「寿司駅弁の最高峰、修善寺にあり」駅弁ライター望月さんと探る駅弁シズル・後編

1年間に食べる “駅弁“の数は約500個、20年近く1日1駅弁ずつを紹介し続けている、駅弁ライターの望月崇史さん。
前編では、活動のきっかけから望月さんの考える駅弁のシズルについてお話をうかがいました(前回の記事はこちら)。
後編では、実際に電車に乗って、駅弁のシズルを探る旅に出ます。

迷ったらコレ! 崎陽軒の『シウマイ弁当』の秘密

いよいよ電車に乗って、駅弁のシズルを探る旅に出ます。

望月さん曰く、駅弁の買い方の極意は以下3つ。

・今あるものは今しかないと思ってある時に買うこと
・行きにあっても帰りにはないので、予約できるものは行きで予約をすること
・朝一の店頭販売分は午前9時に売り切れ、10時台にフルラインナップが揃う

今回の旅の目的地は、伊豆箱根鉄道駿豆線の修善寺駅。
ここには、ここでしか買えない、望月さんが絶賛する寿司駅弁があるとのこと!

修善寺駅までは、時間帯によっては東京駅から踊り子号で1本で行くことができます。
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目的地の駅弁も楽しみですが、せっかく駅弁のプロとの旅!
行きの電車で食べる駅弁もセレクトしてもらいました。

今回望月さんが選んだのは、崎陽軒の『シウマイ弁当』です。
一度は食べたことがある方も多い超有名駅弁ですが、東京工場で作られたものと横浜の工場で作られたもので違いがあることはご存知でしょうか?
ということで、今回は東京駅と横浜駅で一つずつ購入してみました。
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▲左:横浜工場、右:東京工場

この違いについて望月さんにうかがうと、中身ではなく外装とのこと。
東京工場生産分では紙のかぶせ蓋を使用しているのに対し、横浜工場生産分では経木の蓋を掛け紙と一緒に綴じ紐を使ってとめています。
これは生産の効率化によるもので、この独自の綴じ方ができる“綴じ紐職人”は横浜工場にしかいないそうです。
(余談ですが、崎陽軒の新入社員には“綴じ紐研修”があるそう!)

中身についてはどちらも同じなのですが、以前は横浜工場生産分の経木で水分が調整されたごはんが好みの方もいたとか。
今では東京工場生産分にも紙蓋の下に経木の蓋が入れられています。
確かにどちらもごはんが絶妙な水分量でもちもちとして美味!

ちなみに東京駅⇔修善寺駅間での望月さんおすすめの駅弁撮影スポットは、小田原・熱海間の根府川付近で相模湾を背景に。
車内で撮影する時は、窓枠で眺望が邪魔されない窓際の席に座り、直射日光を避けてくださいとのこと。

このために旅する価値あり、寿司駅弁の最高峰『武士のあじ寿司』

駅弁談義に花を咲かせていると、あっという間に電車は修善寺駅に到着しました。

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修善寺は、静岡県伊豆市に位置する伊豆最古の温泉街です。
「伊豆の小京都」とも呼ばれ、地名の由来となった修禅寺や風情ある竹林の小怪など、見どころ満載の人気の観光地です。
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目指すは、ここ修善寺で昭和40年代から駅弁を手掛けている『舞寿し』さん。
こちらの名物駅弁が望月さんに寿司駅弁の最高峰と言わしめた、『武士(たけし)のあじ寿司』です!

望月さんによれば、寿司駅弁の始まりは明治時代にさかのぼるとのこと。
当時は稲荷寿司や助六が中心で、その後押し寿司が登場、平成に入ったあたりからはご当地ものや鮮度にこだわった駅弁も出てきたそうです。

『武士のあじ寿司』ができたのは、今から20年あまり前。
お店を切り盛りされているのは、武士東勢(たけし とうせい)さん、お母様、奥様の3人。
お母様は御年86歳にして、修善寺駅にある販売所で店番をしていらっしゃいます!
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ご主人とお母さん.jpg

こちらのお店の前身はお寿司屋さん。
武士さんのお父様が亡くなった後も、お母様一人でお寿司を握っていた時期もあったそう。
しかし当時は「女が握った寿司は食えない!」なんていう方もいて、徐々に客足が遠のいていったとか……。
その時に奥様のアイデアで始まったのが寿司の駅弁の販売でした。
今では旅行者から地元の方まで魅了する、修善寺の名物駅弁となっています!

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多くの鯵寿司の駅弁では、鯵は酢で強めに締められています。
しかし武士さんのところでは、季節や魚の個体差によって酢に漬ける時間や塩加減を調整し、駅弁ではなかなか味わうことのできないフレッシュ感を残しています。
さらに鯵の骨は一本一本で手で抜いているそう!
多い時で一日100食は出る人気の駅弁をご家族だけで作られているのは驚きです。
まさに寿司屋さんの丁寧な手仕事が活かされた駅弁と言えます。

寿司飯には静岡産コシヒカリ、その上に伊豆・松崎の桜葉、そして酢で締めた鯵も沼津産。
さらに伊豆・修善寺の醤油と伊豆・天城の生わさびが添えられた、地場産のものが贅沢に盛り込まれた駅弁です。

あじ寿司4.jpg

今回は、駅前の厨房に併設された『駅弁カフェ たけしで出来たてのお弁当をいただきました。

お弁当箱は、越前和紙で作られています。
丁寧に下ごしらえされた鰺がきれいに並べられ、銀色に輝く皮目と艶感のある身のコントラストが目を引きます。
まずは何もつけずに鯵だけをいただき、やさしい酢加減で閉じ込められた新鮮な鯵の旨味をじっくりと味わいます。
その後はお好みで醤油やレモンでご賞味あれ。

1あじ寿司.jpg

蓋を開けるとふわっと桜の葉の良い香り!

日本の食文化“駅弁”を守りたい

旅の終わりに、望月さんに駅弁に対する想いをうかがいました。

「駅弁の楽しみは蓋を開ける前から始まります。
列車のテーブルを出して、駅弁を置いて、愛でて、掛け紙の紐を解いて。
そして蓋を開ける瞬間はドラマがある。
そこまでが全てストーリーであり、これが日本の伝統である駅弁文化なんです。

望月さんとシュウマイ弁当.jpg

多い時で300社以上ともいわれた駅弁屋さんも、今では100社を切っています。
駅弁の車内販売の廃止、新幹線の高速化、在来線の通勤タイプ車両の増加、さらには“車内での飲食”そのものへの様々な意見など、ここへきて駅弁文化は厳しい状況にさらされていると思います。

私が取材を続けている理由は、駅弁が130年以上続いている日本の食文化であるということを伝えることに価値があると考えているからなんです。
この食文化がなくならないように様々な切り口で魅力を伝えることで、次の世代に繋いでいきたいですね」

日本の伝統の食文化“駅弁
小さな箱の中に各地の食文化をヴィジュアルと味で見事に表現した日本の宝をお供に旅に出てみませんか?


プロフィール:
望月 崇史 Takafumi Mochizuki
フリーランスライター。
ニッポン放送のウェブサイト『ライター望月の駅弁膝栗毛
駅弁ブログ『ライター望月の駅弁いい気分


※「駅弁は食文化の玉手箱!」駅弁ライター望月さんと探る駅弁シズル・前編 の記事はこちら

著者プロフィール

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株式会社ヒュー
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