食のプロフェッショナルに聞く! おすすめのシズル名作vol.4

忘れられない映画のシーン、自分の価値観を決めた一冊の本。
誰しもが大切にしている映画や書籍があると思います。
今回シズルブログでは、いままで取材させていただいた食に関わるお仕事をされている方に、とっておきの「シズル感ある映画や書籍」を教えてもらいました!

いまは家で過ごす時間が多くなった方もたくさんいらっしゃるかと思います。
こんな時こそ、じっくりと美味しさを感じる映画や、食に関する書籍を楽しんでみませんか?

第四回目となるこの記事では、駅弁歴20年、のべ5000個を食した駅弁ライターの望月崇史さん、世界の料理を食べ歩く料理研究家ヤミ―さん、プリンのスペシャリスト濱口竜平さんにご登場いただきます。

すでに観たことや読んだことのある作品も、食のプロフェッショナルの視点でまた新しい楽しみ方ができるはず!

駅弁ライター 望月崇史さんが選ぶ“シズル名作”

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見逃してませんか? あの名作の駅弁シーン!

映画『海街diary』(2015年)

この映画の見どころは、冒頭の10分にある。
父親が亡くなって、山形へ二女(長澤まさみ)と三女(夏帆)が、山形の葬式に行く場面だ。
山形へ行くシーンなのに、「わたらせ渓谷鐵道」の気動車が出てきたり、山形なのに、岩手・花巻の鉛温泉が出てくるなど、いろいろツッコミどころはあるが、素晴らしいことに、この二女と三女が列車の中で「駅弁」を食べるシーンが織り込まれている。
しかも、折詰の形状から推測するに、最初に映る三女(夏帆)が食べているのが、米沢駅弁・新杵屋の「牛肉どまん中」。
進行方向に向かって座っている二女(長澤まさみ)が食べているのが、同じく米沢駅弁・松川弁当店の二段重ねの駅弁「山形おもてなし弁当」とみられる。
わざわざ群馬・栃木のロケ地まで山形の駅弁を持っていくほど、「駅弁」へのこだわりがとてつもなく熱い映画なのだ。
食べもの好きの心のどまん中を打ち抜く、このシーンだけで十分に満腹である。

映画『君の名は。』(2016年)

『君の名は。』という映画は、東京から東海道新幹線に乗って名古屋へ行き、名古屋駅で特急「(ワイドビュー)ひだ」に乗り換えていくシーンを観れば、お腹いっぱいだ。
出てくる高校生たちが「ひだ」の列車内で数秒間、駅弁を食べている。
気になる中味は「みそカツ」!
これがとんでもなく美味しそうなのだ。
今にもスクリーンから、芳醇な八丁味噌の香りが漂ってきそうだった。
パッケージから推測するに、右下に愛嬌のある豚の絵が描かれているので、名古屋駅の老舗駅弁屋さん「松浦商店」の「松浦のみそカツ」ではないかと推測される。
加えて、名古屋から飛騨古川へ向かう「ひだ」で、高校生が利用したとみられる自由席が、「松浦商店」の売店の前に停車するのも、この説を大きく補強する。
ちなみに、松浦商店のみそカツ駅弁に描かれている豚の絵は、「松浦トン平」というキャラクター。
大正11(1922)年・名古屋生まれとのこと。
主人公は入れ替わっても、駅弁は決して変わることの無い、伝統の味を守り続けているのだ。

世界の料理を食べ歩く料理研究家 ヤミ―さんが選ぶ“シズル名作”

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食を追求する旅の始まりはここにあり

映画『ゴスフォード・パーク』(2001年)
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 『ゴスフォード・パーク』DVD: 1,429 円+税 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント(2020年5月の情報です)

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 (C) 2001 FILM COUNCIL, ZESTWICK LIMITED AND SANDCASTLE 5 PRODUCTIONS, INC.


実は、この映画がきっかけで、ブログを始めるにあたっての名前を「ヤミー」にしました。
1932年のイギリス郊外のマナーハウスを舞台にした、
ミステリー仕立ての映画で、この時代の階級社会を皮肉に描いています。

その本筋とは関係のない、食事シーンがすごい!

招待客が集まってのティータイム
晩餐の食卓の、厳密なセッティング
既婚女性の特権、ベッドでの朝食
狩りの後の、庭での大掛かりなランチ
などなど、当時の貴族の食事の様子がありありと分かります。

それだけでなく、階下の人々、使用人たちの食事やキッチンの様子も描かれています。
その時代にキッチンメイドをしていた女性の指導により、調理シーンもリアルに再現したそう。
準備から片付け、洗い場、自家製ジャムの棚のある食品庫なども見ることができます。

肝心の名前についてですが、「ヤミー」は英語で「おいしい」という意味。
子供言葉なので、ニュアンスとしては「おいちい」という雰囲気です。

映画の序盤、不機嫌そうな伯爵夫人が、ベッドに運ばれてきた朝食を見て「買ってきたマーマレードね」と不満をもらします。
それが、食べはじめると「ん〜ヤミヤミ」と、若干嬉しそうに言うのです。

食べ物の前では、気難し屋も可愛らしくなる。
そんな感想を抱いたこのシーンから、自分の名前としました。
登場する料理を再現するくらい、何百回と観た映画です。 

書籍『食客旅行』(玉村豊男 著)
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「食客」とは。
“居候”を意味する言葉ですが、この本では“過客(旅人)”と“食べること”を組み合わせた、著者玉村さんの造語のようなものです。
世界中の旅先での、食堂やレストラン、ときにはその土地の人の家などで食べたもののこと、その時のエピソードが綴られています。

と言っても、ただの食レポではありません。
目次を見ると、このような感じ。

「フランスパンによる完全犯罪」「キャビア・スライディング」「ベレバ氏の指先」「獣医と胴元のオープンサンド」「カラクッコの旅」「これが本当のベーコン?」「二週間続いたメニュー」……。

食べ物の話なのかミステリーなのか、料理名なのか競技なのか、誰なのか有名人なのか、ゲテモノの話なのか怖い話なのか、さっぱり想像がつかない、いつも食べていたものは本当じゃないのか、二週間も食べ続けるほど美味しいものってなんだろう……。

目次を読むだけで妄想が無限に広がります。
玉村さんのご著書の中で、最も繰り返し読んでいる本で、私の旅のスタイルは、この本を読んでから、ガラリと変わりました。
受け身の観光から、土地の人たちと交流する旅へ。
今もそんな“食客旅行”を続けています。

“同じ釜のめしを食う”と言いますが、本来の意味だけでなく、まさに「食事は人をつなぐものである」と感じる1冊です。

プロフィール:
ヤミー Yummy
世界の料理を食べ歩く、料理研究家。
美術大学を卒業後、テキスタイルデザインの仕事を経て、輸入食材店に勤務。
2006年1月に料理ブログをスタートし、レシピの簡単さと面白さからたちまちネットやテレビで話題に。現在、料理研究家として雑誌やTV、広告、企業のレシピ開発など多方面で活躍。
現地の人々に学んだ知識を活かして、世界中の料理を日本の家庭で作れる簡単レシピにするのが得意。
なかでも、世界中の料理を3ステップの簡単レシピにした『ヤミーさんの3STEP COOKING』(主婦の友生活シリーズ)は、ベストセラーになり、今も根強い人気を誇る。
近著に『ぐるまぜパン』『ワンボウルクッキング』(いずれも主婦の友社)など、著書多数。
少人数制料理教室「Yummy‘s Cooking Studio」を主宰(現在オンラインにて開催)。
ブログ『大変!!この料理簡単すぎかも... ☆★ 3STEP COOKING ★☆』
プライベート料理教室『Yummy's Cooking Studio』
「世界の料理を日常の食卓に」世界を旅する料理研究家ヤミーさん・インタビュー編 の記事はこちら
「じゃがいものおいしい季節はペルー料理を作ろう」世界を旅する料理研究家ヤミーさん・レッスンレポート編 の記事はこちら

プリンのスペシャリスト濱口竜平さんが選ぶ“シズル名作”

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“いただきます”と“ご馳走様”のある風景を丁寧に描く


切なく優しいギターのリフと、朴訥に語るような歌声から静かにはじまる物語。
メニューは豚汁定食とビールと酒と焼酎深夜12時からはじまる
路地裏の「めしや」、人呼んで深夜食堂に集まる人々。

登場する料理はどれも派手さは無く穏やかで、
きっと誰もが食べたことのあるどこか懐かしさの漂う料理ばかり。
見ていると食べたくなるばかりではなく、自分がかつてそれを食べた情景さえ思い出されます。
素材を切る包丁の音、炒めて油のはねる音、鍋が煮える音、
出来上がった逸品から立ち昇る湯気や美味しそうに食べ、
ちゃんと「いただきます」と「ご馳走様」のある風景がそれは丁寧に奏でられています。
そのどれもがいちいち琴線に触れて、深くじんわりと沁みてきます。
そして、その料理を注文する人々の彷徨ったりつまずいたり交錯する人間味溢れる背景にも引き込まれて
いつしか、自分も深夜食堂のお客様になってしまうのです。

プロフィール:濱口竜平
国際プリン協会会長/プリンコンサルタント
20代後半から、独学でプリンの試作と試食をはじめる。
2006年仙台にて『ぷりん家』を開業。3店舗展開後、東日本大震災を機に屋号・機材・レシピを他社に譲渡。
その後「いいプリンづくりの伝授」を生業に47都道府県のご当地プリンを作ることを使命のひとつとして各地を回る。
これまでに試作したプリンは3万種類以上、50軒以上の産地見学や農業体験、生産者訪問を行う。
つくり手の想いはもちろん、動物たちの目の輝きや、そのエサを食べることによって「いい食材かどうか」を見極めている。
「プリンで世界中に笑顔を咲かせる」「My life is PURIN」をクレドに日々活動している。

「世界に羽ばたけ、ナチュラルなスーパーフード」身近だけど知らないことだらけなプリンの世界・前編 はこちら
「プリンのシズルはどこにある?」身近だけど知らないことだらけなプリンの世界・後編 はこちら


望月崇史さん、ヤミ―さん、濱口竜平さん、素敵な作品をご紹介いただきありがとうございました!
巣ごもりライブラリー企画、次回もどうぞお楽しみに。

食のプロフェッショナルに聞く! おすすめのシズル名作vol.1 はこちら
食のプロフェッショナルに聞く! おすすめのシズル名作vol.2 はこちら
食のプロフェッショナルに聞く! おすすめのシズル名作vol.3 はこちら

著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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