「駅弁は食文化の玉手箱!」駅弁ライター望月さんと探る駅弁シズル・前編

駅弁を食べる前のシーンを思い出してみてください。
自分の座席を見つけて、荷物の整理をしてほっと一息。
すぐ食べ始める方、発車ベルが聞こえるまでじっと待つ方、東海道新幹線なら新横浜を過ぎるまでは食べ始めないなど自分ルールのお持ちの方も、蓋を開ける瞬間はちょっとワクワクするのでは?! 

今回お話をうかがったのは、駅弁ライターとして活動されている望月崇史さんです。
駅弁を求めて全国を飛び回り、各地の駅弁を食べ尽くした……と言いたいところ、まだまだ尽きることのない駅弁の世界を探究し続ける望月さんを2回にわたってご紹介します。
前編では、活動のきっかけから望月さんの考える駅弁のシズルについてお話をうかがいました。

駅弁ライターの始まりは中学校時代

――まずは望月さんの駅弁ライターとしての活動内容を教えてください。

望月崇史さん(以下敬称略) 全国各地に行って駅弁の取材を行い、ニッポン放送のウェブサイトの連載『ライター望月の駅弁膝栗毛』の中で、1日1駅弁ずつ紹介しています。

――駅弁ライターとしての活動のきっかけは?

望月 私はラジオの放送作家なんですが、ニッポン放送のラジオ番組を担当していた時、番組のHPを作るにあたって何かコンテンツを作ろうという話が出たんです。
元々自分が鉄道や駅弁が好きだったこともあり、それを企画として提案したことで2002年7月『ライター望月の駅弁膝栗毛』がスタート。


また、2016年からは『駅弁屋さんの厨房ですよ!』という特集企画で、各地の駅弁の社長さんに厨房を見せてもらいながら駅弁の歴史や成り立ちについてお話をうかがっています。
これは次に登場してくれる他の会社の社長さんを紹介してもらうという、リレー方式の取材なんです。
望月さん02.jpg

――数々の取材を重ねてきた望月さんにとって、最初に記憶に残っている駅弁は?

望月 新富士駅の『竹取物語』(富陽軒)ですね。
1竹取物語.jpg
これは昭和63年3月に東海道新幹線・新富士駅の開業記念で誕生した駅弁です。
特徴は、“茹で落花生のおこわ”。
落花生というと千葉のイメージが強いと思うんですが、富士山南麓、岳南地区の特産品の一つでもあるんですよ。
当時私は中学生だったんですが、教室の壁新聞や中学校の卒業文集でこの駅弁について熱く語っていました。

――今とやっていることが変わらないですね(笑)。
そもそも駅弁の定義とは何でしょう?
今は駅構内のコンビニや駅近くのデパートでもお弁当が買えますよね。

望月 駅弁の明確な定義はないのですが、普通の総菜弁当との違いは常温保存可能で消費期限を長めに設定していること。
また、JRの構内営業を行う企業で構成されている、一般社団法人日本鉄道構内営業中央会に加盟している駅弁屋さんの駅弁には、掛け紙などに“駅弁マーク”があります。
こちらは鉄道会社の企業理念と同じく安心・安全に基づく厳しい基準をクリアしたことを証明するブランドマークなんです。
駅弁マーク.jpg

駅弁は時代を映す鏡

――今、駅弁は全国で何種類ぐらいあるのでしょう?

望月 入れ替わりも激しいのでカウントするのは難しいのですが、だいたい2000種類ぐらいでしょうか。
どんどん新作も出ますし、リニューアルもされています。
駅弁の取材を始めて20年近くになりますが、全然食べきれていないですね。

――望月さんでも追いつけないとは!
新商品はどんなタイミングで出てくるのですか?

望月 毎年1月に開催されている京王百貨店の駅弁大会での新商品発表を目指している会社は多いですね。
それをきっかけに定番商品となる駅弁もあれば、イベントの打ち上げ花火として終わるものも。
また、最近では秋から冬にかけてJR東日本が『駅弁味の陣』というお客さんからの投票による駅弁コンテストを行っており、そこに向けて発表される新商品もあります。

――駅弁にもトレンドはあるのですか?

望月 ありますね。
京王百貨店の駅弁大会で見られる傾向だと、ここ数年は牛肉推しでした。
それがそろそろ落ち着いてきて、今年は一つの食材を蒸す・焼く・煮るといった3種類の調理法で食べられるといった駅弁が登場し、人気がありましたね。
例えば一つのお弁当の中で酒蒸し穴子や炙り煮穴子、焼き穴子など、様々な穴子が楽しめるものもありました。

新商品に限らず、昔ながらの駅弁でも時代によって売上の変化があります。
例えば、富山県の『ますのすし本舗 源』
こちらの駅弁には普通のあっさり味と特選のこってり味があるんですが、今は脂が好まれる時代で特選の方が人気だそう。
保存環境が良くなったので調味料は薄くなってきているけれども、食材には脂がのっているものの方が好まれる傾向にありますね。

ますのすし.jpg

米粒の輝きに注目! 駅弁のシズルを探る

――望月さんは駅弁を取材されてご自身で撮影されているそうですが、撮影時のこだわりはありますか?

望月 私にとって駅弁の撮影は記録として残すためのもの。
なので、たとえ通路側の席しか取れずに駅弁を景色と一緒に撮影できなかったとしても、それも含めてリアルな旅の記録として、あまりいじることはしないですね。
私の撮影の手順は、まずは掛け紙付き容器の段階で撮る、掛け紙と蓋を外して弁当と並べて撮る、弁当単体で撮る、そして特別な食材があれば寄りで撮ります。

弁当の撮り方.jpg

――撮影したくなる食材とは?

望月 例えば、山形県のブランド米である『つや姫』。
これがごはんに使われていると、まさに名前の通り米粒の表面がツヤツヤと輝いているんです!
だからごはんに『つや姫』が使われていることが分かったら、必ず寄りで撮るようにしています。

――駅弁の米の輝きに注目とはさすがです!
お弁当の中身を知ったら、どこをポイントとして撮影すればいいのか分かるわけですね。

望月 そうですね。
あとは山形駅の『やまもり弁当』(もりべん)だと、山形名物の玉こんにゃくは撮影ポイントとして外せないとか。
やまもり弁当.jpg

――その土地のご当地名物が何なのか、基礎知識として知っておく必要がありますね。

望月 そうです、駅弁は“地域の食文化の玉手箱”ですから!
反対に駅弁がきっかけとなってその土地の食文化を知ることもできる。
つまり駅弁は学びにあふれたものなんです。
だから私は、駅弁はなるべくその土地で買って、その土地の水や空気を感じながら食べるようにしています。
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時代の嗜好も反映しながら、その土地の伝統的な食文化を伝える駅弁。
次回は望月さんおすすめの駅弁を求める旅に出発します。
どうぞお楽しみに!


プロフィール:
望月 崇史 Takafumi Mochizuki
フリーランスライター
ニッポン放送のウェブサイト『ライター望月の駅弁膝栗毛
駅弁ブログ『ライター望月の駅弁いい気分

著者プロフィール

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株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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