お気に入りの日本ワインがきっと見つかる店、熊本『瑠璃庵』店主・笹原圭悟さんインタビュー

全国的にワインが盛り上がりを見せていますが、熊本でもワインが熱いんです!
市内では『ナチュランネ熊本』『満月ワインバー』といったナチュラルワインや日本ワインのイベントが開催され、毎回満員御礼の大盛況。
こうしたイベントは、ワインについてこだわりや熱い想いを持った飲食店やワインショップによって行われています。

今回お話をうかがったのはその中の一人、熊本市中央区にある和食居酒屋『瑠璃庵』店主の笹原圭悟さんです。
笹原さんにワインとの出会いや熊本に対する想いについてうかがいました。

ワインから蒸留酒までマニア垂涎の日本のお酒を取り揃える『瑠璃庵』

――まずは笹原さんのお店『瑠璃庵』のコンセプトを教えてください。

笹原圭悟さん(以下敬称略) このお店は熊本を中心に生産者に寄り添った九州の食材を楽しめる和食居酒屋です。
お酒は日本酒や焼酎はもちろん、ワインや蒸留酒も全て日本のものを取り揃えています。
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▲『瑠璃庵』の店内の様子

――熊本は日本酒や焼酎といった地酒も豊富ですし、「菊鹿ワイン」で有名な熊本ワインもありますよね。

笹原 熊本の人は地元愛が強く、地元のお酒も愛されています。
でもワインについては、お店を始めた2009年当初は「なんで日本のワインしかないの? 海外のものが飲みたいのに!」というお客さんもいらっしゃいました。

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――その頃はまだ日本ワインは甘くておいしくないものと思っていらっしゃる方も多かったのでは?

笹原 そうですね。
でも僕は当時から日本ワインの可能性を感じていたので、僕が良いなと思ったものを地道にお客さんに勧めていました。
そうやっていく中で好きになってくれる人も少しずつ増えてきて、今ではわざわざ日本ワインを飲むためにこの店に来てくださるお客さまもいらっしゃいます。

――笹原さんと日本ワインとの出会いは?

笹原 東京の居酒屋で働いていたときに何気無く仕入れた日本のワインが想像以上に美味しくて。
興味が湧いてワイナリーを尋ねていくうちに自然とオススメするワインが増えていきました。
ワインって難しいとか敷居が高いとか思われがちですが、つくっている現場が割と近くにあって、行こうと思えばすぐにでも行ける日本ワインの身近さがいいなって思ったんです。

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満月の夜はワインで乾杯! 『満月ワインバー』が熊本に上陸

――笹原さんはもともと熊本のご出身なのですか?

笹原 父が熊本出身で、僕自身は東京生まれ東京育ちです。
父は東京で20年以上飲食業に携わり、今から10年前の2009年に地元熊本に戻ってここでお店を始めることになりました。
僕もちょうど東京の店を辞めるタイミングだったこともあり、思い切って移住して手伝うことにしました。

――なるほど。スタートはお父さんとご一緒だったのですね。
お店以外の活動についても教えてください。

笹原 ひとつは2013年にスタートした『満月ワインバー』というイベントです。
当時は東京でワインバー『Kinasse(キナッセ)』、現在は熊本でワインショップ『Quruto(クルト)』を営む古賀択郎さんにお声掛けいただいて一緒に熊本のワイン文化を盛り上げよう! という想いから始めたイベントです。
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これは月に1回満月の日に世界中のナチュラルワインを楽しむ会で、日本ワインは僕が、世界のワインは古賀さんがセレクトしていました。

このイベントをきっかけにしばらく海外のワインから離れていた僕が改めて色々な国のワインに触れる機会に恵まれました。
ナチュラルワインって今までのワインの知識が全く通用しなくて、「今まで勉強してきたのはなんだったんだ!?」って、かなりの衝撃を受けたのを覚えています。
「この感覚をまた多くの人と共有したい!」という気持ちが強くなり、2015年にこの店の1階に国内外の自然派ワインを扱う店『上乃裏惣菜コルリ』(2019年3月閉店)をオープンしました。

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▲『上乃裏惣菜コルリ』は残念ながら2019年3月で閉店しました

熊本を笑顔にしたい、ナチュラルワインのイベント『ナチュランネ熊本』の力

――笹原さんもイベントがきっかけでナチュラルワインにハマっていったのですね。

笹原 そうですね。
県外の様々なイベントに参加して楽しむうちに、どうにかこの熱を熊本に持ち帰れないものかと。
そこで当時ナチュラルワインを扱っていた『Bistrot CHEZ KEN』さんや『ツノレストラン&カフェ』さんらと一緒に国内外のナチュラルワインを楽しむイベント『ナチュランネ熊本』を始めました。

――第1回目のお客さんの反応はいかがでしたか?

笹原 約200名分のチケットを売り切るのはかなり大変だったのですが、終わった時の僕らの達成感はもちろん、参加者全員が一体となって楽しめた記憶に残るイベントだったと思います。
これは絶対継続したいイベントだと考え、早速第2回目の企画もスタートしました。
ところがそのすぐ後に起こったのが2016年4月16日の熊本地震でした。

――そのタイミングでの震災だったのですね。

笹原 友人たちが僕の実家に避難して共同生活を送ったり、震災直後はこの店を拠点にしてとりあえずみんなで炊き出しを行ったりしましたね。
状況も少し落ち着いてきた時、改めて「僕らにできることは何か?」と考えるようになりました。
考えた結果、ワインを仕事にしている僕らは、やはりワインでみんなを笑顔にすることではないかと。
それで半年後の2016年10月16日に第2回目の『ナチュランネ熊本』を再開しました。

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――復興途中での開催はご苦労も多かったでしょう。

笹原 人によって被害状況も全く違うけれど、「これから頑張って行こう! その日ぐらいは笑顔でワインを楽しんでほしい!」という想いのもと開催しました。
テーマは「ワインで、僕らができること。」
県外からもたくさんの問い合わせをいただきチケットはすぐに完売、イベントは穏やかでとても良い雰囲気で終わることができました。

――その後のナチュランネも毎年大盛況のようですね!

笹原 はい。ありがたいことに順調に開催しています。
でも、そもそもイベントを開催する目的は、その日だけの成功ではなくて、参加出店するそれぞれのお店に日常的に来てもらうことなんです。
ナチュラルワインをブームで終わらせないで日々日常に浸透させたいと思うのと、ワインだけじゃなく僕らが大事にしていることをしっかり伝えられるのはやっぱりお店に来てもらうことなので。

熊本と東京を知る自分だからできること

――最後にこれからの夢について教えてください。

笹原 夢、というか僕に与えられた役割を深く考えていきたいです。
祖父母の代から携わる農業にも興味がありますし、飲食という仕事に関係することってたくさんあるんです。
飲食が人と向き合う動の世界だとすると、農業は自然と向き合う静の世界だということを感じます。
自然はしゃべれないけど訴えかけてくるものがあって、静かな一日一日の変化をくみ取って、手をかけてあげることがその後の結果に繋がってくると思います。

――ワインのつくり手さんと同じような考え方ですね。
お店のこれからについてはどう考えていますか?

笹原 この瑠璃庵の建物は130年ほど昔に建てられたものです。
せっかく良い場所にご縁をいただいたので、このお店も出来るだけ長く続けていきたいと思っています。
イベントについても同じで、ナチュラルワインを知ってもらって喜んでくれるお客さんを少しでも増やしていきたいし、一年間頑張った僕らの通知表でありお祭りでもあると思っています。

今年は僕が熊本に来てちょうど10年になります。
10年経ってみると熊本のこともなんとなく分かってきたし、東京で生まれ育った僕だからこそできていることもあるなと。
熊本の良いところをもっともっと掘り下げていくことと同時に、地方の価値あるモノを世界基準で考えていきたいと思っています。
そうすることで、その土地やそのお店にいく価値ができていくんじゃないかなと。
これからまた10年、20年と積み上がっていく仕事をしたいですね。

――なるほど。笹原さんの熊本やワインに対する熱い思いを感じさせていただきました。
ありがとうございます。
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ここ10年で飛躍的に広まっていった日本ワインやナチュラルワイン。
そうした背景には生産者の試行錯誤と、各地の想いを持った人たちの地道な活動がありました。
熊本にお越しの際は笹原さんのお店で、おいしいワインの今をぜひ体験してみてください!

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株式会社ヒュー
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