鹿児島の味を支えて100年、『サクラカネヨ』の魅惑の甘い醤油

九州の醤油は甘い。
九州を旅行して、刺身と共に出される醤油の甘さに驚かれた方もいるかもしれません。
しかしこの甘さにはきっと理由があり、甘さゆえの楽しみ方があるはず!
鹿児島県いちき串木野市でもうすぐ創業100年、『サクラカネヨ』のブランドで知られる醤油と味噌の製造販売を行う、吉村醸造株式会社4代目・吉村康一郎さんにお話をうかがいました。

甘さの秘密はここにあり、醤油工場へ潜入


――まずは吉村醸造株式会社について教えてください。


吉村康一郎さん(以下敬称略) 弊社の創業は1927年で、『サクラカネヨ』のブランド名で醤油と味噌の製造販売を行っています。
僕は4代目にあたります。

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▲『サクラカネヨ』の商品説明をする吉村さん

――こちらの定番商品は何でしょう?

吉村 『こいくち 甘露』です。
大豆、麦、塩、水だけで一年以上熟成させた生揚げ醤油に、コクのあるうま味と奥深い甘味を加えてバランスよく仕上げた商品です。

――やはりこちらでは醤油は甘いんですね!
なぜ九州の醤油は甘いのでしょう? 

吉村 いろいろな説がありますが鹿児島で言えば、ひとつは単純に暑いから甘いものを欲して甘味を足しているという説があります。
もうひとつは、サトウキビの生産が盛んで砂糖が手に入りやすかったからという説も。
また、鹿児島は料理の味付けが甘いので、それなら醤油自体に甘味を入れてしまおうということをあるメーカーが思いついたとも言われています。

――甘味を足すということはベースとなる醤油は甘くない?

吉村 そうですね、ベースは塩辛い醤油で、そこに各メーカーが独自の配合で甘味を足しています。
こちらが醤油を味付けする工程です。
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ベースの醤油に加える砂糖や塩の配合はデータ化され、管理しています。
調合された醤油は温度を90度近くまで上げて殺菌しながら充填して出荷します。


――鹿児島がベースとなる醤油を一ヶ所でつくるようになった理由は?

吉村 各社でつくるとそれだけコストがかかって値段が上がりますし、一ヶ所でつくることで品質も安定して鹿児島の味を守ることができるためと言われています。
これは60年ぐらい前から国の政策で始まった取り組みです。
大元の醤油は鹿児島県内の隼人という場所からタンクローリーで運ばれてきます。

醤油の概念を覆す新商品が続々と誕生するラボ


吉村 こちらは研究室にキッチンスタジオを併設した『サクラカネヨラボラトリー』、通称『サクラボ』です。
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商品開発を行っているテストキッチンで、毎年数種類は新商品をつくっています。
ただ自社だけでは量産が難しいので、今後はうちの醤油を使ったラーメンや餃子など委託製造についても考えています。

――なんだかカレー屋さんっぽい香りがします!

吉村 こちらで粉末タイプの醤油『薫る粉醤油』をつくっていて、今はクミンを調合していたところです。
その他にバジルや五香粉、プレーンのものもあります。

――空間も素敵ですね。

吉村 内装デザインは、鹿児島出身の中原慎一郎さんを中心に結成されたデザインチーム『ランドスケーププロダクツ』にお願いしました。
ラボでは、商品開発の他に料理教室も不定期で開催しています。

――今までどんな料理教室が行われたのでしょう?

吉村 東京・代々木上原にある『按田餃子』元店長の渡邊和泉さんをゲストにお招きして、肉まんやスープなど家庭で簡単に作れる料理教室を開催しました。

SNSで話題沸騰! 甘じょっぱさがたまらない醤油ソフトクリーム


――こちらは直売所ですね。
おしゃれです!

吉村 ここ『サクラカネヨ直売所』は、元々は江戸時代に建てられた米蔵で、ラボと同じく『ランドスケーププロダクツ』にデザインをお願いしました。
醤油と味噌の量り売りが出来るカウンターや、鹿児島のものを扱った物販棚を設置しています。
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▲こちらは『オッのコンボ』。鹿児島の言葉で「起き上がり小法師」という意味で、大黒様の奥方で台所の神様と言われているそう。『サクラカネヨ』の商品発送用の段ボールにも描かれています

奥のイートインスペースでは、『醤油ソフトクリーム』などのスイーツやドリンクも提供しています。
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この直売所ができる前は事務所で商品の販売を行っていて、お客さんは近所の方やご年配の方が大半でしたが、今ではソフトクリーム目当てで遠方から若い方も来てくれるようになりました。

――若い方が集まる醤油屋さんはなかなかないですよね!

吉村 ソフトクリーム以外にも鹿児島で古くから愛されている『しんこだんご』も人気ですよ。
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――初めて名前を聞くおだんごです。

吉村 鹿児島にある深固院(しんこいん)というお寺のお坊さんがつくったおだんごだと言われています。
いわゆる醤油だんごですが、『こいくち 甘露』をたれに使っているので甘辛く、これがまた香ばしく焼けたおだんごと相性抜群なんです!

この直売所の隣の倉庫では3、4年前からマルシェもやっています。
3ヶ月に1回のペースで今までに30回ほど開催していて、毎回鹿児島市内の方を中心に1500名ぐらいの方にお越しいただいています。
自社商品の販売と、その他に花屋さんやパン屋さん、農家の方など約30の出店があります。 
そこでおだんごの販売も行っているのですが、多い日で1日に1500本出ることもありますよ。

創業100周年に向けた新たな挑戦


――最近新しく始められたことはありますか?

吉村 テストマーケティングの場として、2018年7月に鹿児島市内にある鹿児島県歴史資料センター黎明館の1階にカフェレストラン『城山シーズニング』をオープンしました。
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こちらには『つるまるキッチン』と『サクラカネヨ直売所』の2つのブースがあります。
『つるまるキッチン』は鹿児島の食材・野菜を中心とした料理や、いちき串木野市にある地鶏放し飼い牧場『ヤブサメファーム』の卵を使用した卵かけごはんなどが並ぶビュッフェスタイルのレストランです。
また、鹿児島の調味料を発信する場として、『サクラカネヨ』の各種調味料もお試しできますよ。
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『城山シーズニング』にある『サクラカネヨ直売所』では、食や工芸品など鹿児島の物を中心に、展示会やワークショップも開催しています。

――醤油からどんどん新しいものが生まれていきますね!
次のステップとして考えられていることは?

吉村 うちは8年後に創業100周年を迎えるので、今まさに構想を練っているところです。
いつか東京にもお店を出したいですね。

地元愛に溢れる『サクラカネヨ』の醤油から生まれる商品やビジネス。
甘いだけじゃない醤油の魅力をぜひ味わってみてください!

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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