「好きなものを自分が楽なように描く」イラストユニット『はらぺこめがね』さんインタビュー後編

「好きなものを自分が楽なように描く」イラストユニット『はらぺこめがね』さんインタビュー後編

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夏の終わりのとある日。「食」をメインに絵を描いているイラストユニット『はらぺこめがね』さんのアトリエにお邪魔させていただきました。

いつかお会いして「食」を表現することについていろいろとお話してみたい!と思っていた『はらぺこめがね』の原田しんやさんと関かおりさん。風鈴の音が聞こえるアトリエで絵を描き始めた頃の事、そしてこれからの活動についてお話をうかがいました!
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『はらぺこめがね』結成当時のお話

原田しんやさん(以下敬称略)・絵を描いていきたいというのは決まっていたんです。僕たちは同じ京都の大学で出会い、それぞれグラフィックデザインを学んで東京でデザイン関係の仕事に就きました。

関かおりさん(以下敬称略)・それもたまたま職場がすごく近くて。私は広告やチラシなどのデザインを手掛けている会社で、原田は家電の広告などを手掛けていました。

hue・お仕事の最初は「食」ではなかったんですね。

関・そうですね、デザインの仕事をしていたんですけど、私は会社を辞めてから最初に似顔絵の活動を始めました。「これをお仕事にしていける」みたいな手ごたえを感じて、『顔アート』という名称で続けています。

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原田・それを見ていて、いいなあ、僕も絵を描く仕事にしようと。でも最初は何を描いていいのかわからなかった。そんな時にふと、家に転がっていたバナナの皮を描いてみたら、関から「いいやん!」と言ってもらえて。食べ物を描くのは楽しいな、と思ったんです。

hue・食べ物は日常にあるから、モチーフにするにはいいですよね。我々も、「撮影が終わったら食べられる」というのが魅力的で食を撮り始めたようなものです。

関・それはわかります~。私たちも描くときに最後、おいしく食べることまで考えてスケジュール組みますから。

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原田・最初の頃はスーパーなんかの「おつとめ品」をあえて買ってきて描いたりしていました。その頃は若かったから尖っていて、朽ちていくカッコよさみたいなのを描いてみようとか、いろいろ試していました。そもそも食べることが大好きだったから、自分が好きなものを、自分が楽になるように描いてきた、という感じです。

関・アトリエの近くにある『ニジノ絵本屋』さんで食べ物の絵本3部作を出してもらって、その本を見てくださった出版社さんから声をかけてもらって、その後も絵本をいくつか作るようになりました。最初は予算の関係もあって、自分たちでデザインまでして絵本を作っていました。

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▲はらぺこめがねさんが制作の絵本をはじめ、挿絵や表紙のイラストなど手がけた絵本や書籍がたくさんあります。


赤色、黄色、つぶつぶ、さんかく、視覚的にジャンル分け

hue・はらぺこめがねさんの絵本は、子どもが読んでも盛り上がるし、大人も新鮮さがあって、わくわくした気持ちになります。この『まどあけずかん たべもの』(小学館)を拝見したときは、見たことないジャンルの分け方で食べ物が紹介されていて驚きました。

原田・この図鑑はどういうカテゴリーにしようかとアイデアから一緒に考えました。子どもって「これが洋食、これは和食」なんてわからないじゃないですか。だから視覚的に丸、とか三角、とか。白い食べ物、黒い食べ物、と分けると面白いかな、と。
ちょっと無理やりなところもありますけど(笑)。

hue・食べ物をいろんな角度で見られていて、絵本ならではの楽しさがありますね。直感的なジャンルの分けかたは、子どもの興味を惹きつけそうです。

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▲黒・白とジャンル分けされた食べ物のページ。白いイカが黒いイカ墨スパゲティに変身する仕掛けもあり。

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▲ちなみに関さんは子どもの頃、給食が苦手だったそう。一方で「僕はもう、献立表をじっくり眺めるタイプ。給食が楽しみでしょうがなかった」という原田さん。対照的なお二人ですが、出会ってからは、目の前で美味しそうに食べる原田さんを見ていると「なんか悔しくなって(笑)だんだん食べるのが好きになりました」と関さん。


『みんなのおすし』が誕生した意外な理由


hue・この絵本、展開が面白すぎて大好きです。そしてお寿司が美味しそう!お店のカウンターの色味や、お寿司を握るやりとりがリアルですよね。


関・『鮨処れいめい』というお寿司屋さんにご協力いただいて、じっくりと取材させてもらいました。調理場に置いてあるものや、カウンターなど。あとは自分たちでも何度が食べに行ったりして「お寿司屋さんっぽさ」をとらえようと思いました。

hue・どこか懐かしさもある町のお寿司屋さん、という印象があります。絵本の展開はページをめくるたびに驚きがあって、想像がつかないストーリーなのに、カウンターでのやりとりや、お寿司を握る手つき、最後はホースできれいに掃除しているところまでとってもリアルさがあります!

原田・実は最初、「手が出てくる絵本作りたいな」と思っていたんです。手っておいしそうだなと感じることがあって。

hue・お寿司を握る手、確かに「おいしさ」がありますね!

原田・そうです。“おいしそうな手”が主役の絵本を作ってみたいなあと思っていました。それで、おいしそうな手って何だろうと考えていたらお寿司にたどり着きました。編集者さんに相談した時はもう頭の中には「お寿司でいこう」と。

hue・そういうアイデアはどこから生まれるのですか?

原田・どんなものが面白くて、おいしそうかな、と考えてはいるんですけど、やっぱり日常のふとした時にヒントがあるように思います。この近所にも昔ながらの定食屋さんがあって、中に入るとホースを使って掃除したりしてキレイにしてある。お店にとっては当たり前の作業なのかも知れないけど、それを新鮮に感じたり。描いてみたいなあと思ったりします。自分たちをとりまく生活の中で思い浮かぶことが絵のモチーフになることが多いです。

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▲『みんなのおすし』(ポプラ社)は第11回ようちえん絵本大賞で理事長賞を受賞。今年9月にも未来屋書店の絵本大賞で見事二位に輝きました!黒い背景においしそうなお寿司がビシッと描かれている表紙は、どの絵本コーナーでも目立っています!

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▲お寿司は原田さん、お寿司屋のカウンターや登場人物は関さんが担当。
怖いはずのキャラクターも、お寿司を食べている表情やしぐさがとってもユニークです!
「でも、ガイコツが食べたものはどこ行くねん!って感じなんですけどね」と原田さん。
ちなみにカウンターでお寿司と一緒に楽しんでいる飲み物にも注目。
「ラフの段階では描いていなかったんですけど、そういえば飲み物も頼むよなあと思って」と関さん。キャラクターに合わせた飲み物が描かれています。


新作の絵本、そしてこれから

原田・いま手掛けているのは“かける”をテーマにした絵本です。まだ発売は来年になるかも知れませんがもうすぐ絵が描きあがるところです。

hue ・“かける”というテーマは興味深い! コショーの絵は瞬間のおもしろさがありますね。

原田・ひたすらキッチンで、コショーをかけたり、シロップをかけたり、どの瞬間が「らしい」のか探りました。

関・何パターンも試して、iPhoneのスロー機能を使って撮影してみたり、時々はっと我にかえって「なにやってるんだろう」と思いました(笑)

hue・そのお気持ち、わかります。私たちも緻密なシズル撮影の時は小さなネギを1mm動かしたり、戻したりの繰り返しです。我に返る時ありますよね。

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▲アトリエにお邪魔した時にちょうど制作途中だった“かける”をテーマにした新作の絵本『かける』(佼成出版社)は2021年1月より全国書店にて発売予定です!

hue・おいしそうな絵をたくさん手がけられてきたはらぺこめがねさんのお話が聞けて、絵も写真もやはり共通して悩むところや、食ならではの楽しさがあるように感じました!共通点があるのは嬉しいです。今後はどんなことに挑戦してみたいですか?

関・私は似顔絵を描くんですけど、今回のコロナ禍で、似顔絵イベントもオンラインで開催することに。先日のイベントでは海外出張に行っているお父さんの帰国が延びてしまったので、オンラインで日本にいる家族とつないで、みんな揃ったところを似顔絵で書かせてもらいました。オンラインならではの展開ですよね。似顔絵や絵本を作ることで喜んでもらえる人がいる。絵を描く事はずっと続けていきたいなあと思っています。

原田・僕は定食屋さんの絵を描いてみたいです。お盆の上の世界というか。唐揚げ定食でもお店によっていろんな組み合わせがあるでしょう。お味噌汁があって、サラダがあったり、漬物があったり、マカロニがあったり、そういうお盆の上に完成された世界を描いてみたいなあ、と思っています。
 将来的には、やっぱりずっと描いていたいかなあ。料理もしてみたいしなあ。いろんなことに挑戦したいと思いますけど、おいしいものを食べたいってのは絶対ですね。

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はらぺこめがねさんのユニークな視点で描かれる“食”の世界。おいしさを表現するうえで大切にされていることや、苦労することは、写真で“食”を表現する私たちヒューにも共通することがたくさんありました。はらぺこめがねさん、お話をありがとうございました!

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株式会社ヒュー
株式会社ヒューは「食」を中心とした広告や商品パッケージの撮影から、レシピの開発・提案・クッキングの手配や出版物・WEB・デザイン・SNSを使ったコミュニケーションツールなど多彩にご提案が出来る「食の総合プロデュース会社」です。
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