「チーズを通して我々は何が約束できるのか」 FOOD VOICE代表・今野徹さん【前編】

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清澄白河、通りから一本入った路地に北海道の形を縁どった大きな窓のお店があります。
『北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジュ チーズのこえ』
2015年のオープン以来、日本で唯一の北海道産ナチュラルチーズを
専門に取り扱うお店として注目を集める人気店です。
食の撮影を専門とするヒューのスタジオでも
「とてもいいお店だから行ってみて!」
「いろんな取り組みをしていて面白いよ」と話題になっていました。
実際にお店へ行ってみると、
並べられた様々なチーズや北海道のワイン、どれもおいしそうで目を奪われます。
ドアを開けてやってくるお客さんもお気に入りのチーズの話をしたり、
次の入荷を確認したり、お店全体がわくわくした雰囲気に包まれています。
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ギアをひとつあげて、自分が描く未来に近づくために

北海道産ナチュラルチーズ専門という他になかったスタイルが人気となり
オープン以来たくさんのメディアに取り上げられてきた『チーズのこえ』。
お店を立ち上げた代表の今野徹さんが
北海道庁、農林水産省というキャリア出身だったことも話題となりました。
「お店を始めたのは自分が描く未来像に近づくための方法論の一つ」
と話す今野さんに、お店を立ち上げた経緯や、
この場所を通して伝えたいことなどお聞きしました。

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▲お店のシンボルにもなっている北海道の形をした窓。
「チーズ屋さんで買い物をする」ことが“敷居が高い”と感じている人に対して、
少しでも入りやすくお店の中の様子を見せたい、とこの窓を作ったそうです。


ーー今野さんのご実家はもともと医者家系。
幼いころからご両親の医師という仕事を近くでみつめて
「医者がこんなに忙しいのは病気の人が多いからだ」と感じていたそう。
病気を未然に防ぐために食の大切さを実感し、
食べ物を通じて人の健康や幸せを作ることを仕事にしようと決意されたそうです。
帯広畜産大学に進学し、卒業後は北海道庁をへて農林水産省へ進みます。


今野徹さん(以下敬称略) 安定した公務員を辞めて起業するなんて思い切ったね、
と言われますが、自分ではたいした事をしたつもりはないんです。
人生をかけて何がしたいかと考えた時に、
それを実現させる方法を変えたにすぎません。一つギアを上げたという感覚です。
地方創生、地域活性、とよく聞きますが中には誰も責任をとらないようなプロジェクトもあり、
それに違和感を感じていて、
自分ですべて責任をとるような仕事がしたいと考えていました。
その一つとして北海道のチーズにすごくいいものがあって、
それを伝える場所を作ろうと、このお店を立ち上げました。
工房の皆さんには一口ずつ出資してもらいました。
ここはみんなで作るチーズ屋なんです。

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▲今野徹さん「広島カープみたいなもんですよ、みんな出資しているから当事者意識があって、一体感がある。僕自身は阪神ファンなんですけどね」


“店”という場所で実現したのは“こえの往復”


ーーこの店名にしたのは「“こえの往復”を大切にしたかったから」
会社名も“FOOD VOICE”です。
生産者からの声を届けるのと同時に、
お店と買ってくださるお客さんの声を生産者にフィードバックし、
循環させているそうです。

今野 どんな人が買ってくれて、美味しかったとか
どんなお酒とあわせたとかすべて生産者に伝えます。
そういう声の行き来があって、
生産者が刺激を感じてものづくりに研鑽してくれるといいなと思っています。
実際に「ここへ届けるチーズは一番おいしいものにしないと」と、
いい緊張感を持ってくれる生産者もいます。
この場所が、チーズを通して何が約束できるのかを常に考えています。
今回、こうして取材に来てくださるきっかけに「いいお店だよ」と誰かが伝えてくれたなら、
お店の“こえの往復”がつながっているように思えてうれしいです。

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▲店内に並ぶナチュラルチーズの数々。
「あえて、店頭に並べない商品もあるんです。
それは実際に北海道の工房を訪れてそこの景色や空気と一緒に味わってみてほしいと思うチーズもあるから」


全国の生産者さんをめぐり、点と点をつなぐ役割

ーー今野さんは2018年から毎月発行するフリーペーパー『メトロミニッツ』で、
全国のチーズ職人を紹介する『チーズ職人百人百話』という記事を企画・連載中。
ご自身がコーディネーターとなり取材チームと一緒に全国の牧場やチーズ工房を訪れています。

今野 1泊2日で4軒の取材とハードスケジュールではあるんですが、
もうこのチームで60ヵ所ほどまわっています。
全国には300くらいチーズ職人がいるんですよ。
どんな風に国産ナチュラルチーズの事をアプローチしていけばいいんだろうと考えた時に、
絶対に紙媒体がいいなと思い、メトロミニッツさんに企画を持ち込んでこの記事を連載しています。
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▲連載から2年、『メトロミニッツ』20年2月号ではチーズ特集が組まれ、全26ページにわたり国産ナチュラルチーズの魅力が伝えられました。


ーー連載は『チーズのこえ』で取り扱いがある工房を紹介するためではなく、
全国のチーズ職人さん一人ひとりを実際に訪ね、その風景や人の物語を紹介しています。
思いをもって食の現場に関わる人たちの物語ひとつひとつにスポットライトを当てる、
この連載を読んでいると、取材や記事制作の大変さと同時に、
今野さんがチーズを通して描こうとしている未来の食の風景が浮かんでくるように感じます。

今野 生産者さんに会っていろんな話をする、
それをお店に来てくれる人に伝えます。点と点をつなぐ、そのつなぎの場所だと思っています。

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撮影・加藤雄也(hue)

ーーお店で手にとったチーズから、
北海道のまだ知らない町の名前や工房の名前を知る。
そこで働く人や、その風景に思いを馳せる。
その積み重ねこそが食の未来を変えていく一歩なのかも知れません。

次回の記事では今野さんが昨年夏に新しくお店を構えた『やさいのちから』についてお話を伺います。どうぞお楽しみに。


『チーズのこえ』
東京都江東区平野1-7-7 第一近藤ビル 1F
営業時間11:00~19:00 不定休

現在スタッフを募集されているようです。
「本気で食と農から幸せを広げたいと思う方に出会いたいと思っています!」ご興味ある方はぜひお問い合わせください。
公式HP http://food-voice.com/

著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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