そそられる焼肉シズルとは? 『焼肉の達人』の著者 小関尚紀氏に聞く【シズル対談】

そそられる焼肉シズルとは?
生の肉が皿に盛り付けられている状態の素材感で見せるのか?
それともまさに焼いているLIVE感か、美味しそうな焼き色が付いた肉か?
私は日々悩みながら撮影しています。
そこで今回お話をうかがったのは、焼肉が趣味、都内150店舗の焼肉店を訪れた経験を持つ、サラリーマン作家の小関尚紀さんです。
この度、部位別の肉の焼き方の指南書『焼肉の達人』を出版された小関さんに、焼きのテクニックを見せていただきながら、焼肉のシズル感について語り合いました。
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焼き方をマスターして黒焦げの肉とはさようなら

大手 とても興味深く、目を惹く本ですね!
どんな経歴をお持ちなのか気になり、小関さんのプロフィールを拝見させていただきましたが、今まではビジネス書を執筆されてきたのですね。
焼肉の本を出されたきっかけは?

小関 この本の出版社であるダイヤモンド社の編集長と焼肉を食べていた時、僕が焼いた肉を食べて
「焼肉って焼く人によってこんなに味が違うんだ! いつもより140%美味しい」
と言ってもらったことから企画が進んでいきました。
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大手  焼肉の焼き方を工程写真付きでここまで丁寧に紹介している本は他に見たことがない。

小関 焼肉は一般の方がメインの肉を調理して仕上げるので、難しくて当たり前。
僕も素人ですが、皆さんよりは焼肉の経験が多いので、お伝えできることがあるかなと思います。
せっかくの良質な肉を黒焦げにしてしまうようなミスが減り、全体のレベルアップにつながれば嬉しいです。

写真で美味しさが伝わる焼肉のシズル感を探る

大手 焼肉のシズル感についてうかがいますが、焼く前の赤い肉と、食べる前の焼き色が付いた肉だと、どちらが美味しそうに感じますか?

小関 僕がSNSにアップするのは、生の肉が皿に盛り付けられている写真が多いです。
自分で焼きながらは撮れないし、焼いたらすぐに食べるので。
でもシズル感としては、厚めの肉だったら上手く焼けた状態の写真の方が美味しさを表現できるのかな。
あとは焼いているシーンはシズル感が伝わりますよね。

大手 そうですね、煙や炎が上手く撮れるとさらに美味しさが伝わります。
一度でも焼肉を経験された方は、LIVE感のある写真を見ると焼いている時の記憶が蘇ってくるので、「ジュ~」という音も勝手にイメージしてくれます。
そもそも食の美味しさは、五感を使って感じています。
でも写真では視覚しか使えません。
なので視覚からの情報だけで美味しさを伝えるために、様々な表現方法を駆使しています。

小関 なるほど!
書籍の撮影では、肉の焼き加減と撮影のタイミングを合わせるのも大変でした。
ストロボを連続で9時間も使用することになり、熱と煙で壊れてしまいました……。
大手さんはどうやって撮影するのですか?

大手 僕が食べ物を撮影する時は、なるべく被写体に近づいて撮影したいので広角のレンズを使うことが多いです。
なぜなら被写体と自分の距離感が近いことにより、自分自身も香りや熱を感じることができ、シズル感を表現できるからです。
そうして撮影された写真では、美味しさがそのままガツン!と伝わるような直球勝負のシズル感を表現できます。

あとはやはりLIVE感を狙いたいので、思い通りの画を撮るためには時間はかかります。
さらに広告となると、求められる表現も決まっています。
最終的にひたすら焼き続けることになるので、どうしてもコストはかかりますね(笑)。

マイトングを携えた達人による最高の焼肉を食す

小関 では実際に焼いていきましょうか!
マイトングを持ってきました。

大手 これを持ってお店に現れたらかっこいい!

小関 こちらは『格之進』や『炭火焼肉 なかはら』なども使っている仙武堂謹製の30㎝トングです。


まずは厚切りタンから。
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トングで肉の端をつかんで“チラ見”しながら、表面をしっかりと焼いていきます

大手 このサクッとした食感がたまらない!
タンの焼き方のポイントは?

小関 厚切りタンは表面にしっかりとした焼き色がつくまで表裏を焼くことです。
焼きが甘いと、この食感にはならないんですよ。
ファーストオーダーとしては、食感も良く、脂感も少ないハツもおすすめです。

次は三角バラです。
これは上カルビとしても出される部位です。
しゃぶしゃぶの要領で、鉄板の上で脂を落としながら焼きます。
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“しゃぶしゃぶ”と焼いて、裏面はさっと焼く程度に

大手 本当にさっとなんですね。

うーん、タレで食べるとまた美味しい!

小関 続いてミスジです。
肉の端から中心部に向かってトングでくるくる巻きながら焼く「ローリング巻き巻き焼き」がおすすめです。
今回は薄めの肉なので、巻いてから鉄板の上に乗せます。
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ローリング巻き巻き焼き大判の肉も食感の違いが楽しめるようになります

大手 旨い!
焼肉屋でぜひこの焼き方を披露したいな。
この焼き方はどうやって見つけたんですか?

小関 大判の肉をただ均一に焼くのは面白くないなと思い、色々な焼き方を試していた時に見つけました。
蛇腹折りも試したのですが、結果的にくるくる巻いた方が表面はしっかり、内側はミディアムレアに仕上がって、食感の違いがはっきりと出ました。
素人だからこそ、こういうチャレンジができてしまうのも焼肉の面白さですね。

次はザブトン。
これはすき焼きで食べる部位です。
今回は出汁トロロを神戸びいどろさんに準備していただきましたので、、漬けダレとして一緒に食べてみてください。
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特製の出汁トロロ。塩とタレ以外の調味料を見つけるのも焼肉の楽しみ

大手 トロロがタレ肉によく絡むし、このつるっととした食感がいい!
ご飯と一緒に食べても美味しいでしょうね。〆丼にもいいな。
なぜ出汁トロロと合わせようと?

小関 関西ですき焼きをトロロで食べさせるお店があると聞き、これは焼肉でも合うかもと思って自宅で試してみたら、簡単で非常に美味しかったという。
今、焼肉では、タレ肉に絡めた大判の肉をさっと焼いて生卵で食す、すき焼き風が定着しています。
生卵の代わりに出汁トロロをつけダレにすると合いますよ。
ザブトン以外にもリブロースもおすすめです。

大手 他の肉料理からも焼肉を楽しむヒントを得ているんですね!

焼肉ブームはどこへ向かう?

大手 焼肉のブームにはどんな流れがあるのでしょう?

小関 希少部位の食べ比べ、コース、赤身肉、塊肉、熟成肉というように、ブームは続いていますよね。
ブランド牛もブランド名だけではなく、どこの牧場で育てられたかという情報まで開示されています。
食べるスタイルも一律ではなく、お一人様向け、予約専門店『肉と日本酒』のようなセルフのお店、高級店というように様々です。

大手 今来ているブームはありますか?

小関 タレ焼肉でしょうか。
しばらく続いた高級路線から、もっと大衆的な焼肉に移行するのかなと。
今、黒毛和種の子牛の値段がどんどん高騰し、5年前の2倍以上になっています。
そうなると中級クラスの店は、特定のブランド牛にこだわっていられなくなります。
タレで美味しく食べられる肉や、牛以外の肉に分散するのかなと思います。

大手 なるほど。
日本の焼肉に対する海外の反応はいかがですか?

小関 小さなお店でも英語のメニューがあったり、お客さんも海外の方が増えています。

大手 セルフで食べるということも海外にはない文化ですよね。

小関 そこを楽しんでもらうためにも、これからは海外の方にもどう焼けばいいかということを伝えていければいいですね。
せっかく和牛はこれだけ部位が細分化されているので。

大手 ぜひ焼き方の動画配信や講座をやってほしいです!
皆さんが美味しい経験を積んでいくと、色々なシズル感を理解してくれるし、僕らの表現の幅も広がっていくと思います。
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美味しい食べ方を学べば、食の経験値が増えます。それにより表現の幅は広がり、さらに食の楽しさは伝わっていきます。また一つ食の楽しみ方を見つけた対談でした。
『焼肉の達人』とマイトングを持って、いざ焼肉屋へ!


※撮影にご協力いただいたのは、『炭火焼肉にくなべ屋 神戸びいどろ 初台店』です。
通常は炭火焼肉を楽しめるお店ですが、今回は撮影のために特別にガス台をご用意いただきました。
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店舗情報:
炭火焼肉にくなべ屋 神戸びいどろ 初台店
東京都渋谷区代々木4丁目37-12
営業時間 17:00分~0:00
定休日 年始
電話 03-6276-2939

Info:
小関尚紀著『焼肉の達人』(ダイヤモンド社)が好評発売中!
焼き方の知識がほとんどない方でも、肉本来の美味しさを十分に味わえる部位別の焼き方を教えます。後半では、達人おすすめの41店を紹介。
ぜひご覧ください。

プロフィール:
小関 尚紀 Naoki Koseki
1970年、大阪府生まれ。サラリーマン作家。
趣味、焼肉。都内150店舗の焼肉店を訪問と独自研究、分析がこうじて、東洋経済オンラインで焼肉記事を連載。たちまち人気連載となった。
筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程後期中退。早稲田大学大学院(ビジネススクール)程国際経営学専攻修了[経営学修士]現在、都内企業に勤務しながら作家としての活動を行う。 著書に、『「即判断」する人はなぜ成功するのか?』(サンマーク出版)『世界一わかりやすいゲーム理論の教科書』(KADOKAWA中経出版)他2冊がある。

大手 仁志 Hitoshi Ote
フォトグラファー、シズルディレクター、「食」の撮影を専門とするスタジオhue代表取締役。
1965年栃木県生まれ、1985年株式会社アーバンパブリシティ(現・株式会社アマナ)に入社。その後30年間に渡り「食」に関する広告写真の撮影に携わる。食材や料理がもつ生命力を切り取り表現することが食のフォトグラファーの使命と考え、数多くの広告賞を受賞。最も好きな食べ物は餃子。

著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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