食事も買い物も、お支払いは釣った魚で 『ツッテ西伊豆』体験レポート編

食事も買い物も、お支払いは釣った魚で 『ツッテ西伊豆』体験レポート編

釣ってはじまる様々な特別体験の情報を届けるメディア、『ツッテ』編集長の中川めぐみさん。

中川さんは釣りや漁業を通して日本全国の食、景観、人、文化など地域の魅力を発見・発信することを目指しています。
前編では、中川さんが釣りを始めたきっかけから釣りの魅力、地域や漁業が抱える問題についてお話をうかがいました(前編の記事はこちら)。
後編では、今年の9月よりスタートした『ツッテ西伊豆』の体験レポートをご紹介します。

西伊豆町を釣り人が救う 『ツッテ西伊豆』のはじまり

静岡県西伊豆町。
伊豆半島の西側に位置するこの町では、日本の夕陽百選にも認定されている大田子海岸をはじめ、堂ヶ島や黄金崎など多くの撮影ポイントが存在し、「夕陽日本一宣言」も行っています。

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今回、熱海に次いで中川さんのツッテ企画の舞台となったのがこの町です。
西伊豆町に仕事で何度か訪れていた中川さんは、町役場の方とコミュニケーションを取る中でこの町が抱える課題を知ります。
それは、「観光客を増やしたい」「魚はいるのにとる人がいない」ということ。
観光客も漁師も年々減っているということ。
西伊豆町は海の町として、海産物を特産品として町の外へも流通させたい。
しかし、海に魚はいるのに、それをとる漁師がいないために魚不足という事態に陥っていたのです。
それは定置網を引き揚げるための人手が足りないぐらい深刻なものでした。


この2つの課題を一気に解決できるものはないか。
そこで『ツッテ熱海』の活動を知った町役場の方から中川さんに相談が来たことをきっかけに、『ツッテ西伊豆』の構想は始まりました。

しかし折しもコロナウィルスの影響で 緊急事態宣言が出たタイミング。
西伊豆町では町長の英断で5月頃に一度、観光客の受け入れを止めました。
漁師不足に加え、観光客がゼロになった町を盛り返さなければいけないという状況の中、今年の9月8日『ツッテ西伊豆』はスタートしました。

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自分が釣ったかわいい魚たちが市場に並ぶ

基本的な流れは『ツッテ熱海』と同じ。釣った魚をその地域で使える地域通貨に換え、地域を丸ごと満喫してもらうというもの。
電子地域通貨『サンセットコイン』として発行され、その単位は夕陽の町にちなんで、『ユーヒ』と名付けられています。
1ユーヒは1円として、西伊豆町内の飲食店やスーパー、コンビニ、お土産店、旅館、日帰り温泉など約130もの店舗で利用できます。

サンセットコインポスター.jpg

実際に『ツッテ西伊豆』を体験してみました。
西伊豆を満喫したい!
そのためにはまずは魚を釣らなければ始まりません。
釣りの前日は『網元の宿 龍海丸』さんに宿泊しました。
目の前の海でとれた魚を使った磯料理が自慢の宿で夕食と朝食を堪能し、いよいよ船釣りへ。

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季節は10月の初め。
真鯛、イサキ、メバルなどが釣れるそうです。
中川さんと、釣りの初心者2名で何匹釣れるのでしょうか?!

船長さんと息子さんから丁寧にレクチャーを受けられるので、初心者でも手ぶらで安心して釣りを楽しむことができます。
2つの釣り針がついた竿で釣り始めること数分、一気に2匹かかりました!

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釣った魚は血抜きのためエラに傷を付け、少し水の中で泳がせてからクーラーボックスの中へ。
このひと手間で魚の鮮度を保つことが、この後の『ツッテ西伊豆』の買い取りの際にも重要なポイントになります。
結果は、約4時間かけて3人でイサキ44匹、アジにメバルにと大豊漁!
船長さんは特大サイズの真鯛も釣り上げました。

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釣りって楽しい!
でも、こんなに釣れるとその場で捌いて食べるのにも限界がありますし、持って帰るのも大変です……。
釣りの楽しさを存分に満喫したところですが、『ツッテ西伊豆』のお楽しみはまだまだ続きます。

新鮮な魚を携え直行するのは、西伊豆堂ヶ島産地直売所『はんばた市場』です。
こちらには新鮮な海の幸、とれたての野菜や果物、地元の方手づくりのお総菜や加工品が並びます。

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魚の買い取りは品質保持のため、提携の釣り船で釣ったものに限定しています。
魚は魚種・数・サイズ・市場の人気度によって、その場で値付けされます。
自分たちが釣った魚にどれぐらいの値段が付くのか、緊張の瞬間です。
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今回は船長さんの鯛も入り、3人でご飯を食べてお土産を買うのに十分な金額になりました!

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買い取られた魚は『はんばた市場』の店頭に並び、飲食店や家庭の食卓へ。
漁師さんになった気分を味わえるのも『ツッテ西伊豆』の楽しいポイントです。

でもやっぱり自分で釣った魚は食べてみたいもの。
そこで数匹のイサキとアジを持って、釣った魚を捌いて料理してくれる飲食店へ向かいます。
今回は、『旬感 竹内』さんにお願いしました。
こちらは、西伊豆の海や山の食材を旬の季節に、一番おいしい料理方法で提供してくれる和食屋さんです。

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本日は刺身と塩焼きと煮付けにしてもらいました。
刺身はぷりぷり、火を入れるとふっくらとして、釣りたてならではの魚のシズルを五感で感じることができます。

お腹もいっぱいになったところで、最後はお土産選びです。
『はんばた市場』はじめ、さまざまな店舗で魚や農作物、加工品まで西伊豆町の恵みをお買い物。
『ツッテ西伊豆』のおかげで、地元の人と触れ合い、海の幸も山の幸も堪能して、自宅にも持ち帰ることができました!

西伊豆の希少な縁起物『しおかつお』のお話

西伊豆町を語る上で外せない伝統食があります。
それは『しおかつお』です。
別名『正月魚』とも呼ばれ、かつてかつお漁の漁師町として栄えた伊豆田子では、航海の安全と豊漁豊作を祈願し、お正月にワラでお飾りを付けた潮かつおを軒先に吊るし、神棚にお供えしました。
現在ではここ伊豆田子にのみ現存する、最古のかつおの加工品です。
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このしおかつおを古来より伝えられた加工法を元に製造を続けているのが、創業1882年の『カネサ鰹節商店』です。
お話をうかがったのは、4代目・芹沢安久さん。

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古来とは一体いつを指すのかと言うと、なんと古墳時代や飛鳥時代とのこと!
つくり方は、まずかつおを素干しにし、その後傷まないように塩蔵、さらに天日干しして完成します。
奈良時代に入ると、鉄器で煮てから干すようになり、より保存性の高いしおかつおがたくさんつくられるようになります。
日本のほとんどがお米を年貢として納める中、ここ伊豆田子ではしおかつおを納めていたそうです。

これほどまでに長い歴史を持つものが残っていることは驚きですが、現代では冷蔵庫など保存技術も向上し、また健康志向から塩分の高いものは好まれない中、この貴重な伝統が失われつつあります。
また、核家族化や食の多様性など様々な理由から、かつお丸ごと1匹を食べ切ることも難しくなりました。

こうした事態を危惧した芹沢さんは、2009年『西伊豆しおかつお研究会』を立ち上げ、保全活動に取り組み始めます。
メディアやイベントを通して潮かつおの認知度を高める、時代に合った新商品づくり、地元の飲食店と一緒に新たな名物『西伊豆しおかつおうどん』を生み出すなど、地域活性化にも貢献しています。

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▲カネサ商店さんのお土産店でもユーヒを使ってお買い物できます!

釣りに興味を持った方、まずはぜひ西伊豆へ!

海の幸と山の幸、美しい景観に恵まれ、神聖な伝統食を大切に受け継ぐ西伊豆町。
中川さんは、その魅力とこれから目指すところについて語ります。

「何と言っても海がすごくいいですね。
釣り場として楽しむにも最適ですし、地元の宿や飲食店でも伊勢海老やイカなど季節ごとに種類豊富な海の幸が味わえます。
そして景観も世界ジオパーク認定をされているぐらい素晴らしいです。
さらに山葵など山の幸も豊富、川も飛び込みたくなるぐらいきれいで、水もとってもおいしいです。
また、地元の方たちも自然体で受け入れてくださるのが魅力です。
UターンやIターンの方も多くて、特徴や一芸があるおもしろいプレイヤーが増えている町なので、来る度にそういう方たちと出会えて、話せて、一緒に新しいことをつくっていけるのが楽しいですね。

これから『ツッテ西伊豆』を中心にして、今まで釣りだけで帰っていた人が新たな町の魅力を知ったり、釣りをしたことのない観光客もこの仕組みを使ってさまざまな体験をしてほしいです。

また、このような取り組みを通して漁師をやってみたい若者の候補地に西伊豆町がなったら嬉しいですね」


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withコロナの中、三密を避けられるアクティビティで地域を応援できる『ツッテ西伊豆』。
地域の魅力を味わいに、ぜひ体験してみてください!

著者プロフィール

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シズル撮影専門のクリエイターチーム・ヒュー
ヒューは食の撮影に特化したフォトグラファーが多数在籍しています。スチール撮影からパッケージ撮影、動画などシズル感のある表現で「おいしい」が伝わるビジュアルをご提案していきます。
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