
棚いっぱいに、ありとあらゆる食材がぎっしり!
こういった食材の一つ一つを竹内さんは手作りされています。

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竹内
これは、うどん。これは茹でたあとのうどん。
こっちが更科そば。こっちがざるそば。

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竹内
これは海苔。韓国海苔やきざみ海苔もあるよ。

大手
海苔の種類ごとにサンプルがあるんですね。
撮影の時に使う海苔は防水スプレーでしのいでいますが、
こういうのがあると便利ですね。

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食材の種類や状況によってかわる表情を見事にカタチにしあげていて、
さすがの一言。工房にところ狭しと並ぶ食材のサンプル!圧巻です!

全3回でお届けした、料理写真と食品サンプルのシズル対談シリーズは今回が最終回となります。シズル表現に対する二人の探究心や表現力は、違った領域でありながら共通点が多く、奥深いシズル対談となりました。

今回特別に取材させていただいた竹内繁春さん、本当にありがとうございました!今度は、ぜひhueのキッチンスタジオにも、ぜひ遊びにいらしてください!

今までの対談はこちら
【シズル対談】料理写真と食品サンプル、どこまでも奥深い“シズル表現”vol/1
【シズル対談】料理写真と食品サンプル、どこまでも奥深い“シズル表現”vol/2

プロフィール 竹内繁春
日本のサンプル職人。食品模型のアイデア(さんぷる屋さん)代表。
独自の観察力と豊富なアイディアを活かし、数多くの食品サンプルを手掛ける。
その技術や表現力はテレビでも多数取り上げられ、テレビチャンピオン二連覇を達成。また平成16年にはサンプル業界では初となる『第27回国美藝術展 特別賞』を受賞。

プロフィール 大手仁志
フォトグラファー、シズルディレクター、「食」の撮影を専門とするスタジオhue代表取締役。1965年栃木県生まれ、1985年株式会社アーバンパブリシティ(現・株式会社アマナ)に入社。その後30年間に渡り「食」に関する広告写真の撮影に携わる。食材や料理がもつ生命力を切り取り表現することが食のフォトグラファーの使命と考え、数多くの広告賞を受賞。最も好きな食べ物は餃子。

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著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。

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