痺れるほどおいしい野菜を作りたい 『のうえんこえる』城月直樹さんインタビュー前編

朝採れの茅ケ崎産野菜が並ぶ直売所

秋晴れの11月。湘南にある『熊澤酒蔵』内にオープンしている野菜の直売所にやってきました。
木立のようなエントランスをぬけ、酒蔵、ベーカリー、レストランなどに囲まれている広いオープンテラスへ。
「茅ケ崎産・無農薬・無化学肥料」と書かれた看板のそばに置かれた大きなテーブルに、次々にトラックから運ばれてくる野菜たち。

すべて並べ終えるまえに、ちらほらとお客さんが集まってきます。

まるまるとしたキャベツ、スーパーではちょっと見かけないサイズのセロリ、
ロメインレタスに、青々したケール、パクチー、ズッキーニ、フェンネル、土がついた生姜やゴボウ。
20種類以上の野菜はどれもしゃっきりして、そのみずみずしさは見ただけでも伝わってきます。

この野菜を作っているのは藤沢・茅ケ崎の北部で『のうえんこえる』を営む園主の城月直樹さん。
茅ケ崎にある畑を奥さんと2人で耕し、地元の飲食店や直売所で野菜を販売しています。

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城月さんが並べた野菜に値札を貼り終わる前に、
「こないだの野菜、こんな風に料理したらおいしかった」
と言いながら早速買っていくお客さん。他にも次々と
「ケールってどうやって食べたらおいしいですか」
「金時草ってどう料理するの」と食べ方を尋ねるお客さんがやってきます。


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購入された野菜を新聞紙に包みながら
「意外とひき肉と一緒にいためてもおいしいですよ」
「この野菜は、塩とゴマ油でナムルっぽくしても」
「さっと茹でてポン酢で」と城月さん。
聞いているだけでも、お腹がすいてくるような会話が聞こえてきました。

野菜を育てた人から直接、その状態を聞いて、
食べ方まで教えてもらえるのは直売所ならではの醍醐味でもあります。

城月さん(以下敬称略)「畑で採れたものは僕も家で料理をしています。
どんな風に切ったら食べやすい、とか自分でやってみないとわからないじゃないですか。
直売所では同時にお客さんからもこれが美味しかった、こんな風に料理した、
といろんな感想がもらえます。リアクションがすぐにわかるのがいいところです」

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▲毎週水曜の熊澤酒蔵の他、地元で開催されるマルシェなど、出店は地元密着でやっているそうです。

『のうえんこえる』は肥える、超える

『のうえんこえる』、という名前には「土が肥える」と、「業種を“超えて”繋がっていく」という意味が込められているそうです。

城月「農業だけじゃない、いろんな業種と掛け合わせて発展させていきたいという思いがずっとあります」

城月さんがここ茅ケ崎で農園を営むのも、業種をこえたコミュニティがあるから。
例えば直売所がある熊澤酒蔵では、城月さんの他にも地域の農家さんが曜日代わりで直売所をオープンさせています。
ここで売れ残った野菜があれば、隣接するレストランなどが買い取ってくれるのでロスや出店者の負担もありません。
「熊澤酒蔵さんは、僕がここで農園をはじめた時、野菜が育つのを待つ冬の期間はお酒をつくるアルバイトもさせてもらいました」

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▲熊澤酒蔵の直売所は毎週、月・水・金にオープン。『のうえんこえる』は毎週水曜日を担当。その他、マルシェやイベントなども企画されている。

広告業界からの転身

実はもともと城月さんは私たちヒューと同じアマナグループで撮影のプロデューサーをしていました。
会社を辞めてから始めた農業は来年に10年の節目を迎えることになります。

城月「自分でも一番びっくりです。まさか10年後も農業を続けているなんて」
日に焼けた今の城月さんの表情と、10年前に一緒に仕事をしていた頃の
表情は変わっていないはずなのに、農業の話をしている時はまるで違うようにも感じます。

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当時、城月さんは忙しく夜遅くまで残業、お酒を飲みにいく機会も多く、
お昼ご飯には牛丼やラーメンを急いで食べて・・・という毎日でした。

城月「農業を始めて1年目で体はすっかり軽くなりました。
広告業界にいた頃は楽しかったけれど、生活リズムや食事はひどかった。たまに野菜を食べてもパックに入った簡単なものだけ。」
太陽が昇れば仕事、沈めば家に帰る。畑で育った野菜を食べていれば自然と体から毒素が抜けたような感覚があったそうです。

城月「あと、良い意味で敏感にもなりました。
たとえばお酒を飲み過ぎたり、味が濃いラーメンなんかを食べると翌日には体が調子わるいなーと素直に感じます」

痺れるほどおいしい野菜を作るために

最初は藤沢にある有機農家で研修、
その後農業法人で働きながらイチから勉強していった城月さん。
この10年は決して平坦な道のりではありませんでした。

城月「もちろん、何度もやめようと思ったことはあります。
熱射病になって40度の熱が続いたこともあるし、ぎっくり腰も何度かしているし。
それでも忘れられないのは農家で研修を始めたばかりの頃、とことん落ち込むことがあった時、
畑に出てふとブロッコリーのわき芽を齧ったんです。今まで生のままで齧ることなんてない。
でもそれがビビっと痺れるほどおいしかった。
喉をとおって体にふわっと広がる感じ。体にその味が一体化されるような感覚さえあって、
こんな痺れる野菜を自分は作っていきたい、と強く思ったんです」

それはちょうど夕暮れ時。畑の上に広がる淡い夕日の色と一緒になって鮮明に記憶に残っているそうです。
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▲今でも育てた野菜は畑で生で齧って味見している城月さん。
「生で食べておいしいものは、絶対においしい。芋以外はほとんど生で味を確かめています」

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『のうえんこえる』の直売所には途絶えることなくお客さんがやってきます。
ほとんどの野菜が売れて落ち着いた頃、城月さんに畑へ連れていってもらいました。
次回は、無農薬・無化学肥料で耕している畑の様子や、農業を通じて行っているさまざまな取り組みについてお話をうかがいます!

撮影・浦野 航気

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