地元愛から熊本産ナチュラルワインをつくった男、ワインショップ『Quruto』店主・古賀択郎さん

熊本にはお酒で街を盛り上げている人たちがいます。
前回は飲食店として日本ワインを広めている『瑠璃庵』店主の笹原圭悟さんをご紹介しましたが(過去の記事はこちら)、今回お話をうかがったのはワインショップとしてナチュラルワインの普及活動に努めている『Quruto(クルト)』店主・古賀択郎さんです。
元々東京でワインバーを営んでいた古賀さんは、出身地である熊本にナチュラルワインを広めるために故郷に戻ってワインショップをオープンさせました。
活動の経緯からこれからの夢についてお話をうかがいました。

熊本の日常の食卓にナチュラルワインを届けたい

――こちらのワインショップはいつオープンされたのですか?

古賀択郎さん(以下敬称略) オープンは2016年9月で、国内外のナチュラルワインと日本ワインを中心に取り扱っています。
その前は東京・幡ヶ谷で『Kinasse(キナッセ)』というナチュラルワインを中心にしたワインバーを7年ぐらいやっていました。

――東京で飲食店やられていたのですね?なぜ飲食店から酒屋さんに転身したのですか?

古賀 いくつか理由はあるのですが、きっかけはワインに携わっているうちにぶどうの栽培に興味を持つようになったことです。
都心からアクセスしやすい山梨のワイナリーには度々足を運んでいたのですが、生産者の方からお話を聞くと、ワインの要は原材料であるぶどうであると感じました。
それなら、例えばいわゆるナチュラルワインを扱うにしても、実際にぶどうの木を1本でもオーガニックで栽培してみるほうが説得力があるんじゃないかなと思い、興味を持つようになりました。
とはいえ幡ヶ谷から毎日通える場所に畑はないし、当時はワインバーをやっていたので、夜のバーの仕事と朝の農作業を同時に行うことはできなかったんです。

――たしかにその両立は難しいですよね。

古賀 ちょうどその頃、僕の地元である熊本で『満月ワインバー』というイベントを始めました。
場所は熊本市内にある笹原圭吾さんのお店『瑠璃庵』で、月1回満月の日に僕は熊本に行ってナチュラルワインを紹介するというものでした。
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――お客さんの反応は如何でしたか?

古賀 お客さんの反応もすごく良くて、毎回大盛況!
2013年から始めて4年間続けました。
でもせっかくイベントが盛り上がっても、当時熊本の街中には気軽にナチュラルワインを買えるお店もなく、ネットで買うことはできますが、それはお客さんとしても不安じゃないですか。
送料だって馬鹿にならないし。
それなら自分が故郷に戻って酒屋としてナチュラルワインを紹介すればいいんじゃないかと思い!
そうすれば朝は畑の仕事をしてぶどうの栽培に携わり、午後はお店でワインの販売もできると思ったんです。

そこでオープンしたのが、このワインショップ『Quruto』です。
店名の由来は、それまで東京でやっていたワインバーの名前『Kinasse(キナッセ)』が熊本の方言で「おいでよ!」という意味で、もし2号店を出すなら「来るの?」という意味の『Quruto(クルト)』にしようと思っていたので、そのままワインショップの名前に使いました。
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ワインっておいしい! 人生を変えた1杯の白ワイン

――古賀さんは若いころからワイン好きだったのですか?

古賀 僕が飲むのはもっぱら焼酎でした。
ワインは若かりし頃に安くておいしくないワインを飲んでから苦手で……。
でもある時友人に連れてってもらった渋谷のワインバルで飲んだ白ワインが衝撃的おいしさだったんです!
こんなにおいしいものを知らないだなんて人生損してると。
その当時僕は27歳で広告業界にいたのですが、この自分が味わった感動を多くの人に伝えたくて思い切ってワインバーを始めようと思ったんです。

――ワインのおいしさに感動して転職するってすごい行動力ですね!

古賀 そこからワインバーをオープンするまでの2年間はワインについて必死に勉強しました。
自分が衝撃を受けたワインがフランスのロワール地方のサンセールということも分かりました。
そうやってワインについて調べていくうちに、地元の熊本にも『熊本ワイン』というワイナリーがあることを知りました。
そこで、そういうものを紹介する店として『Kinasse』というワインバーを東京でオープンさせました。

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▲ティエリ・ピュズラ氏がつくった「ヴァンクゥール ヴァンキュ ブラン」。古賀さんがワイン好きになったきっかけのものと同じくロワールのソーヴィニョンブランを使ったナチュラルワイン。たまたま雑誌で見かけ、気になって買ってみたところびっくり! 白ワインなのに、シュワシュワと発泡していたそう。味わいも通常のロワールのソーヴィニョンブランは、青々としていてグレープフルーツのようなニュアンスがあるのに対し、このワインはもっと旨味がギュギュッと詰まり、白桃にかぶりついたような味わいだったそう。このワインをきっかけに古賀さんはナチュラルワインに惹かれるようになりました

ないならつくればいい、熊本産ナチュラルワインの誕生秘話

――故郷熊本に戻ってワインショップをオープンさせてからの活動を教えてください。

古賀 『ナチュランネ熊本』というナチュラルワインのイベントに、僕は第2回目から参画しています。
ちょうど僕が東京から地元熊本に戻って来たタイミングですね。
でもナチュラルワインを紹介するこのイベントには地元の熊本ワインさんは参加していなかったんです。
理由は熊本ワインさんの製法はクラシックで、ナチュラルワインをつくっていなかったから。
でも僕としては地元で開催するワインイベントに地元のワイナリーが入っていないのは納得できなくて、熊本ワインさんにナチュラルワインをつくってもらうようにお願いしました。
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――なるほど!でもナチュラルワインをつくってもらうことはすんなり受け入れてもらえました?

古賀 熊本ワインさんは僕が東京でワインバーをやっていた時からのお付き合いで、その当時からナチュラルワインをつくってほしいとお願いはしていたんですよ。
ただ熊本ワインさんは年間で20万本近く生産している規模の大きい会社なので、工場で仕込むとロットも大きくなってしまうので、会社としてナチュラルワインを仕込むのは無理だと言われていて。
でも僕が熊本に戻ってきて酒屋をやることになったので、つくってもらったワインは僕が全て買い取るという条件で納得してもらいました。
最初は試験的に60本だけ仕込んでもらって第2回目のナチュランネに出しました。
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▲熊本県玉名市の樹齢50年超の古木のマスカットベリーAぶどうを100%使用した赤ワイン「キュヴェ玉名」。古賀さんが熊本ワインに依頼したことをきっかけにつくられたナチュラルワインは今や海外にも輸出されています

ぶどうの栽培を知ってこそ伝えられること

――これからの夢を教えてください。

古賀 そうですね、ぶどうの栽培をやりたいですね。
自然相手は大変ですし、熊本は降雨量が多く、特に6月と7月は大雨が降りやすい土地です。
ぶどうの栽培のためにはあまり適した気候とは言えないかもしれない。
でもそういう大変さが分かると、ワインを売る時も説得力が出るかなと思うんですよね。
ただし僕はあくまでもワインショップを軸にしたいので、醸造はプロにお任せして、畑も自分では午前中で面倒を見られるぐらいの規模で、と考えています。
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――お店のこれからについてはどのように考えていますか?

古賀 ナチュラルワインが街に浸透するには5年、10年はかかるから、急いで何かするよりもとりあえずはこのままでいいのかな。

日本人って最初に出会うワインがおいしくないことって多いと思うんですよ。
学生時代に安い居酒屋で無理やり飲んだ苦い記憶とかね。
それに、ワインがものすごく高尚なものだと思っていて、クリスマスか誕生日にしか買わないという方もいますよね?
そうじゃなくて、もっと日常的にワインを楽しんでほしいです。
そういう方たちに向けて丁寧においしいワインを紹介していけば、きっと好きになってくれると思うんです。
一般のお客さんに限らず、飲食店さんに向けてもワインの売り方とか説明の仕方とかも教えていきたいですね。
僕はそのために地元に戻ってきたんです。
スポーツに例えるなら早めに現役を引退して地元に戻ってきて地方クラブの監督になったイメージでしょうか(笑)。
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なので、自分が友人からワインの世界を教えてもらったように、今度は自分が熊本の方のワインと出会うきっかけになりたいですね。

――それは素敵なことですね。ぜひ熊本に多くのワインファンを作ってください。
今日はありがとうございました。

『川上酒店』の川上さんご夫妻、『瑠璃庵』の笹原圭悟さん、そして今回お話をうかがった『Quruto』の古賀択郎さん。みなさんそれぞれの立場で街の活性化に努めています。震災からの復興に向けて取り組み熊本、ぜひ食を通して応援してください!

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