【and. people】食ライフのプロにインタビュー 「食のプロって何?」

【and.people】このシリーズはand.で活躍する食のクリエイターたちの“いま”を探るべく、普段の飾らない素顔や仕事内容をのぞいてみました。プロだからこそ知るテクニックや裏事情は、目からウロコ!知って得する情報も盛りだくさんでご紹介していく連載です。
今回、担当してくれたのは料理ライターの吉川愛歩さん。
撮影はフォトグラファー 浦野 航気 が担当しました。

「おいしく、つながる」/料理ライター

料理ライターの吉川さんは、食べることも作ることも大好きだそうです。
自分の経験も足し算をしながら、クライアントの要望やターゲットの希望を的確に捉えて表現していくロジックを伺いました。

相手のスキルを考える

hueand…料理ライターさんとして活動されることは難しいと思いますが、どのような経緯でいまの職につかれたのですか?

吉川さん…元々、出版社で書籍の編集業務をしていました。そのため、編集やライティングに関わる全般の経験と知識があります。出版社勤務後は、デザイン事務所でウェブのディレクションやライティングをしていたので、ビジュアル全体を把握しながら、記事を書くことができます。特に私は料理を作るのも食べるのも好きなので(笑)、自然と食を中心としたお仕事をいただくようになりました。

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hueand…私も食べるのは、大好きです! でも、料理はレシピをみながら作るのが苦痛に感じる時もあります。複雑なレシピだと呪文に見えて・・・(笑)、吉川さんが、レシピを書く時に気をつけていることはありますか?

吉川さん…最初にクライアントへ聞くことがあるのですが、それは想定している読み手の料理スキルを伺うことです。

hueand…読み手の料理スキルですか?

吉川さん…そうです。ターゲットは、はじめて料理をする子どもや男性なのか。それとも、簡単な料理ならできる一人暮らしの女性なのか。もしくは日々、家族のために献立を考えているベテラン主婦なのか…。読み手のスキルはさまざまですよね。同じ料理を文章化するのでも、どこまで書くか。あるいは、どこまで省くかなどでレシピはだいぶ変わります。どのような手順で書くか、お料理専門のライターが考えることで、「これなら作れそう!」と感じてもらえるレシピが完成するんですよね。そのため、読み手は誰なのか? ということを具体的に聞き出すところからはじめるのです。

hueand…確かに、レストランのシェフのような方と料理初級者では、技術面でも全く違いますよね。

吉川さん…クライアントの意図によって、書き方も変えます。工程をしっかり伝える教科書のような言い回しにしたいのか、あるいは工程が易しく感じるようやわらかな言い回しが向くのか。料理は同じでも、書き方が変わると複雑なレシピに見えてしまうので、その意図や読者層から文章を組み立てていきます。

hueand…わ~、面白いですね~! 実際に「例えばこんなに違う、レシピの書き方」として、同じ料理のレシピを2種類のターゲットを想定して書き分けてみていただけますか?

吉川さん…私がよく作る「かぼちゃときのこのヨーグルトカレー」で、レシピを書き分けてみますね。ちなみに、これは一般的なことですが、レシピの量の記載では、毎日お料理をするような人(主婦層)向けは4人分、それ以外では2人分の材料書くことが多いです。

hueand…そうだったのですね!!!!

書き分けの妙

■かぼちゃときのこのヨーグルトカレー(毎日お料理をしている人に向けて)
ほくほくのかぼちゃと薄切り肉で、子どもが食べやすい食感と甘みに。

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■かぼちゃときのこのヨーグルトカレー(料理に慣れていない人に向けて)
レンズ豆とキヌアの炊き込みごはんと。初心者でもかんたんなスパイスを使って。

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詳しいレシピはこちら(@hueand_and

hueand…おぉ、こんなに違いがあるのですね! 料理に慣れていない人に向けたレシピは、すごく手順が分かりやすくて簡単そう。いますぐ作ってみたくなりました~♪

吉川さん…あまり料理をなさらない方がターゲットの場合は、通常の「調理工程」と「下ごしらえ」や「切り方」「具体的な時間」「味つけ」などを細かく書きます。野菜の皮はむくのか、むかないのか。アクは、どうとるのか。冷蔵庫では何分、冷やすのか。味付けなども適量って、とてもあいまいですよね。料理初心者には、かなりハードルが高い(笑)。なるべく、適量とならないように料理家さんと相談を重ねていきます。

hueand…その反面、毎日料理をされている方のレシピは、無駄な工程が少ないわけですね。レシピ制作の裏側に、そんなに膨大なご苦労があるなんて知りませんでした。

吉川さん…撮影前に料理家さんからレシピをいただける時は、レシピの再調整をお願いすることもあります。例えば、「茹でる」という工程があるとします。依頼された媒体が、料理経験の浅い人や時短を優先する主婦だった場合は、「電子レンジで加熱する」という調理に変えられないか?と、ご相談することも。自分のレシピでない時は、なるべく書く前に一度、作ってみるようにしています。その上で、「工程の順番を変えて書いたほうがスマートじゃないかな?」などと料理家さんと調整をしていくわけです。

hueand…それは、読者にも親切ですよね。だから、吉川さんのレシピは読みやすいのですね~。

作って、書ける―最強のレシピ

hueand…ご自分でレシピを提案されることもあるのですか?

吉川さん…よくあります。今の仕事内容は、料理レシピの開発、ラィテイング、撮影コーディネート、スタイリングなどすべてお引き受けするスタイルです。

hueand…すごい! 本当に食の専門家なのですね! すべてをご自身でやることでのメリットは、どのようなところでしょうか?

吉川さん…一番は、「関わる人が多くて、意図が伝わらない」ということがないところでしょうか。もちろん、その道のプロの方が関わっていただき、相乗効果を生むことはたくさんありますが、人が多い分、全員で情報共有ができなかったり、いろんな人がいろんなことを言って話がまとまらなくなってしまったり、という場合もあります。

hueand…人が多く関わると、伝言ゲームみたいになりがち。最後に聞いた人は、全然違う話をしていること。よくありますよね…。

吉川さん…そうですね。クライアントさんと直接、企画意図を伺った私が、レシピを提案し、コーディネートまでしてしまえるので、コミュニケーションのトラブルはなくなります。あとは方々に確認する必要がなくなるので、スケジュール的にタイトでもお引き受けできるというところでしょうか。

hueand…関係性がスマートで、とてもいいですね!

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↑野菜のハニーマスタードマリネ
漬けておくだけなのに彩り豊かで、メインディッシュの差し色にも使える。

実生活が料理の幅を広げて

hueand…吉川さんは、どのような料理が得意ジャンルなのですか?

吉川さん…もともと野菜が大好きなので、野菜中心の料理は得意です。最近は「インスタ映えするような」というオーダーをいただくこともあって、野菜の色合いからレシピを考えることもありますね。珍しいものや品種改良された野菜も、チェックするようにしています。あとは、ヴィーガンやグルテンフリー、スーパーフードや乳製品不使用の調理法にもアンテナを張っていますし、時短料理もご提案できます。

hueand…幅が広いですね~! 時短や健康食系の料理がお得意なのでしょうか?

吉川さん…私自身、3歳の息子を保育園に預けて仕事をしているので、とにかく日々の料理が時短である工夫は、生活を通して必要なことだと痛感しています。また、できるだけ子どもに野菜を食べさせたいと考えているのに、調理がありきたりになってしまうと嘆いている声をよく聞きます。でも、実は1種類の野菜でも調理法はたくさんあって、味や見た目や食感を変えることで、子どもが喜ぶおかずを作ることもできるんですよね。“時短かつ、野菜がいっぱいのおかず”というリクエストは、お子さんのいる家庭の方々には人気のテーマなので、私も意識しながら献立を考えています。

hueand…最近、アレルギーを持つ子どもたちが増えているといいますが、アレルギー除去のレシピも提案されたりするのでしょうか?

吉川さん…実は、10歳になる娘がアレルギー体質なのです。

hueand…何のアレルギーですか?

吉川さん…小麦粉や卵のアレルギーがあるので、米粉で作れるパンや卵ナシでも作れるお菓子については、たくさん調べて作ってきました。食物アレルギーの子どもたちは学校内にも一定数いますので、アレルギー除去の食材を使ったお料理は、提案し続けていきたいメニューのひとつです。美味しいだけではなく、アレルギー除去の代替食材を使ったと思われない見た目の工夫も大切だと痛感しています。

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↑ほうれん草とズッキーニのグルテンフリーマフィン
千切りにしたズッキーニの食感を楽しめる甘いマフィンは、栄養たっぷりで子どものおやつにぴったり。

hueand…食物アレルギーを持つ子どもたちも普通食の子どもたちと同じメニューが食べられるのは、コンプレックスやストレスも生まないので、とてもいいですね。優しいママ目線でレシピを考案されているのが、よく伝わりました。吉川さんの暮らしに寄り添うレシピをこれからも楽しみにしています!


<ご協力いただいた食のクリエイター>

yosikawa.jpg吉川愛歩/料理ライター
出版社やデザイン事務所で勤務ののちフリーランスに。雑誌、webなどさまざまなメディアで執筆するうち、レシピの開発を手がけるようになる。現在は企画、レシピ開発、執筆、撮影スタイリングまでを一括して担うことも多い。食物アレルギーのある子どもを育てているため、マクロビオティックスやグルテンフリーにも明るい。

今回作ったレシピはこちら(@hueand_and)

吉川さんへのお仕事の依頼はこちらまで(→hue_and@hue-hue.com
依頼可能内容:商品企画・開発、レシピ開発、フードスタイリング、それぞれに伴うライティング、編集 などなど

著者プロフィール

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hue and.(ヒュー アンド)
「and.」とは、食にまつわる分野に特化して活躍されている方々をまとめたネットワークの総称です。
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http://hue-hue.com/service.html#hueand
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