未来の担い手を食の力で育む『ひより保育園』の話・前編

2017年4月、鹿児島県霧島市に誕生した『ひより保育園』
なぜシズルブログで保育園をご紹介するのかと言えば、こちらの保育園で行われている「食」を通した独自の教育が「ちょっとすごいらしい」という噂を耳にしたから。
なんと園児たちが味噌を仕込み、包丁を持って料理をすることもあるそう!
代表を務めるのは、古川理沙さん。
2007年に出産祝いの品物を取り扱うネットショップを始め、自身の子育て経験を活かして企画・開発した商品は大ヒット。
その後保育園事業を始め、現在は鹿児島県内で2つの保育園を運営されています。
前編では保育園のレポート、後編では古川さんのインタビューを紹介します。

『ひより保育園』の一日

『ひより保育園』を訪れたのは、6月の終わりの午前11時頃。
園庭からは園児たちの元気な声が聞こえます。
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庭には大きな石や築山、様々な草木や畑があります。
畑にはトマトやナス、とうもろこしなどの夏野菜がなり、収穫の時を待っています。
そこで園児たちは広い敷地内をみんな思い思いに駆け巡ります。
中には園児たちと一緒に泥だらけになっている先生も!
先生たちは、「みんな仲良くね」「話し合って決めてね」など声をかけながら園児たちをやさしく見守ります。
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保育園の一日は、登園してきた子どもたちが集まり、朝の会で今日は何をするかを話し合うところから始まります。
ひより保育園では、子どもたちの発達に即した年間や月間のカリキュラムはありますが、その日にやることは子どもたちと先生で話し合って決めるそうです。
朝の会が終わると、自分たちで決めた活動(戸外遊び、制作、園外保育など)を行います。

先生は話し合いや活動の最中、子どもたちの言葉や興味を拾い上げながら、この活動がどのように展開していくか、どのようにそれを支援するかを考え、子どもたちが遊びの中で育つ環境をつくっています。

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昼食の時間は、園内の給食室で手作りされた給食をじっくりと時間をかけていただきます。
その後はお昼寝や絵本を読んで過ごします。
帰りの会では、皆で今日一日を振り返り、明日以降何をするのか考えます。
そしてお迎えが来た園児から順々に帰宅します。

園児も先生も上手に助け合う「ヘルプミーカード」

園内を見学させていただきました。
エントランスにあるのは、「ヘルプミーカード」と呼ばれるこの園独自の工夫。
このカードに誰でも自由に助けてほしいことを記入します。
たとえば園児からは、「園にあるブルーベリーの実が紫色になったら、シロップを作ってかき氷とヨーグルトにかけて食べたい」という要望。
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何かやりたいことがあればこうして賛同してくれる人や協力してくれる人を集います。
また、ヘルプミーカードを書くのは園児だけではありません。
ある先生からは「きぬさやの筋取りを手伝ってください」というお願いもありました。
園児たちはこうして上手に助けを求める力を養っていきます。

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遠足の費用は園児たち自ら稼ぎます!

ヘルプミーカードを使って、ある時園児から「遠足に行きたい」という声が上がったそう。
『ひより保育園』では、年度初めに決まっている行事は運動会と発表会、そして卒園式の日程だけ。
その他のものは、その年ごとに園児や先生たちが自ら計画を立てて決めるそうです。
そして驚いたことに、遠足に行くための交通費や、行った先の施設の入場料も園児たち自ら稼ぎます!
ではどうやって稼ぐのか。
ある年はみんなで話し合った結果、1dayのレストランを開くことになりました。
お客さんは先生や保育園の上の階のレストラン建設会社の人など。
45人分用意した食券は、レストラン当日の一週間前に販売を開始したところ即日完売!
食券が買えなかった人たちからは「私も食べたかった!」という声があがり、この後別メニューで合計3回も開催されました。
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レストランのメニューだけではなく、作業のためのグループ分けや調理のための時間配分なども園児たちが考えて行い、先生はほとんど介入しません。

古川さんが当日様子を見ていると、ある園児が包丁でちょっと手を切ってしまいました。
泣いて作業を止めてしまうのかなと思ったら、担任のところに走って行き、「時間内に間に合わなくなるから早く血を止めてください!」と言ったそう!
古川さんは、自分で立てた目標と「やりたい」という気持ちがあれば、小さい子供でもこんなに自主的に動けるんだと驚いたそうです。
それと同時に、すぐに口を出したり手を貸したりせずに、じっと見守ることができる職員の “待つ力”もすごいと言います。
完成された料理は、園児たちだけで作ったとはとても思えないほどの完成度だったとか。

地元の食材と食文化を学び、生きる力を養う給食

お話をうかがっていると、給食室からおいしそうな香りが漂ってきました。
こちらの保育園の給食は、丁寧に調理された家庭料理が基本。
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加工品は使わず、昔ながらの製法で作られた調味料で味付けした旬の食材のおいしさを味わえる、心も身体もホッとするような給食を目指しています。
食材についてもまずは地元・霧島のもの、なければ鹿児島、九州、国産の順で探しているそうです。

一ヵ月先まで綿密に計画が立てられていますが、園庭の畑で野菜が収穫できたり、農家さんからいただきものをした時はみんなで料理をして給食の一品に加えるなど、その都度内容を変更しているそうです。

料理の中身はもちろん、食器にもこだわっています。
食器は長崎県の波佐見焼、スプーンやフォークは燕三条のもの。
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まだ離乳食の0歳から陶磁器のお皿を使い、2歳からは自分で配膳もします。
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また、食事の様子を見ていてもびっくり。
誰一人走り回ったり、食べ物で遊んだりすることなく、食べ終わるまできちんと座って食事をします。

外でいっぱい遊んでお腹ぺこぺこの園児たちの食べっぷりは見ていて気持ち良いぐらい。
食事の時間はゆっくりと取られているので、先生は園児に早く食べさせようとする必要もありませんし、先生も腰を据えてしっかりと食事の時間を楽しんでいるのもこちらの保育園ならではの光景です。



次回は鹿児島市内にある姉妹校『そらのまちほいくえん』のお話や、古川さんが保育園を始められた経緯についてうかがったインタビューをご紹介します。
どうぞお楽しみに。

INFO:


『ひより保育園』の食育活動をベースに、園外の方にも料理の楽しさを味わっていただきたいという想いから企画されたレシピ本が完成しました! 
幼稚園や保育園に通う子どもたちでも、パッと見て内容が理解しやすいよう、現場の先生たちのアイディアをぎゅっと詰め込んでいます。
詳細はこちら

著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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