本日発売『30日のパスタ』 相場正一郎×近藤泰夫クリエイター対談

代々木公園にあるカジュアルイタリアン「LIFE」をはじめ、全国に4店舗のレストランを運営するオーナーシェフの相場正一郎さん。料理以外にも、オリジナルプロダクトや雑誌・書籍の制作など、クリエイターとしても多方面で情報発信をされています。

hueフォトグラファー近藤泰夫と共同で出版したレシピ本『DELICIOUS LIFE OF THE BOOK OF ITALIAN COOKING』から10年、この度再び二人がタッグを組み、『30日のパスタ』を出版しました。
前回のインタビューでは、「LIFE」を軸に手がけてきた店づくりについて、そしてこれから挑戦していきたいことについて相場さんにお話をうかがいました(過去の記事はこちら)。
今回は『30日のパスタ』の魅力について、そして二人が出会った頃からのお互いの変化について対談していただきました。


毎日の食卓にパスタが並ぶ暮らし

――この度は『30日のパスタ』のご出版、おめでとうございます!
まずは本の見どころについて教えてください。

相場さん(以下敬称略) 今回の本では、アマナが発行しているキッズファッション誌のWEB版『MilK JAPON』で連載している「相場正一郎の20分パスタレシピ」の中から30レシピを抜粋して紹介しています。
コンセプトは、「20分で作れる絶品パスタレシピ」。
誰でも簡単においしく作れるパスタが毎日の食卓に並ぶものになってほしいという想いが込められています。
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WEB連載では作り方を伝えることをメインにしていますが、今回の本では作ったパスタをみんなで囲むような暮らしも紹介し、なぜパスタを作るのかというところまで伝えています。

――本を手に取って最初に思ったのは、表紙がイラストのレシピ本は珍しいなと。

近藤 レシピ本のほとんどが写真なので、イラストは絶対目立ちますよね。
それにこのイラスト、とてもかわいいし素敵ですよね?
今回のイラストは山瀬まゆみさんが担当してくれました。

――書店のレシピ本のコーナーでもぱっと目を惹きますし、より世界観が伝わると思います!
このレシピ本は特にどんな人に読んでほしいですか?

相場 実際料理をするのは女性が多いと思いますが、ぜひ男の人にも作ってほしいですね。
家庭の中で旦那さんが少しでも料理ができると夫婦円満になるんじゃないかなと!
この本がそんなコミュニケーションツールになったら嬉しいです。
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近藤 僕も実際に家で奥さんや子供に作っていて、すごく喜ばれています。
特に僕は相場さんのそばでずっと料理の様子を見ていて、色々と質問しながら撮影をしているので、今回のパスタのレシピやコツを相場さんの次に熟知しているんじゃないかな。

レシピ本のシズル感はどこにある?

――この本の中で特にこだわったポイントは?

近藤 今回は特にプロセス写真にこだわりました。
僕はプロセス写真は完成写真よりもシズル感を伝えられるんじゃないかなと思っています。
完成されたものよりも、まさに炒めているところやちょうど良く火が入った瞬間の方が絶対おいしそうに見えるなと。

――つい完成写真に目を奪われていたけれど、この本のプロセス写真は香りや熱がすごく伝わってきますね!

近藤 プロセス写真はレシピの分かりやすさを重視したものが多いのですが、僕はシズル感を重視して撮影しました。
ひとつのレシピで300カットぐらい撮った時もあります。

上手にプロセス写真を撮ることは意外と難しくて、レシピのポイントもある程度予測して、かつ調理中の動線を妨げないように撮影しなければいけません。
そのためには料理人とぴったり息が合ってないとできないんですよ。
そういう意味で言うと、今回はあうんの呼吸というか、餅つきみたいに自然な流れで撮影が進んでいきましたよね。
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相場 シズル感って、おいしいポイントをいかにドラマティックにツヤっぽく撮ることなのかな。
それはやっぱり料理を熟知していて、何よりも食が好きな人じゃないとできないよね。
だから近藤さんの「食」に対する感度は、僕たちよりも高いんじゃないかなと思っています。

移り行く時代の中でクリエイターが表現するもの

――『DELICIOUS LIFE OF THE BOOK OF ITALIAN COOKING』から10年、前回の本との違いやご自身の心境の変化をどう感じていますか?

相場 前回は作品集に近い本、今回は家庭で作れることをゴール設定にした実用書で、それぞれの目的に合わせた最高のビジュアルを目指しました。
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近藤 前回は自分たちが持っているものや世界観を表現したいという気持ちでじっくり丁寧に作った感じですね。
今回は日本中の書店で自分たちのことを知らない人がこの本を手に取ったことで自分たち世界観を知り、さらにファンになってもらいたいという想いで作りました。
だから自費制作ではなく、きちんと出版社から出す(出版コードを付ける)ということにこだわったんです。
世の中に対して自分たちができることでどう貢献できるのかというところまで考えられるようになったんだと思います。
その気持ちが、この10年間の成長なのかな。

――今年は「LIFE」オープン15年周年という記念する年でもあります。
それぞれ異なる立場で食の世界を見ている中で、世の中の変化をどう感じていますか?

相場 オープン当初はやはり料理屋さんなので味にこだわって、おいしいものさえ作ればいいんだという気持ちもあったと思います。
でもこのお店を始めてからこのエリアに住み、子供が生まれ、子供を介した友達ができてくると、みんながこの店に来てくれるのはおいしいもの食べるためだけではなくて、もっと豊かさみたいなものを感じたくて来てくれているんだなということに気がついたんです。
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「豊かさとはなんだろう?」と考えてみると、今はただお金があればいいというものでもないし、自分にとっての豊かさを追求する、それぞれの価値観が認められる時代になってきたなと思うんです。

最終的には人のことを思いやれるとか、人にやさしくなれるとか、そういう心の豊かさなんじゃないかなと。
そういう風に自分の心が豊かになっていくと、周りの人のことも豊かにしたくなっていく。

だから豊かさを考える余裕もなく日々忙しく働いている方々にエールを送るような、心の豊かさを取り戻せるような店作りをしていきたいなと考えています。

近藤 広告業界については日々本当に変化が激しいです。
たった10数年の間に、正直「プロが写真を撮る」ということの価値は下がってきています。
以前は素晴らしい素材(写真)を作れる人が活躍していましたが、今はコミュニケーションやストーリーが重視されるようになったのかな。
そういうものを形にして世の中に示せる人が求められる時代になってきたんだと思います。
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好きなことを続けていられる理由

相場 そういう意味で言うと、今回の本は今の時代にフィットしているよね。
僕たちは10年前と同じ考えで料理と写真を作っているわけではなく、日々マイナーチェンジを行い、アップデートしているから好きなことを続けていられるのかな。

さらにこの本の影響が大きければ、今までとはまた違ったクリエイティブな活動ができると思うんです。
だから多くの人に見てもらって買ってほしいですね。

――これからお二人が実現したい夢についてお聞かせください。

近藤 次のステップは、この本を見た人から「この二人を起用して楽しい企画をやろう」というきっかけでスタートするのか、
あるいはこの本が売れたことで僕らがまた新しいことを考えつくのか。
そこに今の自分たちが思いつかないような発展があればおもしろいな。
今回のレシピ本にはそういう可能性があると思っています。

相場 そうだよね。
僕はこれからも自分のフィルターを通して日々の暮らしがもっと幸せになることを伝えていきながらも、ぶれずに実用書を作っていきたいな。
今回の本についても、手にしてくれた人が特定の料理家目当てで買ったわけではないけれど、お気に入りのレシピ本のひとつになったら嬉しい。
こういう実績を積み重ねていくことで、原点である料理人としての証を示せていきたいですね。
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――『30日のパスタ』は、異なる立場で食に関わるクリエイターの信頼関係のもとに成り立っている本なんですね。
ありがとうございました!

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