『すきやき』のシズル感に一目ぼれ!イラストユニット『はらぺこめがね』さんインタビュー前編

『すきやき』のシズル感に一目ぼれ!イラストユニット『はらぺこめがね』さんインタビュー前編

以前、長野・松本の本屋『栞日』さんを取材していた時、ふと目にとまった1冊の絵本がありました。『すきやき』というタイトル、そこにはおいしそうなお肉や野菜が描かれています。お肉のあまい香りが鼻をくすぐる気さえしてくるリアルさ。手元に置いておきたくて買って帰ったのでした。この絵本を手掛けたのは『はらぺこめがね』のお二人。原田しんやさんと関かおりさん、ご夫婦によるイラストユニットです。

よく絵本で描かれる食べ物といえば果物や野菜なんかを連想しますが、すきやきの、しかも赤身の肉のシズル感が見事に描かれていて、その振り切った表現にすっかり惚れ込んでしまいました。我々、ヒューも食の撮影を専門とし、日々さまざまな食のシズル感を追求していますが、写真と、イラスト、違ったジャンルであっても、食への探求心やシズルへのこだわりはきっと共通するものがあるに違いない。と今回は特別にアトリエへお邪魔させていただきお話をうかがいました。

キッチンが中心になるアトリエ

夏の終わりのとある日。「いつかお会いしてみたい」と思っていた、はらぺこめがねさんのアトリエへお邪魔させていただくことに。いつもインスタグラムでアトリエを拝見していたので、ドアを開ける時はワクワク。「こんにちは~どうぞ~!」と原田さんと関さんが揃って迎えてくださいました。中に入るとたくさんの画材やキャンバス、お二人のデスクが並び、真ん中にはテーブル。そしてその反対側にはなんとキッチンがあります。

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原田しんやさん・(以下敬称略)アトリエの横はキッチン、というのが絶対条件なんです。家族の食事もここで。絵を描く仕事もここで。毎日料理を作りながら、描いています。僕たちは自分たちで作ったり、食べたり、観察しながら描いているので、キッチンが一緒にあるとすごくやりやすい。食べるのが好きなので食べ物を描くのも料理を作るのも僕が担当しています。

関かおりさん・(以下敬称略)キッチンって結構必要なものですよね。私たちは二人で絵を描いていますが食べ物は原田が担当で、人物などは私が描いています。

hue・キッチンが中心にあるのはヒューも同じです。コミュニケーションの中心にもなりますよね。私たちも食を専門とし、シズルをテーマに撮影しています。食は五感を使って楽しむものだけど、写真やイラストは視覚だけでおいしさを伝えなければいけない。はらぺこめがねさんの絵本『すきやき』のシズル感にすっかり一目惚れしてしまいました。絵を描くなかで、どうやっておいしさを伝えているのか、いろいろとお話をお聞きしたいと思っています。

おいしさを表現するうえで大切にしていること

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原田・この本はアトリエの近所にある『ニジノ絵本屋』さんから出版しました。食べ物をモチーフにした三部作で、最初が『フルーツポンチ』。その次が『すきやき』です。

関・『フルーツポンチ』を出版した後、ニジノ絵本屋さんと、次は何をテーマにしようかと話していたんです。その時に思い浮かんだのが、「家族みんなで楽しめる料理」と、「いい意味で裏切りたい」という2つの思いでした。1作目とはまったく違うものにしようと思い、すきやきに。私たちも大好物なので。

hue・すきやきが大好き、というのは絵からもヒシヒシ伝わってきます。お肉や野菜のリアルな感じはさすがです。おいしさを表現する時に大切にしていることはなんですか?

原田・食べ物を描く時のアプローチは、僕の場合二通りあります。一つはお腹を空かせて描くこと。目の前にモチーフになる食材を置いて、食べる前に味を想像しながら描きます。もう一つは実際に食べてみて美味しさを感じることです。描くものを取材するというか、実際に自分たちで食べにいきます。すきやきも、お店へ食べにいったり、キッチンで作って観察しながら描くようにしています。どちらも違ったアプローチですけど描くときの気持ちは一緒なんです。

hue・まず食べておいしさを感じる。というのはわかります!我々も写真を撮る時に、実際に食べてみることを大切にしています。感じたおいしさを絵として表現する際に、こだわるのはどんなところですか?

原田・その食べ物の“っぽさ”というか、“らしさ”というか。例えばオムライスだったら、みんなが思い浮かべる「オムライスっぽさ」が何なのかを考えます。卵の感じとか、ケチャップのかけ方とか。お皿はどんなのがいいかな、とか。なにが一番「オムライスっぽい」のか考えて、思い描いたオムライスを実際に作ってみたりします。

関・オムライスと言ってもいろんなものがあるから。みんなが思い描く理想のオムライスってどんなんだろう、って考えています。

原田・“らしい”って難しいんですよ。例えばリンゴを描くにしても、「リンゴらしいリンゴ」って何だろうと思って、スーパーに行ってリンゴばっかり見たりします。考えすぎて何がリンゴなのかわからなくなる時があります。

hue・身近な食材ほど、“らしさ”をつかむのが難しいですね。みんなが共通して感じるリンゴらしさは難しそうです。

関・描くときはその食べ物の“らしさ”を追求しているけれど、でも一度くらい「これ何の料理??」って驚かせるようなものも、いつか描いてみたいんですけど。(笑)
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「食」を描くむつかしさ

hue・食べたことない料理を描くのは難しそうですよね。

原田・そうなんですよ。自分が食べたことのない「食」を描くのは難しいです。一度、台湾のお仕事でポークチョップみたいなのを描くことになったのですが、日本にはない料理だったので、それがどんな味なのか、どんな時に食べるものなのか、たくさん資料に目を通したけれど、食べていないから、つかみづらいことがありました。

hue・その経験はよくわかります!我々も食べたことがない料理を撮影するのは難しい。それが甘いのか、辛いのか。そもそも食事なのかおやつなのか、しっかり把握しておかないといい撮影はできないように思います。
一方で、海外のフォトグラファーの方が日本のお寿司を撮影した写真を見ると、すごく彩度が高かったり、デコラティブに感じることがあります。どちらにとっても「食べたことがある」「食べなれている」というのはリアルに表現する上で大切ですね。

原田・「食べたことない!」というのが新鮮さにつながって、良い方向へ転ぶこともあるんでしょうけど、それはやっぱり描き始めてみないとわからないですね。

食器や調理道具っておもしろい

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hue・いつもインスタに掲載されている「#アトリエめし」を拝見しています。おいしそうだな~と。キッチンはまるでお店のようです。調理道具もたくさんありますね。

原田・そうですね。調理道具もどんどん増えてきました。絵本『やきそばばんばん』(あかね書房)を描いたときは、家のコンロに置ける鉄板を買ってきて、そこで焼きそばを作りました。
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hue・調理器具にもシズル感ありますね。料理が主役だけど、背景に少し映る鉄板の雰囲気って大切です。昔、中華料理の撮影で、新品の中華鍋だと雰囲気が出ないから町の中華屋さんにお願いして、お店で使い込んだ中華鍋を貸してもらったことがありました。


原田・食器や調理道具のおもしろさってありますよね。僕は昔たこ焼き屋でアルバイトしていたことがあるので、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、大好きなんです。いつかお店にあるようなテーブルに鉄板がついているものが欲しい。それを食卓にするのが憧れですね。

関・食べ物や料理を描く時に、どんな食器にするかもよく考えます。“その料理らしい”食器ってどんな感じだろう?って。特徴がありすぎてもダメだし、かわいいだけでもダメ。やっぱり料理が主役だけど、まわりの脇役も大事ですよね。


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▲はらぺこめがね・原田さんのインスタグラム。いつも美味しそうな「#アトリエめし」が掲載されています。ちなみに徳島県出身の原田さん。今年の夏はなんとアトリエを会場に家族で阿波踊りを披露!インスタライブで配信され視聴者も一緒に“踊る阿呆”を楽しみました!


はらぺこめがねさんが表現する食の世界。次回の記事ではお二人が絵を描き始めたきっかけや手がけてきた絵本についてお話を伺います。どうぞお楽しみに!

絵本『にくのくに』(教育画劇)は今年2月9日(肉の日)に発売されました。とんかつ、からあげ、ハンバーグ、と誰もが大好きな肉料理が見開きでドーンと描かれています。7月には青山ブックセンターにて原画展を開催。hueスタッフもお邪魔させてもらいました。お腹の虫が鳴くのをこらえて、じっくり一枚一枚鑑賞し、最後はおのおの自分が好きな「肉」に立ち戻り、再びじーっと鑑賞。(ちなみにhueスタッフはとんかつの前からしばらく動きませんでした)

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