ネパールの小さな村から生まれた究極のピーナッツバター

百貨店での食のイベントでたまたま通りかかったブース。
販売されていたのはメイドインネパールのピーナッツバターです。
試食させてもらうと、今まで味わったことのないような豊潤な香りと味わいが広がります!
ブースの中にいらしたのは、株式会社SANCHAI代表・仲 琴舞貴(なか ことぶき)さん。
なぜネパール?
なぜピーナッツバター?
仲さんにお話をうかがいました。

偶然の出会いから始まったピーナッツバター事業

――仲さんはどんな事業を行っているのですか?

仲琴舞貴さん(以下敬称略) ネパールに現地法人Bipana Inc.を立ち上げて『SANCHAI』というブランド名でメイドインネパールのピーナッツバターを製造しています。
また、日本では2019年3月に株式会社SANCHAIを設立し、SANCHAIピーナッツバターの輸入・販売を行っています。
このピーナッツバターは、ネパールのコタンというヒマラヤの麓にある山岳地帯で作っています。
私がリサーチで初めて現地を訪れたのが、2016年10月。
その後、2017年5月に現地法人を設立、2017年12月にコタンに工場を立ち上げました。
まず現地法人を立ち上げたのは、現地の方が主体に運営することで「自分たちがつくりあげる会社」という意識が高まるんじゃないかと考えたからです。

工場では現地の女性たちが働いています。
製造スタートから1年間はネパール国内のみで販売をしていましたが、まだネパールは市場が成熟していないので、クオリティを高く保って価格は下げないという、うちの商品のコンセプトにとってはまだまだ難しい市場なんです。
そこで日本でも会社を立ち上げました。

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――ネパールまでリサーチに行かれたきっかけは?

 私はもともとIoTコミュニケ―ションツールを作っている会社にいました。
そこでネパールのコタンの子供たちへのドネーション(寄付)のシステムとくっつけてプロジェクト化するという目的で訪れたことがきっかけです。
コタンはほとんどの家庭がお父さんたちの出稼ぎで生計を立てているような、産業のない貧しいエリアでした。
ピーナッツの栽培はしていても、流通させずにほとんど全部自分たちで食べてしまっていたんです。
コタンは首都カトマンズからジープで8時間近くかかる場所にあるので、運ぶコストを考えると自給自足の糧にするしかなかったんですよね。
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そこで、このピーナッツを使った産業ができないかと考えて、ピーナッツバターの製造と販売に挑戦をすることにしました。
まずは、日本のピーナッツバターを持って現地の農家さんを一軒一軒回って食べてもらうという地道な活動から始めました。
そうしたら「なんておいしいの!」って感激してくれて、現地の方もピーナッツバター作りに賛同してくれたんです。

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ネパールの小さな村で見つけたダイヤの原石

――それで現地に工場をつくったんですね。

 でも当時、このエリアには電気も通ってなかったんです……。
そんなところでどうやって作ろうか考えていた時、現地の女の子が「これで作れるんじゃないかしら?」と持ってきたものがあって。
それは大きな石の塊でした!
彼女たちは日頃からその石の道具を使ってスパイスを潰しているそうで、同じ要領でピーナッツを潰してくれました。
あっという間にピーナッツバターはできたのですが、これでは量産は無理ですし、テクスチャーも荒くていまいちおいしくなかったんですよね。
これは前途多難だな……と思っていましたが、工場オープンの3ヶ月前に奇跡的に送電開始!
無事にミキサーが使えるようになり、とろっとろのおいしいピーナッツバターができました。

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製品化にはフードプランナーの桑折敦子さんにご協力いただきました。
彼女はこちらの要望通りの味を作り出してくれますし、バシッと味を決めてさらにおいしくしてくれるので絶大な信頼を置いています。
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完成して分かったことは、私たちが使っている現地のピーナッツがハイクオリティだということ。
現地の人からは「ローカルピーナッツ」と呼ばれていて、品種改良されていないものだと聞いています。
また、乾燥が激しい、厳しい自然環境の中で育ったからか、通常のピーナッツに比べてたんぱく質が豊富であるなど、調べるうちにピーナッツ自体の価値に気がつきました。

――ダイヤの原石を見つけたような話ですね!

 私が食品メーカーを始めたのは、お話ししたように偶然でした。
元々興味があったのは、表面化できていない価値を可視化すること。
たとえばこのコタンのピーナッツは産業化されてないからこそ、たまたま原種に近い希少な品種や無農薬の土地が残っていました。
一方では産業もない貧しいエリアというネガティブ要素なのに、違う見方をすると他にはない価値が生まれます。
まるで時代が変化する中で土の中で眠っていた埋蔵金のようなものですよね。

現地の方の生活を豊かにするピーナッツバター

――工場を稼働し始めてみて、働く人たちの変化は?

 今まで家事か農業の手伝いしかしてこなかった現地の女性たちが、生まれて初めて自分でお金を稼げるようになったことは大きい変化だったようです。
先日工場で働く40歳の女性と話していたら、生まれて初めて自分が欲しいと思ったものをためらいなく買えたって喜んでいました!
彼女たちは仕事があることが喜びとなって、人生が豊かに変わったと口々に言います。
商品を購入してくれた日本の消費者たちが商品の美味しさや彼女たちの変化に感動してくれ、さらに工場の女性たちにとっては、自分たちが作ったものを喜んでくれる方がいることがモチベーションにつながる。
また、その様子は消費者にとっても嬉しいものです。
このようにピーナッツバターを通して他者の喜びを作り出す循環が生まれればいいなと思います。

また、彼女たちはちゃんとした教育を受けていない子がほとんどですが、モチベーションも高く、歩留まりや効率化も自分たちで工夫するなど尊敬するところばかり!
世界には彼女たちのようにチャンスさえあれば自分で人生を変えていける、能力の高い方たちがたくさんいると思うので、彼女たちがモデルとなって世界に広がっていってほしいですね。

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こういう感動を与えられることは企業価値だなと思います。
私が会社を始めたきっかけは、現地の方たちの生活を豊かにしたいという想いありき、人ありきなんです。
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次なる夢、目指すはヒマラヤ!

――ピーナッツバターを通して誰かの人生を変えるなんて素晴らしいことですね!
なかなか経験できない様々な形で食に関わる中で、仲さんが考えるシズル感とは何でしょう?

 食や味には正解がないと思うんです。
だからこそ味だけじゃなくて商品の背景にあるもの全てがシズルにつながるのではないかと。
それはうちの場合だと希少性であったり、たまたま変わらずに受け継がれてきた時間という価値であったり、現地の方たちのストーリーなんだと思います。

――それは表面化できていない価値を可視化することともつながりますね。
これから先について、どんなことを考えていらっしゃいますか?

まずはたくさんの方たちにこのピーナッツバターのおいしさを届けて、コタンの工場や農家で働く方々のストーリーやネパールの素晴らしい自然について知ってもらいたいです。
一年間ネパールだけで販売していた時は、彼女たちの生産能力よりも抑えて生産してもらっていました。
だから工場に行く度に、「私たちはもっと作れるから、早く売ってきて!」と言われていて(笑)。
今回日本で輸出をスタートしたのは、自分自身が一番知っているマーケットですし、ブランディングもしやすいからですが、来年からはEUにも展開していければと考えています。

ネパールはアジアでも一番貧しい国に位置付けられていて、だからこそポテンシャルがすごくあると思っています。
私たちが出会ったピーナッツのようなダイヤの原石がたくさんあると思うんです。
特にヒマラヤ山脈という立地にはそこにしかないものもたくさんあるはずですし、アグリビジネスの可能性がある国なんですよね。
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そこで今考えているのは、エナジーバー(シリアルやドライフルーツやナッツなどをあわせて固めた栄養補助食品)を作ることです。
去年半年間は経産省の途上国支援補助金の制度を利用してエナジーバーの開発に取り組み、レシピ開発までは終わらせました。
協力してもらったのは、福岡の『Wine & Sweets tsumons』というお店のオーナー兼スイーツデザイナーの香月友紀さんです。
彼女の作る焼き菓子は抜群においしいんですよ。

――なぜエナジーバーを作ろうと?

 ピーナッツバターだけでは将来的に製造量にリミットがあるため、それをベースにした他の商品を作らないと継続的なビジネスの広がりはないと考えました。
そこで思いついたのが、ヒマラヤのトレッカー向けにエナジーバーを作ることです。
ヒマラヤは名だたるトレッカーが目指してきますし、トレッカーという明確なターゲットがいることで世界に展開しやすいかなと。
あとは工場をどうつくるかですが、私にはない知識や技術をお持ちの方々がどんどん集まってきてとてもおもしろいですよ!
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ストーリーのあるものは共感を呼び、フェアトレードは現地の新たな価値を発掘し人々の暮らしを向上させ自信と変化を与えます。
コタン自慢のピーナッツバターをぜひご賞味あれ!

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株式会社ヒュー
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