琥珀色に輝くみりんがつなぐ日本の食卓【日本の食の生産者訪問記】白扇酒造・後編

日本の食の生産者を訪ねる旅。
シリーズ第2回目となる今回は、岐阜県加茂郡川辺町にある白扇酒造です。
白扇酒造5代目・加藤祐基さんにうかがったお話を前後編にわたってご紹介します。
前編では、みりんと白扇酒造の歴史についてうかがいました(過去の記事はこちら)
後編では、みりんづくりの現場の様子と、これからの夢についてのお話をご紹介します。

いざ、みりんづくりの現場へ

――みりんづくりを見学するのは初めてです!
どんな工程でつくられるのでしょう?

加藤祐基さん(以下敬称略) 今日はちょうど秋に仕込んだもろみを搾る作業が始まる日なんです。
良いタイミングにいらっしゃいましたね!
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みりんはまず、蒸したもち米に米麹と本格焼酎を混ぜ合わせ、60〜90日寝かせることで糖化・熟成させてもろみをつくります。
うちではみりんだけではなく、日本酒や焼酎もつくっているので、四季醸造で9月だけ休んであとは年間を通じて醸造しています。
今日搾り始めたみりんは秋に仕込んだもので、冬には日本酒、春はまたみりん、夏には焼酎を仕込みます。
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仕込みの4日後に「踏み込み」という作業を行います。
踏み込みとは、もろみの表面の乾燥を防いで雑菌繁殖を抑えるために、もろみの表面30cmぐらいを天地返し(表面と中を入れ替え)することです。
これがけっこうな重労働です。
あとは、一週間ごとに櫂入れをして糖化を促します。

江戸時代から続く製法を継承する蔵

――こちらの部屋ではどんな作業を行っているのでしょう?

加藤 もろみを搾っています。
うちのみりんは機械を使わずに全て手作業で行っていますが、こういう伝統的なみりんのつくり方を今も行っている蔵はもうほとんど残っていません。
これは上槽という工程で、もろみを少しずつ袋に入れ、昔ながらの槽(ふね)で搾ります。
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――この袋の形やサイズには意味があるのですか?

加藤 理由のひとつは、槽の形に合うように作られています。
さらに搾り終わった後に袋の中にみりん粕が残るのですが、それを運ぶのに重たすぎると運ぶのが大変なので小分けにしています。
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みりん粕はもろみの45〜50%に当たります。
これをもし捨てなければいけないとなると大変な産業廃棄物になりますよね。
でも名古屋名産の守口大根の漬物「守口漬け」をつくる時に使うなど昔から有効活用されています。
また、別名「こぼれ梅」と言って、昔の人はおやつとしても食べていたんですよ。
うちでも季節限定で販売しています。

一滴一滴に伝統が凝縮、じっくり寝かせた味わいやいかに

――本当に少しずつ搾られているんですね。

加藤 みりんのもろみは日本酒と違い粘性が高いので搾りにも時間がかかるんです。
この1槽を搾るのに、3日はかかりますね。
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搾りたてのみりんは色も白く、まだ焼酎の香りが残っており、味わいもフレッシュです。
それが寝かせれば寝かせるほど、みりんの中のグルコースを中心とした糖類がアミノ酸とくっつくことで糖の種類が増え、甘味の味わいが変わっていくんです。
なので口の中に入れた時に「甘っ!」というよりは優しく、複雑な甘味が広がります。
さらにみりんって少し焦げたような香りがしません?
あれはアミノ酸とくっつく時に起こるメイラード反応によるもので、これはフライパンで砂糖を焦がしたような状態がタンクの中で起こることにより、色合いも熟成年数によってどんどん濃くなっていきます。
だから3年で琥珀色、10年も経つと真っ黒になるんです!
白扇酒造では3年寝かせたものを『福来純「伝統製法」熟成本みりん』、10年寝かせたものを『福来純 長期熟成本みりん(古々美醂) 』として販売しています。
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良質なものでつくる食卓を届けたい

――みりんについてしっかりと勉強することができました!
身近にある調味料なのに知らないことだらけでした……。
これはたくさんの方に伝えていきたいですね!
加藤さんはどんな方たちにみりんの魅力を伝えていきたいですか?

加藤 うちにはみりん、料理酒、日本酒があるので、食卓のトータル提案をしていきたいです。
また、自社商品だけではなく、全国にある無添加で身体に良いものをもっともっとお客さんに伝えていきたいですね。
とはいえ、いろんなものを自分で各地から取り寄せるのは大変じゃないですか。
そこで全国の選りすぐりのものを使った新しい調味料を開発すれば手軽に使ってもらえるのではないかと考え、全国の生産者の方を回ったり、出汁の勉強もしています。
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また、酒、醤油、酢、みりん、かまぼこ、お茶といった日本の伝統食品の担い手6人で結成されたユニット『HANDRED』としても活動し、国内外へ日本の食文化を発信しています。

プロの料理人の方や料理家さんに向けては、現在も行っている料理教室やイベントを続けていきたいですね。

――自社の枠を越えた試みは楽しみですね!
その他に必要だと考えるアプローチはありますか?

加藤 うちでは15年程前からしぼりたての新酒が飲める蔵出しイベントを行っていて、2日間で5000人の方にお越しいただいています。
近隣県から大阪や東京からもいらっしゃいます。
人と接することはエネルギーを必要とするけれど、やはり顔と顔を合わせたコミュニケーションに勝るものはないと実感しています。

――今はSNSによって日本や世界の方に知ってもらえることはできますが、ファンになってもらって継続して購入してもらうためには、結局はこの人を応援したいという気持ちが大事ですものね。

加藤 今ちょうど蔵を改装していて、直売店に買い物に来てくださったお客さんがゆっくりできるスペースをつくっています。
そこにはうちの商品だけではなく、たとえば飯尾醸造さんのお酢など全国の良いものを揃えて、みりんを1本買いに来たお客さんといろんな商品を介してコミュニケーションが取れるようにできればと考えています。
楽しみにしていてください!
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最高のものづくりのために手間暇を惜しまない。
日本の食を支える生産者に共通する姿勢です。
「おいしい」をつくる日本の宝を訪ねるシリーズ、次回もお楽しみに。


※料理の縁の下の力持ち「みりん」のお話【日本の食の生産者訪問記】白扇酒造・前編 の記事はこちら

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株式会社ヒュー
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