「食のカルチャーを発信する」フードディレクター浅本充氏インタビュー・後編

20年近く様々な立場で食に関わり、フードカルチャーを作ってきたフードディレクターの浅本充さん。
過去には食の撮影スタジオhueでもビオワインのイベントを行うなど、20年近く様々な立場で食に関わり、新しいフードカルチャーを生み出している浅本さんに、前編ではカルチャーにどっぷりと浸った青春時代から、欧米で見た世界について語っていただきました(過去の記事はこちら)。
後編では、フードディレクターとしての活動とこれから目指すところについてお話をうかがいました。

パン屋でもコーヒー屋でもない、“ベイクショップ”ブームを作った30代

2009年にアメリカから帰国し、「UNITE(ユニテ)」という会社を立ち上げました。
これは英語のユニットを意味するフランス語です。
いろんな人をくっつけて1つのものを作っていく会社にしようという想いが込められています。
また、ル・コルビュジエが設計した「Unité d'Habitation(ユニテ・ダビタシオン)」という集合住宅の名前にも由来しています。
これは集合住宅の敷地内に郵便局や店舗、体育館などがあり、その空間の中で生活が完結するようなビオトープ的な場所で、現代の集合住宅の基礎になったと言われています。

業務内容は食のディレクションやプロデュースです。
食の世界でこういう立ち位置で働くことは、20代の時に決めました。
当時僕はフランス料理店でシェフ、ソムリエ、マネージャーとして働いていたのですが、過酷な労働環境の中でずば抜けて技術はあるのにセンスがない人とか、その反対にセンスはあるのに技術が追い付いていない人をたくさん見かけて、これはもったいないなと。
それなら自分はそういう人たちのディレクションやプロデュースをすることで埋もれている才能を開花させるようなステージを作ろうと思ったんです。

最初の仕事は会社を設立して4日目、インテリアの輸入・製造等様々な事業を手掛ける「IDÉE」の仕事です。
ニューヨークから8月に帰ってきて、9月に会社作り、元々お世話になっていたIDÉEに挨拶に行ったところ、自由が丘のショップの4階のカフェだったスペースがちょうど空いていているのでそこで何かできないかと相談されたんです。
すぐに企画書作り、プレゼンをしたところ、即採用!
会社設立の同年の11月に『Jiyugaoka BAKE SHOP』をオープンしました。
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その背景には、当時の日本にはうまいコーヒー屋とうまいパン屋はあるけれど、ブルックリンで見たようなうまいコーヒーが飲めるパン屋はないし、うまいパンが食べられるコーヒー屋はない、じゃあ作っちゃえばいいやという発想から生まれています。

このパン屋でもコーヒー屋でもケーキ屋でもない新業態に、最初はみんな戸惑っていましたが、『料理通信』で“ベーカリー新時代”という特集も組まれるなどメディアを介して一気に“ベイクショップ”というジャンルの店が増えていきました。

チャンスは備えあるところに訪れる

それから10年、自分が40歳を迎えるにあたってまた仕事のスタイルを変えようと思い、BAKE SHOPをバイアウト、そのタイミングで谷尻さんから声がかかり、冒頭にお話しした現在場所にオフィスを構えることになりました。

これからの10年はフードディレクターとしてマスを狙っていこうかなと思っています。
今までプロジェクト単位で関わっていた谷尻さんと同じ場所にオフィスを構えることで食の仕事も増えていきましたし、クライアントも大きくなってきました。
そこで気が付いたのは、今まで自分がやってきたことは100人中2、3人を狙ってやっていたということ。
これからは底上げに力を入れることで中間層も増やしていこうと考えています。
そのためには設計チームと組むことに意味があって、何も知らずに店に入ってきたお客さんに何かを得て帰ってもらうような空間作りが必要なんです。
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Saturdays NYC(大阪)


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CAFÉSHOP(鹿児島)

僕はよく運が良いとか言われるのですが、良いタイミングでスタートが切れるのはやっぱり狙わないとできないことです。
最近よく若い子たちに相談されるんです、「どうやったら仕事が来るんですか?」って。
みんなあれもこれもやりたいとは言うけれど、いざ目の前に1000万円をポンっと置かれたらすぐに動き出せない人が多い。
僕はチャンスボールが来た時に24時間365日バットを振る態勢はできています。

それはコネクション作りであり、自分の情報量であり、そして身の空け方ですね。
だいたい仕事量を8割ぐらいにしておいて、何かおもしろいことがあった時入る隙間を作っています。
そのためには常に仕事を整理しておくことは大事です。

あとはシミュレーションかな。
あとは頭の中や紙の上では200軒以上は妄想レストランを運営しては潰すということを繰り返しています(笑)。
例えば、実際に良い場所を見つけたら、その場所に一日中座って街行く人たちをずっと眺めてみます。
そこから構想を練り、良いアイデアはメモとして蓄積していく。
そしてそのエリアの案件が来た時に、自分のメモをベースに企画提案を行います。
最後にポジティブ要素とネガティブ要素を徹底的に洗い出してみて、少しでもポジティブ要素が上回ったらビジネスとして取り掛かるという流れですね。

40代はこうやってしっかりと土台作りをして、50代はまた新しい振り切った仕事して暴れたいですね!
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浅本さんが手がけるのは一過性のブームではなく、カルチャーです。そこに訪れた人、触れた人に必ず何かを残すような仕掛け作りをしています。お話をうかがうことでこれからの10年、浅本さんからどんな食のカルチャーが発信されるのかますます楽しみになりました。



プロフィール:
浅本 充 Makoto Asamoto
「ブラスリーベルナール」「adding:blue」「レスプリミタニ」でのサーヴィスとソムリエ、マネージャーを10年間経験後、BROOKLYNに渡米。2009年株式会社ユニテを設立。同年に人気のカフェ「自由が丘ベイクショップ」をディレクション。コーヒーの造詣も深く、その楽しみ方のセンスには定評がある。コーヒーのみならずライフスタイルの提案と、新しいフードトレンドや、世界のオーガニック事情の知識も深い。現在は、様々な企業の飲食部門やライフスタイルのコンサルティングに参加。

※「世界のカルチャーを食でつなぐ」フードディレクター浅本充氏インタビュー・前編 の記事はこちら

著者プロフィール

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