「スパイスを日本の食卓に届けたい」スパイスのプロフェッショナルインタビュー メタ・バラッツさん編

鎌倉・極楽寺。
築100年を越える古民家に、スパイス商を営むアナン株式会社があります。
鎌倉のみならず全国のスパイスファンには名の知れた、通称「アナン邸」。
現在メタ・アナンさん、メタ・バラッツさん親子がスパイス輸入卸しやオリジナルスパイスの開発を行う本拠地であり、店頭販売も行われています。

海外生活で気付いた、国を越えて愛されるスパイス料理の魅力

今回お話をうかがったのは、祖父の代から続く会社を3代目として継いだメタ・バラッツさんです。
バラッツさんは、企業や地域と一緒に次々と新商品を開発し、レストランやカフェなど飲食店向け商品や、百貨店やセレクトショップでの一般消費者向け商品として販売。
また、スパイス料理教室の開催やイベント出店、メディア出演など精力的に活動されています。
その原点には留学時代のある出来事がありました。
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「私は東京生まれで、鎌倉には1歳の時に引っ越して来ました。
高校は南インド・ニルギリ、その後スイス・ジュネーブとスペインに留学しました。
留学時代は自炊生活で、パスタやサラダなどいろいろな国の料理を作っていましたね。
スペインにいた時、友達数名で集まったタイミングでうちから持って行ったカレー粉を豚肉にまぶして焼いたものを振舞ったんです。
そしたら『おいしい!』と、とっても喜ばれて。
こんなシンプルな料理に感動してもらったことが驚きでした」
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震災の地で人々の身も心もあたためたカレー

自分にとっては幼い頃から当たり前で身近なものだったスパイスを通して文化交流体験をしたバラッツさん。
帰国後は鎌倉に戻り、家業を継ぎます。
それから2年経った頃、東日本大震災が起こります。
今、自分にできることは何か。
そう考えていた時に近所の仲間から炊き出しボランティアの誘いを受け、宮城県女川町へ車を走らせました。

「メニューに選んだのは、豆とひき肉のカレーです。
豆はたんぱく質が豊富ですし、ひき肉は配膳した時にみんなに平等に行き渡りますよね。
まだ寒い時期だったので身体が温まるスパイスを使い、子供でも食べられる辛さにしました。
このカレーを2週間に1回のペースで作りに行ったのですが、何度か足を運ぶうちに女川町の産業の自立支援として現地の雇用や観光資源創出につなげられるものを作ろうと考えたんです。
そこで『女川カレーProject』を立ち上げ、スパイスや豆をセットにした『女川カレーブック』を商品化しました」

現地では20店舗近くの飲食店でうどんやラーメン、各国料理など様々な料理にアレンジされ、全国からの注文も相次ぎました。
こうした活動は多くのメディアでも取り上げられ、自由大学や丸の内朝大学といった学びの場での講師依頼や、長崎県五島列島の地域おこしを目的とした商品開発の相談を受けるようになります。
またヒンズー教徒向けの特別機内食の開発、ファッションブランドが立ち上げたカフェで提供するカレーのレシピ提案、インド料理屋のキット作りなど、スパイスを使った幅広い事業展開を行っています。

伝えるために尽きることのない学びの日々

全国各地に足を運び、地域の文化や人に触れる中で、バラッツさんの考え方に変化が起こります。
それは“もっと伝えたい”ということ。

「うちの商売はスパイスを輸入して、ブレンドして、販売するというシンプルなものでしたが、いかに売るかということばかり考えるのがだんだん面白くなくなっていったんです。
同じ商売をやるならもっと楽しい方がいい。
そこで思ったのは、もっとスパイスのことを伝えたいし、そのために自分が学ぶことに時間をかけたいということです」

伝える場の一つとして、5年前からは毎月各会場でカレー教室を開催し、毎回2種類のスパイス料理を教えています。
開催数はもうすぐ50回、約100種類のレシピを提供することで、生徒さんが自分でレシピをアレンジできるようになったり、スパイスを使いこなせるようになることを目指しているそうです。
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さらに2年半ほど前からオンラインショップ「Internet of Spice」も開始。
そこで立てた目標は、「日本で一番スパイスを使ったレシピが載っているサイトにすること」。
毎週新しいレシピを公開し、現在150レシピが掲載されています。
また、スパイスのお話やバラッツさんのコラム、イベント情報まで盛りだくさん。
バラッツさんの想いがあふれるサイトとなっています。
サイトの運営に関わるのは、エンジニア、電気機器メーカーのマーケティング担当、税理士というその道のプロフェッショナル達。
なんと鎌倉の飲み屋で出会った仲間とか!
顧客やニーズの分析を行ってもらうことで、バラッツさんは料理のことに集中できるそうです。
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▲バラッツさんと、オンラインショップ「Internet of Spice」の立ち上げメンバー


また、「東京スパイス番長」の一員として、スパイス料理の探究のために年に一度インドや周辺諸国に足を運んでいます。
メンバーは、「東京カリ~番長」の水野仁輔さん、インドアメリカン貿易商会3代目のシャンカール・ノグチさん、銀座『ナイルレストラン』3代目のナイル善己さん。
去年は「アチャール」というピクルスに似た常備菜、今年は「ニハリ」という煮込み料理をテーマにして、毎年本も出しています。

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新たな取り組みとしては、今年の6月からはオンライン講座をスタート。
毎月レシピとスパイスを事前に送り、その他の材料は各自に用意してもらってオンラインでみんな同時に作っていくスタイルです。
運営には、ケーブルテレビの番組制作に関わる人と、地方創生事業を行う企業に勤める人が関わっていて、ゆくゆくは地方の食材とスパイスを一緒に届けることも考えているそうです。

「今、季節の野菜とそれに合わせたスパイスを使ったペーストを作っています。
使う野菜は、おいしく食べられるのに規格外のために出荷できなかったもの。
今は自社サイトやSNSを通して、こういう商品の成り立ちや想いを自分で発信できるところがいいですよね。
これからもスパイスをもっと家庭で使いやすく、興味を持った方にはより深くお伝えできるように、国内外問わず現地に足を運んで吸収していきたいです」
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夏にぴったりの新作レシピを大公開!

今回、暑い季節にぴったりの新作レシピ「プラムチキンカレー」を教えてもらいました。
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「プラムチキンカレー」
材料
 鳥もも肉(一口大)…500g
 玉ねぎ(スライス)………1個
 トマト(ざく切り)………2個
 おろしニンニク・生姜各大さじ1
 水……………………400ml
 ヴィネガー……………大さじ1
 梅干し………………2個
 ホールスパイス
  ・フェンネル………小さじ1
  ・スターアニス………1つ
  ・カレーリーフ………10枚
 パウダースパイス
  ・ターメリック………小さじ1
  ・コリアンダー………小さじ3
  ・レッドペッパー……小さじ1
  ・パプリカ………小さじ1
  ・アムチュール………小さじ1
 塩……………………小さじ1.5
 油……………………大さじ3

作り方
①温めたフライパンに油を入れ、ホールスパイスを加え香りが立ってきたら玉ねぎを加え、薄い飴色になったらニンニク、生姜を加えて炒める。
②パウダースパイス、塩を加え炒め合わせ、鶏肉を加える。
③鶏肉の表面に火が入ったらトマトと梅干しを加え軽く炒め合わせ、少しずつ水を加えていく。
④ヴィネガーを足し、グツグツしてきたら弱火にして約15分煮込む。



インタビュー中もスパイスを買いに来た人、庭で日光浴をするお父さんのアナンさんに会いに来て一緒にチャイを楽しむ人などが訪れ、アナン邸には一日中人が集います。

それはバラッツさんの想いが着実に伝わっている証しであり、今日も豊かな食文化やコミュニティが生まれています。
スパイスのプロフェッショナルへのインタビュー、次回もお楽しみに。

INFO:

アナン株式会社HP
http://www.e-anan.net/
スパイスの販売 & 毎週更新のレシピサイト「Internet of Spice」
https://internetofspice.com/

著者プロフィール

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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