「南部鉄器の粋を尽くしたごはん釜」老舗料理道具屋『釜浅商店』・前編

料理道具の聖地、合羽橋。世界的に見てもこれだけ料理道具の専門店が集まる場所は珍しく、プロ・アマ問わず国内外から多くの人が訪れています。
その商店街の中心部に今年創業111年を迎える料理道具屋『釜浅商店』はあります。2019年7月1日に新商品『釜浅のごはん釜 3合炊』を発売した、4代目代表・熊澤大介さんにうかがったお話を全2回にわたってご紹介します。
前編ではお店の歴史から新商品についてうかがいました。

合羽橋で111年! 『釜浅商店』のはじまり

――まずは『釜浅商店』について教えてください。

熊澤大介さん(以下敬称略) 『釜浅商店』は明治41年創業、今年で111年目の料理道具屋です。
始めたのは曾祖父で、僕は4代目になります。
場所はずっと変わらずこの合羽橋で、昔は主に「釜」を扱っており、浅草にある釜屋ということが屋号の『釜浅商店』の由来になっています。
時代とともに扱う商品も増え、料理道具全般を幅広く扱うようになり、現在では包丁も主力商品の一つとなっています。
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4代目が掲げたリブランディングのコンセプトは“良理道具”

――長い歴史を刻んできた『釜浅商店』の4代目として、どんなことに取り組まれていらっしゃるのでしょう?

熊澤 料理道具屋ということは今もこれからも変わりませんし、扱っているものもそれほど大きくは変わっていません。
古くから廃れずに残っているものはちゃんとした理由があるからこそ残っているわけで、その理由をきちんと伝えていくことによって、そのものの本質や良さを理解してもらうことができると考えました。
そこで2011年に行ったことが、リブランディングです。
コンセプトは、“良理道具”。
良い“理(ことわり)”がある道具をより丁寧に、分かりやすく伝えていくということを改めて大切に考えるようになりました。

――そうした動きの裏にはどんな背景があるのでしょう?

熊澤 来店される客層の変化ですね。
僕が子供の頃はプロの料理人の方しか来店されませんでしたが、今では一般の方から海外の方まで幅広くお越しいただいています。
今まではただ並べておけばよかった商品も、まず使い方から説明をする必要が出てきたんです。
どの商品にも思い入れがありますし、胸を張って勧められるものしか扱っていないので、一人でも多くの方にそのものの良さを知ってもらえるように努めています。

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開発期間3年、『釜浅のごはん釜』に注目

――先日、新商品『釜浅のごはん釜 3合炊』の発表会に参加しました。
炊きたてはもちろん、冷めてもおいしいごはんが炊けますね!
ごはんが炊き上がるまで、あれだけ集中した時間は印象深かったです。
こういうリアルな体験で得られる感動は、ネットの動画では伝え切れないなと思いました。
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▲2019年7月1日発売、『釜浅のごはん釜 3合炊』の発表会の様子。コンセプトは、「鉄の良さを引き出し、おいしくごはんを炊く釜」。南部鉄器の産地・岩手県盛岡市と釜蓋を作る長野県の生産者の方と一緒に3年の開発期間を経て誕生した新商品です。
イベントでは、南部鉄器の魅力についてお話を聞き、ごはんが炊ける瞬間を見て、試食する、五感でごはん釜の魅力を体験できるイベントでした!

熊澤 そうですね。
道具そのものについても長く付き合うものだからこそ、やはり手にとってみないと分からないと思うんです。

――でも一つの商品を長く使われるということは、商売としてはどうなのでしょう?

熊澤 よく言われるんですよね。
先日も佃煮屋さんからかまどの交換依頼があって、前回は30年前だったとか。
食器屋さんは皿やグラスが割れるたびに買い替えてくれるからいいな、なんて(笑)。
でもうちの商品は30年に1回しか購入しなくても、他の道具を買ってくれたり、他のお店の人にうちの道具を勧めてくれたりするんです。
こうやって信頼関係は築かれていくんですよね。

商品名を変えたら大ヒット! 発想の転換で再び注目される商品

――イベントで南部鉄器の魅力について製造工程からじっくりお話をうかがうことで、料理道具は職人の高い技術力が活かされた伝統工芸品であることが分かりました。
また、熊澤さんの著書『創業明治41年 釜浅商店の「料理道具」案内』の中のエピソードからも、料理道具屋として日々職人の方との対話を重ねられていることが伝わってきます。
『釜浅商店』は日本の伝統文化を守り、伝えているのですね。

熊澤 料理道具は今の時代、その気になれば100円ショップでも揃ってしまうんです。
そうじゃない価格のものにはそれなりの理由がある。
それはきちんと伝えていかないと無くなっていってしまうし、そういうものに触れなくても生きていける時代はすごく寂しいと思うんです。
その時の伝え方については、時代に合わせて柔軟に変化させていく必要があります。
たとえば今うちで売れている南部鉄器の浅鍋があるんですが、実はこれ、30年以上前に父親がデザインして作ったすき焼き鍋なんです。
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当時は『南部手付きスキ鍋』という商品名だったんですが、“すき鍋”って言っちゃうとすき焼きしかイメージできないから使い方に広がりがないんですよ。
だけど自宅では鉄板代わりに何か焼いたり、オーブン皿として使ったりしていたので、本当はいろいろなものに使えるのにと思っていたんです。
そこで今から4、5年前にもう一度この商品にフォーカスし、こういう使い方もできるということを伝えるためにレシピブックを付け、パッケージも作ってギフトでも売れるようにしたんです。
その時に商品名も『南部浅鍋』に変えました。
そうしたら商品自体は全く同じものでも、表現方法を変えただけで今ではうちの主力商品の一つになっているんです。
長く続けていくということは、ただ昔から同じことをやり続ければいいのではないんですよね。
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伝統を守りながら、時代に合わせて工夫を凝らすことで世代を越えて愛され続けている『釜浅商店』。
後編では海外での活動や、道具とシズルの関係についてうかがいました。
次回もお楽しみに!


INFO:
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