食のプロフェッショナルに聞く! おすすめのシズル名作vol.1

忘れられない映画のシーン、自分の価値観を決めた一冊の本。
誰しもが大切にしている映画や書籍があると思います。
今回シズルブログでは、いままで取材させていただいた食に関わるお仕事をされている方に、
とっておきの「シズル感ある映画や書籍」を教えてもらいました!

いまは家で過ごす時間が多くなった方もたくさんいらっしゃるかと思います。
こんな時こそ、じっくりと
美味しさを感じる映画や、食に関する書籍を楽しんでみませんか?

第一回目となる、この記事では
フードディレクターの浅本充さんと、
おいしいコーヒー講座でお馴染みの中川亮太さんに
ご登場いただきます。

フランスのヴァカンス風景から、南米の大冒険の旅。
いつかまた、旅にでかける時を想像しながら楽しんでいただきたい作品を
ご紹介いただきました!

フードディレクター浅本充さんが選ぶ“シズル名作”

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エリック・ロメールとヴァカンス

20歳になるかならない頃、僕は神戸の小さな映画館でエリック・ロメールの映画と出会った。
それは僕の中心に存在するアイデンティティの一つである、
「食文化が支える、日常の景色の豊かさを楽しむ」という事を教えてくれた瞬間だった。
50人も入れば満席となる新開地にあった小さな映画館は、
安いアルバイトで過ごしていた僕にとって、
1000円で2本観れる(しかも入れ替えなし)最高の場所だった。

ある時、学校をサボって訪れたタイミングで、鮮やかなビーチパラソルの前に座る、
アンニュイな男女二人のポスターが目に入った。名前も知らない監督のフランス映画だったけど

『夏物語』というタイトルと、そのポスターが気になりチケットを買って観る事に。 

結論から言うと、あまりにも退屈で、ただ素敵な風景に癒されたのが本音。
そして同時にこれがフランスのヴァカンス風景なのかと、感動したのを覚えている。

後から知った事だけど、エリック・ロメールはヴァカンス映画の巨匠であった事、
夏物語は4部作の2作目であった事、75歳の円熟期に撮った作品という事などは、
その後に何度も見返す楽しみにもなった。

作中に出てくる、英仏海峡に面するノルマンディのリゾート地ディナールと、
海賊と遠洋漁業の拠点として栄えた港町のサン=マロの景色は、
今までパリの景色だけがフランスだと思っていた僕にとっては、
本当に刺激的だった。
主人公ガスパールが、夏休みのヴァカンスで訪れた地のクレープ屋で、
夏休み中バイトする民俗学研究者のマルゴとの、
甘酸っぱく燃え上がらない若い純愛を淡々と描く映画の中に、
時折出てくる食の風景はとても素晴らしい時間を魅せてくれる。
クレープといえば、原宿マリオンくらいしか知らなかった僕が、
この映画でガレットという北フランスの地方料理に出会い、
そのクレペリーへ訪れて食べてみたいと思ったことが、
僕が後にノルマンディへ短期滞在を決めた大きな理由だった。
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▲この映画に出会ってから数年後、舞台となったノルマンディへ短期滞在することに。

海沿いのクレペリー、簡易なテーブルとチェア、
自然光が独特な明るさを演出しマルゴが運んでくるガレットを、
ガスパールが静かに黙々と食べているシーンは、
エリックロメールが表現したかった二人の心の小さな響きあいを感じ取ることができるし、感動すら覚える。

最初にも言った通り、とっても退屈な映画であることは間違いない。
ただ、そこにはロメールの円熟な演出が魅せる、最高のフランスのヴァカンスがあると思う。
もしも、この映画の世界へ旅をしたければ是非ノルマンディやブルターニュへ訪れてほしい。
季節は7月の終わりから8月がいい。
映画の舞台であるディナールやサンマロも素敵だけれど、
僕が大好きなのはトゥルーヴィル=ドーヴィル。
パリ・サンラザール駅からSNSFに揺られて1時間ちょっとで行くことのできる海辺のリゾート地。
クロード・ルルーシュ監督の「男と女」で
アヌーク・エメとジャン=ルイ・トランティニャンがフラシス・レイの名曲に合わせて逢引した街。
僕の大好きな画家・サヴィニャックが余生を過ごした場所。
カラフルなビーチパラソルと海の幸やガレットで過ごす時間は、フランス映画の主人公になれるに違いないと思う。




プロフィール:浅本 充 
「ブラスリーベルナール」「adding:blue」「レスプリミタニ」でのサーヴィスとソムリエ、マネージャーを10年間経験後、BROOKLYNに渡米。2009年株式会社ユニテを設立。同年に人気のカフェ「自由が丘ベイクショップ」をディレクション。コーヒーの造詣も深く、その楽しみ方のセンスには定評がある。コーヒーのみならずライフスタイルの提案と、新しいフードトレンドや、世界のオーガニック事情の知識も深い。現在は、様々な企業の飲食部門やライフスタイルのコンサルティングに参加。
https://www.instagram.com/makoto_asamoto/


コーヒークリエイター  中川亮太さんが選ぶ“シズル名作”

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独特なシズル感があふれる名作

おすすめの“シズル名作”と聞いて、
真っ先に頭に浮かぶ映画は伊丹十三監督作品の『タンポポ』です。
コーヒーではなくラーメンが主役の映画ですが、
大きな視野で食に関わる様々なエピソートがユニークに散りばめられた不朽の名作。
未亡人が引き継いだ不味いラーメン屋に偶然立ち寄ったトラック運転手が、
ひょんなきっかけでお店を行列のできるラーメン屋にするために
様々な人を巻き込みながら徐々においしく成長していくストーリー。
またメインストーリーとは関係無さそうなサイドーストーリーには、
伊丹監督ならではのユーモアやエロスが入り混じり
「人間の食」に関する気づきや問題提議を感じることができる独特なシズル感があふれています。
余談ですが、日本橋の老舗洋食店「たいめいけん」のあのオムライスは
この映画の中で伊丹監督のアイディアで誕生した一品ということは知る人ぞ知るエピソード。
観終えたら、無性にラーメンが食べたくなっちゃう中毒性がありますが(笑)
飲食に関わるたくさんの人に観て欲しい作品です。


書籍でおすすめしたいのは『私はコーヒーで世界を変えることにした。 夢をかたちにする仕事道(川島良彰 著)』です。
コーヒー界のインディージョーンズ、通称「コーヒーハンター」と呼ばれる川島さんの波乱万丈の半生実話。
読み始めるとジェットコースターのようにドキドキわくわくが止まらない冒険活劇は、
映画1本では収まらないであろう壮絶なエピソードの連続。

どんなにお金を積まれたってとてもじゃないが真似できない仕事や生き様ばかりです。
心からコーヒーを愛して止まない川島さんだからこそ可能にしてきた
「ストリート・スマート(ぜひ読んでその意味を知ってほしい!)」な生き方を知ることができる人生の指南書。
幼い頃から中南米に憧れ、18歳でエルサルバドルに留学。
命の保証もない内戦の最中も帰国せずコーヒーの研究を続け、
ジャマイカ(ブルーマウンテン)、ハワイ(コナ)、インドネシアなど激動のコーヒー農園開発に携わる内容は、
消費国ではなく生産国での様々な問題も知ることができます。

絶滅したと言われていたコーヒーの希少品種を発見することで産地を元気づけたり、
生産者と消費者をどうしたらサスティナブルに継続することができるのか
チャレンジし続ける姿はコーヒーに限らずあらゆる分野で共有できる教訓的な内容だと思います。
いつか大河ドラマかNETFLIXシリーズで映像化される日が来ると信じて止みませんが、
それまではコーヒーを片手にぜひ本書でお楽しみください。

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私が「コーヒー屋になる」と
決めたのは小学生のとき。
子どものころからずっと、
コーヒーの生産国にあこがれていた。
そして、その夢を叶えるため、
十八歳で単身中米のエルサルバドルへ留学した。

座右の銘は、
「何人かが、当然それを為すべき筈である。
それなら、自分が何ゆえ為さずに済むものか」
すごい生産者がいる、
すごいコーヒーがあると聞けば、
どこへでも飛んでいく。
たとえ、それが中南米の密林の奥地であろうと、
アフリカの高地であろうと、
アラブの荒野であろうと……。
おいしいコーヒーがあるところを目指して、
ただひたすら突き進む。

いつのころからか、
私は「コーヒーハンター」と呼ばれるようになった。
「コーヒーのために私ができることはすべてやる」
私は、それを実践して生きている。
子どものころからやりたかったことが、
こうして私の一生の仕事になった。

(プロローグより一部抜粋)
『私はコーヒーで世界を変えることにした。 夢をかたちにする仕事道』川島良彰著(ポプラ社)

プロフィール:中川亮太

コーヒークリエイター 五感で感じ、楽しむコーヒーを日々追求。また、生活を豊かに楽しくするためにコーヒーで出来ることに何でもチャレンジ!愛称はVIVA(ビバ)。コーヒー産地で生産者とすぐにアミーゴ(友達)になるのに産地の方が覚えやすいようにとついたコーヒーネーム。アウトドアでのコーヒーを得意とし、道具愛も強く、焙煎器から抽出器具まで様々な道具を自作。日本スペシャルティコーヒー協会認定:アドバンスド・コーヒーマイスター。 https://www.instagram.com/viva_cafe/

浅本充さん、中川亮太さん
素敵な作品をご紹介いただいてありがとうございました!
巣ごもりライブラリー企画は第二弾へ続きます!

著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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