書籍『シズルのデザイン』刊行記念 トークイベント開催

先月、書籍『シズルのデザイン』(誠文堂新光社)刊行記念トークイベントが青山ブックセンターで開催されました。著者である大橋正房さん(BMFT)と鼎談でご一緒させていただいたシズルディレクター大手仁志(hue)二人によるトークイベント。

おいしさや、商品情報を伝えるために「言葉とビジュアルが同居している」とも言える食品パッケージの世界について。二つの側面から迫る“シズル”の世界について語っていただきました。

記事1・気になるシズルワードは何?「美味しい」を言葉とビジュアルで徹底分析
記事2・シズルワードדそそる”ビジュアルから「美味しさ」の今が見えてくる!
記事3・人気のシズルワードに隠されたヒミツ『ふわとろ SIZZLE WORD おいしい言葉の使い方』
記事4・書籍『シズルのデザイン』発売  食品パッケージに見るおいしさの言葉とビジュアルについて

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5年、10年、どんどん変化していく
“シズルワード”

長年にわたり、シズルワードを調査、研究されてきた大橋正房さん。
おいしさを伝えるための言葉として、日本語のシズルワードは大きく
「食感系・味覚系・情報系」と3つに分類されるとしています。
ここ十数年の間シズルワードを調査する中で、
表現の仕方、使われ方、伝わり方がどんどん変化しているという大橋さん。

大橋「例えば、うどんの麺のおいしさを伝えるワードとして、
15年前、20年前なんかは『コシがある』と表現されていました。
ところが近年は、『もちもち』と表現されている。
こういったオノマトペ(擬音語)なんかは本来、
子どもが使う言葉だったけれど、今は一般的に使われる機会が多くなりました」

大橋さんの著書である『SIZZLE WORD シズルワードの現在』(BMFT出版)によると、「もちもち」というワードは食感系の言葉のなかで2012年から1位となっており、その一方で、「コシがある」という言葉は2003年の2位から順位を下げ、2015年には12位となっています。

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時代は、“月に一度の贅沢”から、
“毎日のプチ贅沢”へ

こういったシズルワードの変化は食感系の言葉だけでなく、
味覚系・情報系にも見られるという大橋さん。

大橋「食感と味覚の両方を表現するような新たな言葉も生まれています。
例えば、『ほろうま』という言葉。これは“ほろ”が食感を表す言葉で、
“うま”は旨味など味覚を表しています。
こういった両方が混ざった表現も近年は増えてきました。

また情報系だと、近年は「プチ贅沢」という言葉があります。
こういった言葉は15年、20年前は一般的ではなかった。時代の感覚として、
「月に一度、給料日の贅沢」といった感覚より、
「日々の小さな幸せや贅沢」の方が共感される時代になったという背景が考えられます」

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料理写真、おいしさを伝えるビジュアルは
どう変わったか

おいしさを伝える言葉が変化してきたように、ビジュアル表現も近年、
大きく変化をしてきました。料理をはじめ、食に関する広告撮影、動画撮影を
30年以上にわたり手がけてきたシズルディレクター・フォトグラファーである大手仁志は、自身が手掛けてきた食品パッケージの撮影事例を基に、ビジュアルの変化について語りました。

大手「料理写真は、その時代のトレンドなども反映されますが、
近年はスマートフォンとSNSの登場によって、大きく変化してきました。
例えば、皆さんは毎朝目が覚めて、最初に手元のスマホを見ませんか?
昔は、テレビCMや、新聞広告、電車の中吊り広告なんかを目にしていたけど、
今は手元のスマホを眺める時間が圧倒的に多くなってきました」

つまり、メディアを通してプロが撮影した広告の料理写真より、
スマホでSNSから流れてくる友だちが撮った料理写真を見る機会が圧倒的に
増えていると考えられます。こういった環境の変化が、
広告ビジュアルの変化にも繋がってきていると言えます。

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大手「この写真は、僕が仕事として撮影したお好み焼きの写真と、
一方は先日、広島へ旅行した時に食べた尾道焼きです。
お店へ入って食べる前にスマホで撮影しました。
これらの写真をインスタグラムにアップすると、スマホで撮影した尾道焼きの方が、いいねが多いと思うんです。
SNSの場合、広告のように完璧にきれいすぎる写真より、
臨場感ある料理写真の方が、目にとまりやすいように感じています。」

食品パッケージの現場では

食品パッケージの撮影は、
ポスターや広告撮影の世界とはまったく別世界のものだと大手は語ります。

大手「僕は食品パッケージも広告も動画も、食に関するビジュアルは
全て撮影しますが、食品パッケージの撮影だけは、
まったく別の世界だと考えています。
なぜなら、食べ物が持つおいしさの瞬間を切り取るだけでは、
パッケージ撮影では通用しないから。
いかに商品情報が正確に伝えられるかが最も大切だと考えています」

「例えば、インスタントラーメンのパッケージでは、実際には入っていないけど、昔は新鮮な青ネギを使うこともありました。
でも今は、商品情報を正確に伝えるために、
必ず商品に入っている具材だけを使って撮影しています。
なので、商品に入っている乾燥ネギを撮影で使います。
もちろん、現場では見栄えが良い乾燥ネギをセレクトして撮影していますが」


その他、トークイベントでは言葉とビジュアルそれぞれの時代の変化から、
海外ではどのような食品パッケージが主流なのか、
また日本の食品パッケージとの比較についてもお話いただきました。
これまでの10年、おいしさを表す言葉もビジュアルも大きくかわったように、
これからの10年もメディアの変化とともに表現のトレンドは進化していきそうです。

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大手「10年後、ここでまた大橋さんとシズルについてお話できたら、
その時はどんな言葉とビジュアルになっているんでしょうね」


Info 書籍『シズルのデザイン』((誠文堂新光社)は全国書店などで発売中です。ぜひご覧になってください!


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プロフィール
大橋 正房
マーケティング・リサーチャー。コンセプト・ライター。
(株)B・M・FT代表取締役。

生活に関わるデータを収集分析したりや実際の行動を観察し読み込みことが仕事。仮説や思い入れをもってデータをみるが、抑制が効いた提案を心掛けている。1972年日本マーケティングシステムズ入社。1991年B・M・FT設立。
コンセプト開発や製品やパッケージなどの商品開発にからむリサーチを行ってきた。対象分野は、電気製品、マスメディア、通信・ネットなどから、ここ数年は、飲料や食品が中心。編著書は『sizzle word』(B・M・FT出版)、『ふわとろ』(B・M・FT出版)『メディア世代のカルチャーシーン』(誠文堂新光社)など。いま好きな食べ物は麻辣刀削麺パクチー増量。


大手 仁志
フォトグラファー。シズルディレクター。
「食」の撮影を専門とするスタジオ(株)hue代表取締役。

食のフォトグラファーとしての使命は食材や料理がもつ生命力を切り取り表現することと考えている。1965年栃木県宇都宮市生まれ、1985年株式会社アーバンパブリシティ(現・株式会社アマナ)に入社し、現在、アマナグループの(株)hue代表取締役。30年以上に渡り「食」に関する広告写真、パッケージの写真撮影に携わる。朝日広告賞、カンヌ国際広告フェスティバル、ニューヨークADCなどをはじめ数多くの広告賞を受賞。最も好きな食べ物は餃子。宇都宮餃子は子ども時代から変わらないソウルフード。

著者プロフィール

著者アイコン
株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。

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